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宮崎・新富町を世界一挑戦しやすいフィールドへ!ソーシャル・ビジネスの新天地「こゆ財団」とは

宮崎・新富町を世界一挑戦しやすいフィールドへ!ソーシャル・ビジネスの新天地「こゆ財団」とは

とにかく活きが良いと、全国から注目を集め始めている街がある。宮崎県児湯郡の新富町。特産品の収益を未来への投資資金とし、農業などのコミュニティ・ビジネスに挑戦する若手の育成に力を入れる。
けん引するのは、地元の観光協会が法人化した地域商社「一般財団法人 こゆ地域づくり推進機構」(以下、こゆ財団)だ。2017年4月の設立から、珍しい国産ライチのブランド化や若手農家の育成を通し、地元経済の盛り上がりに拍車をかけつつ、持続可能な成長を模索している。同財団事務局のお二人にお話を伺った。

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地域ブランドの開発―地域への投資金を確保する

突然だが、読者の皆さんは国産の生ライチを食べたことがあるだろうか。国内に流通するライチのうち、99%が海外産のため、冷凍以外を口にしたことは少ないかもしれない。溢れる果汁と甘い香り、ぷりっとした生独特の食感は格別だという。

国産ライチの生産拠点の一つが、宮崎県中部の新富町。県内のライチ生産量の約7割を担う。2017年には、一般的なライチの2倍近くにあたる、50g以上の新富産ライチを、「楊貴妃ライチ」としてブランド化。
1粒1000円と高額だが、贈答向けフルーツとして、全国からインターネット通販などで注文が相次いだ。

旗振り役となったのが、新富町を拠点とする地域商社「こゆ財団」だ。前身は町の観光協会。命題とするのは、新富町や、和牛の故郷として知られる都農町などを擁する児湯郡に、強い地域経済をつくることだ。
IT系の新興企業やグローバル企業が集まる、かの有名なアメリカの街のように、地域ビジネスの設立を志す若い層が起業に挑戦しやすく、持続可能な成長を遂げられる環境づくりを目指す。

柱の一つが、「楊貴妃ライチ」のブランド化をはじめとする、特産品の開発だ。「楊貴妃ライチ」をふるさと納税の返礼品に加えるなどし、資金集めと町のアピールを積極的に行う。

「楊貴妃ライチ」のブランドは、確実に浸透しつつある。昨年10月、カクテルのようにフルーティーな「楊貴妃ライチビール」を、地元の老舗酒屋にて120本限定で販売したところ、わずか3時間で完売したという。都内の高級フルーツカフェや割烹でも食材として使われ、その評判は上々だ。

地域人財の育成 ―地域に大きな8の字を描く

こゆ財団の事業構成。
特産品販売と起業家育成を柱に、地域資源が“8の字”を描くように循環し、地域に強い地域経済をつくりだすことを理想とする

特産品の開発・販売で得た利益は、地域の人財育成に充てる。2017年に“超現場主義”をモットーにした人財育成塾「児湯シータートル大学」を設立。
町内外から名乗りを上げた20代~30代の20人が、第一期生として切磋琢磨しながら、ビジネスに必要な思考やノウハウを学んだ。
カリキュラムは、ソーシャル・ビジネスの第一人者による講義や、まちおこしに積極的に取り組む県外の自治体での合宿制フィールドワークなど、座学と実践の双方から成る。

卒業生は、ビジネスを通して地域に貢献する人財になり、いずれは次世代の育成も担う存在になる。このように“人財”を含めた地域資源が「8の字」を描いて循環し、地元経済を潤す成長モデルを創り出すことが、こゆ財団の狙いだ。

実際に一期生6人が、ビジネスプランコンテストやクラウンドファンディングを通して支援金を集め、鹿皮を使った加工品の作業場を構えて地域に雇用とお金を生み出したり、地域と密着度の高い整体院を開業したりと、さまざまな分野での新しいソーシャル・ビジネスに挑戦している。

全国的にも高いという宮崎県の離婚率に歯止めをかけようと、提出時の新鮮な気持ちを大切にとっておける「複写式オリジナル婚姻届」を提案し、新富町に採用されて話題になった卒業生もいた。

同じく一期生で農家の猪俣太一(いのまた・たいち、30歳=新富町)さんは、「迷うよりとにかく行動することを学んだ。町外から学びに来た一期生の活躍も刺激になる」と話す。猪俣さん自身は、耕作放棄地を使った希少な伝統キュウリの栽培に力を入れている。「一期生の活躍が、こゆ財団一年目の一番の収穫」と高橋さんは目を細める。

今年度は猪俣さんら一期生の農家の作物をふるさと納税返礼品に加えるなど、持続可能な“8の字”の輪郭が顕わになってきた。

【関連記事】
児湯シータートル大学卒業生 「伝統キュウリの商品化に挑戦するキュウリ農家」 猪俣太一さん

「地元の人がヒーローになれる環境」

事務局長の高橋邦男さん(左)と、広報担当の永住美香さん(右)

事務局長の高橋邦男(たかはし・くにお)さんは、宮崎市出身。関西で編集者として働き、2017年にこゆ財団の一員となった。

「新富町は、よそ者への抵抗感が少ない土地。新しい挑戦にも比較的寛容で、若い人が挑戦しやすい土壌が元々ある」と、新富町の特徴を語る。例えば、ソーシャル・ビジネスに取り組む企業のためのシェアオフィスを作るプロジェクトに対し、空き家を快く貸してくれるなど、地域に少なからず協力者がいるという。地域ビジネスの主体、協力者、地元経済に目を向ける消費者が共存するこの地を、「地元の人がヒーローになれる環境」と、高橋さんはさらに特徴付ける。

一方、広報担当の永住美香(えいじゅう・みか)さんは、生まれも育ちも新富町。「財団の活動が活発になるにつれて、町外の方が新富町に来ることが増え、『ここには面白いコンテンツがいっぱいあるね』と言ってくれるんです。それがうれしくて」と声を弾ませる。
さまざまなソーシャル・ビジネスが進む地域のモデルとして、全国各地から視察に訪れる人が増えてきているという。

設立2年目の今年は、「ふるさと納税に依存することなく、地域資源を使った新しいブランドの定着を図っていきたい」と高橋さんらは意気込む。実際に、楊貴妃ライチを使ったボディクリームやチョコレートを開発して販路を開拓するなど、ブランド認知のフィールドを広げる準備に力を入れているところだ。
2018年、地元発信のまちづくりの理想として「こゆ」の名を全国津々浦々で耳にするだろう。そう予感させざるを得ない、パワーを感じさせてくれた。

こゆ財団ウェブサイト

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