株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門
マネジャー 古賀啓一氏
<プロフィール>
1982年生まれ。神戸市出身。
2007年 京都大学大学院人間・環境学研究科相関環境学専攻修士課程修了。
同年 株式会社日本総合研究所に入社。
2014~2016年 農林水産省に出向。農業、環境、観光等の分野でのコンサルティング実績多数。
企業と連携し、マーケットインの発想をもつ
「最近はSNSで自分がどんな思いで、どんな風に作物をつくっているかを発信し、自ら販路拡大を目指す農家も現れています。ただビジネス経験のない農家が自ら流通・販売までを担って大きく成功するというのは簡単なことではありません」と古賀さんは言います。
農産物の商品化には消費者ニーズをつかみ、商品のコンセプトをつくり、どのような消費者にどのような伝え方をすれば効果的かを考えるマーケティングに始まり、事業計画の策定、販路の確保・拡大など、ビジネスの知識やノウハウが不可欠です。
とくにこれまでの生産者に一番欠けているのが、マーケットイン(消費者視点)の発想です。「農家は自分たちの生産技術をいかに高め、いいものをつくるか、といったところばかりに意識がいきがちです。でも自分がどんなに良いものをつくったと思っても、消費者に受け入れられなくては意味がありません。ただ消費者が何を求めているかは、実際に売ってみないことには分かりません。卸や小売り、消費者の反応から改善を繰り返すことで、初めて商品力は向上していくのです」と古賀さん。
お米は従来、5キロ、10キロという単位で売られていました。しかしある企業が食べきりの3合パックで販売したところ人気となり、今では小袋入りのお米がお土産品としても売られるようになりました。このような発想こそマーケットインです。「消費者の視点を養うには、まずは商談会やファーマーズマーケットなどで自分がつくったものを直接売る、PRする体験が大事」と古賀さんは言います。
ただ必ずしも流通・販売のすべてを農家が担う必要はありません。むしろ企業と連携し、そのノウハウや技術を上手く活用することが大事です。自分の商品に惚れ込んで売りたいと思ってくれるバイヤー、加工して海外に販売することに意欲的な企業、マーケティングや生産性向上を支援してくれるIT企業などと、良きパートナーシップを組むことが重要なのです。「そのためのマッチングの場やしくみづくりが今、とくに求められています」と古賀さんは指摘します。
幸い、今は様々な業界の企業が農業に関心を示し、新規参入しています。IT企業が農業支援に取り組み、建築会社が植物工場をつくったりもしています。このような異業種の企業と連携することで、農業にイノベーションを起こせる可能性も高まっているのです。