東京しゃもの来歴
軍鶏は時代小説の主人公の好物
江戸時代初期、シャムの国(タイ)から伝来した軍鶏(しゃも)」。元来、闘鶏用の鶏で猛禽のような美しい体躯と、勇猛果敢な性格は人々の血を大いに沸かせました。
もう一つの魅力はその肉の美味しさで「鬼平犯科帳」や「竜馬が行く」といった人気時代小説にも登場。主人公らの生き様を彩る特別な食べ物として描かれています。
ブロイラーが戦後の市場を席巻
日本の養鶏は戦後の高度経済成長期において、アメリカで開発されたブロイラーに席巻されました。繁殖力旺盛で飼育しやすく、生後わずか40日で出荷できるブロイラーは安価で市場に流通し、大量生産・安定供給のニーズに適応。味も淡泊で用途が広く、日本の食卓に鶏料理のバリエーションを広げ、鶏=ブロイラーの認識が巷に浸透しました。
現代の流通に適応できる規格品をめざして
生産効率の高いブロイラーと比べて、軍鶏は喧嘩には強いものの繁殖力は非常に弱いため、現代の食肉需要には全く応えられません。しかし、その味を愛し称讃する人の声は時代を超えて語り継がれています。そこで量産可能な品種、現代の流通に適応できる規格品を作ろうと、ブロイラーと掛け合わせたりして、全国で様々なしゃもが作られました。
喧嘩はしないが肉質はそのままの東京しゃも
「東京しゃも」もそうした量産型の一種ですが、ブロイラーの血を交えず、純系軍鶏の血統を75%受け継いでいるのが大きな特徴で、他の地域の軍鶏とは一線を画しています。
まず、オスの純系軍鶏と、メスのロードアイランドレッド(採卵鶏)を掛け合わせた二元交雑種を作ります。その二元交雑種に、さらにオスの純系を掛け合わせていきます。
通常、オスの軍鶏は好戦的ですが、ここでは比較的大人しく、群れの中で順位の低い、弱いオスだけを選んで交配させます。するとヒナの頃から一緒に飼えば争わない、気性の穏やかな軍鶏が出来上がります。つまり祖先のように喧嘩はしないが、肉質はそのまま受け継いだ完成品が、1984(昭和59)年に誕生した「東京しゃも」なのです。