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あの味をもう一度 熊本県西原村の落花生を絶滅から守る(2/3)

あの味をもう一度 熊本県西原村の落花生を絶滅から守る

落花生と言えば千葉県の名産品として有名ですが、かつては熊本県西原村でも「小粒」と呼ばれる在来種の落花生が特産物として栽培されていました。しかし、安価な中国産の落花生が出回ったことや、生産者の高齢化などにより村の落花生農家は激減。今では数軒を残すのみとなってしまいました。現在、地元の若者たちが中心となり、幼い頃から慣れ親しんだ落花生を絶やすことなく継承していく活動に挑んでいます。その取り組みについて話をうかがいました。

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甘く、香り高く、味わい豊かな在来種「小粒」

西原村では、50年ほど前まで落花生栽培が盛んに行われていました。おいしいと評判だったその落花生は、通称「小粒」。一般的な落花生より粒が小さく、濃厚な味と香りが特徴です。

村では、正月やお盆などの集まりなどの時に、おもてなし料理の一つとして必ず手作りの落花生豆腐が食卓にあがっていました。また、生の落花生を殻ごと茹でる「茹で落花生」や、取り出した実を香ばしく炒める「炒りピー」は、大人の晩酌の定番おつまみでした。

「子供の頃は落花生豆腐が嫌いだった」と話す小城さんですが、ある年の正月に祖母の作る落花生豆腐を久しぶりに口にした時、あまりのおいしさに驚きました。

「これは売れる。ばあちゃんと一緒に商品化しよう」。
そう決意して勤めていた会社を退職。祖母の指導を半年ほど受け、26歳で「楽や(がくや)」をオープンしました。

当初は熊本県菊池郡大津町に店を構えましたが、「やはり西原村の特産だから地元でやりたい」と2003年に村内へ移転します。中学の同級生である妻の実家の納屋を改築して加工所を作り、百貨店などへの卸しをスタート。2012年には直売所兼カフェも開店しました。

落花生の生産者になる

豆腐の材料となる落花生は、村にわずか2、3軒残る高齢の生産農家から仕入れていました。落花生豆腐の人気が高まるにつれ、材料は不足に。契約農家に増産を掛け合うと「重労働だからこれ以上作付けは増やしたくない」という返事がきました。「だったら自分で作ろう」。小城さんは畑4反を借りて、自ら栽培を始めることに。

活火山である阿蘇の山々が近いという地形柄、西原村は赤土、黒土、火山灰土と様々な種類の土壌を有しています。中でも鉄分を多く含む粘土質の赤土で育てた落花生は、味も形も非常に出来が良いのだといいます。

4月に定植した落花生は、9月に収穫を迎えます。「無農薬で作っているので、真夏の雑草の駆除が一番きつい。収穫も、土中から抜く作業にかなり力がいるのです。これは高齢者には大変だと身にしみて分かりました」と小城さん。

契約していた生産農家の畑も、熊本地震で大きな被害を受けて栽培を続けることが困難になりました。「このままでは西原村の落花生は途絶えてしまう。どうにかしなくては」。小城さんはそんな危機感を感じ始めます。

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