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守れ伝統キュウリ!宮崎のUターン若手農家が商品化へ

守れ伝統キュウリ!宮崎のUターン若手農家が商品化へ

煮込んで食べると美味しいキュウリや、1メートル近くにも育つ巨大キュウリ―。日本には、様々な個性を持つ在来種の“ご当地キュウリ”があります。現存する希少な伝統キュウリを商品化し、その多様性を、作物自体の価値向上に繋げようとするプロジェクトが、日本一のキュウリ生産地・宮崎で進んでいます。プロジェクトのリーダーとして、伝統キュウリ専門の栽培施設を耕作放棄地に作り、商品化を目指しているキュウリ農家の猪俣太一(いのまた・たいち)さんに、お話を伺いました。

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個性豊かな伝統キュウリ

日本人にとって最も身近な野菜の一つ、キュウリ。世界で栽培されているキュウリの品種は、500種類にも及ぶといいます。日本固有の種類だけでも、全国にかなりの数が分布しています。ただ、農家の自家用野菜として細々と作られるなど、市場に回ることは少なく、絶滅してしまった品種も少なくなりありません。

個性豊かな伝統キュウリを守ろうと、立ち上がった3人の若手農家が、国内最大のキュウリ生産地・宮崎にいました。耕作放棄地に伝統キュウリの栽培施設「きゅうりラボ」を設立し、栽培方法に試行錯誤をしながら商品化を目指しています。

背中を押したひと言

プロジェクトのリーダーを務めるのが、新富町のキュウリ農家・猪俣太一(いのまた・たいち)さん(30)です。育てているのは、シャキシャキとした歯ごたえが特徴で、漬物に合う相模半白(さがみはんじろ、神奈川県)や、約90センチにもなる大型の大和三尺(やまとさんじゃく、奈良県)、極太で鶏肉などと煮込むと美味しいという青大(あおだい、愛知県)など。

伝統キュウリには、キュウリ本来の香りや苦味が強いものが多く、キュウリが好きな人にはたまらないといいます。

猪俣さん自らの農園では、「常翔」というスタンダートな品種のキュウリを5棟のハウスで栽培し、旬の時期には、一日に1,500本ほどを一人で収穫します。今年で就農7年目。山梨県の大学の教育学部で学んでいましたが、父親と同じ農家を志すようになりました。

猪俣さんを駆り立てたのは、アルバイト先の居酒屋へ実家のキュウリを持って行ったときに、その味に強く感動する店長の姿でした。「こんなに美味しいんだから、自信を持って」という言葉に動かされ、大学を中退し、新富町でUターン就農しました。

全国の期待を背負って

農家として新しい挑戦をするきっかけをくれた存在は、地元のまちづくり団体「一般社会法人 一般財団法人こゆ地域づくり推進機構」(こゆ財団)でした。

新富町の観光協会が前身の同財団が昨年開講した、人材育成塾「シータートル大学」に第一期生として参加。同年代の若者と一緒に、コミュニティ・ビジネスの第一人者による講義や、合宿制のフィールドワークで、マーケティングなどビジネスに必要な思考を学びました。「きゅうりラボ」のプロジェクトパートーナーとなる若手農家とも、講座を通して知り合うことができました。

「迷うより、とにかく行動してみることを、シータートル大学で叩き込まれた」という猪俣さん。昨年、クラウドファンディングを通して、県内外から「きゅうりラボ」設立のための初期費用を集めました。県外の知人や、インターネット経由でプロジェクトを知り「キュウリが大好きだから協力したい」と申し出た人など、約60人が支援しました。

多様性でキュウリに付加価値を

昨年9月、新富町内の国道沿いの耕作放棄地に、「きゅうりラボ」を設立しました。初シーズンの昨年は、収穫はできたものの収益を見込むことが難しく、テスト栽培となりました。今春以降は栽培品種を絞り込み、商品化を目指して地元のスーパーや朝市を中心に販路拡大を進めています。

商品化だけでなく、希少な在来種の保全に繋げようと、伝統キュウリの貴重な栽培データを、インターネット上で公開することを予定しています。猪俣さんは、「栽培を志す次の世代が活用できるようにしたい」と意気込みます。

伝統キュウリの栽培を進めながら、メキシコ原産の「きゅうりメロン」などユニークな作物を増やしていくことも考えているといいます。「最高においしいキュウリを広めたい」(猪俣さん)という思いで、春を待つ猪俣さん。「世界一のキュウリを作る」という目標のもと、テクノロジーの力で農業の課題を解決するアグリテックにも力を入れるなど、より良い栽培方法を求めて工夫を重ねています。

目標は、多様性のアピールでキュウリ自体の価値を向上し、キュウリ農家を元気にすること。高い視座を得た、若手の挑戦は続きます。

 
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