食生活の大切さを感じたOL時代

店長の伊藤香織さん
「瑞花」は、街のメイン通りである神楽坂通りから1本入った場所にあります。白と木を貴重とした店内には、色とりどりの季節の野菜が美しく並び、従来の八百屋のイメージにはないスタイリッシュな雰囲気があります。
「神楽坂 八百屋瑞花」の創業者である矢嶋文子(やじまあやこ)さんは、元々は会社員として働いていましたが、退職後に起業し「神楽坂 八百屋瑞花」をオープンさせました。異例の転身の理由を尋ねると、そこには矢嶋さん自身の経験から培った哲学がありました。
「会社員時代は、仕事があまりに忙しくて不摂生が続いたり、食生活にまったく気を配らない毎日だったそうです。その結果、冷え性、肌荒れ、生理不順が当たり前になって、『体は食べたものでできている』ということに身をもって気づいたと聞いています」と伊藤さんは語ります。
矢嶋さんは、日本人の食事の7、8割は野菜が占めていることに気づいたそうです。ここでいう野菜には、キノコや豆、米など、植物として育つもの全般が含まれています。
「本来、日本人は菜食がメインで、肉や魚はほとんど摂っていなかったのです。ですから、野菜中心の食生活が日本人の体には即しているはずです。それならば、野菜を食べることを通して体も心も整う、おいしい食生活を提案していきたいと思うようになり、八百屋の起業を決意したそうです」。
その思いを胸に、青果の卸を専門とする「築地御厨(つきじみくりや)」で約2年の修業を経て、2009年に自身の八百屋「神楽坂 八百屋瑞花」をオープンしました。
たった3坪の小さなお店からスタート
開店当初は東京都内の都営地下鉄大江戸線牛込柳町駅近くに店舗を構え、2014年に現在の神楽坂に移転しました。
「今も小さなお店ですが、開業当初はもっと小さかったんです。たった3坪のスペースで、2人も入れば店内は満員!野菜を並べるのも一苦労でした」と、当時を知る伊藤さんは笑いながらその頃を振り返ります。
店長の伊藤さんは入社6年目です。もともとは実業団に所属していたスポーツ選手でしたが、引退後、瑞花でアルバイトとして働きはじめました。
「スポーツをしていた時にも栄養には気を配っていました。次は食に関わる仕事をしたいなと思ったのがきっかけでした。なんとなく八百屋がいいかなと思いながら、働けそうなお店を探していました」。
そんな中で「神楽坂 八百屋瑞花」を訪問して、矢嶋さんの人柄と野菜に対する思いの強さに惚れ込み、その場で「アルバイトとして働かせてください」と相談しました。