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【元気な農作物育成ガイド】植物の力を生かした育成法

連載企画:元気な農作物育成ガイド

【元気な農作物育成ガイド】植物の力を生かした育成法

病害や害虫から植物を守るための対策として使用されることの多い「農薬」。極力農薬の使用は控えたいと思うものですが、それが野菜や果物など口に入るものであれば尚更です。今回は、植物が本来持つ抵抗力を生かした育て方と環境づくりについて解説していきます。

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植物が持つ抵抗力

多くの植物はもともと病気や害虫に対する抵抗力が備わっているとされています。害虫に食害されたり、病原菌が寄生したときに、ある種類の抵抗性物質を発生させることが知られています。

人間にとっては心地良く感じられるハーブや香りのある野菜などが、害虫にとっては耐え難い香りとなります。植物が発生させる抵抗性とはまさにその香りにあります。

ミントやニラなど、強い香りを放つことで害虫を寄せつけない植物のことを「忌避(きひ)植物」と呼ばれています。

コンパニオンプランツを利用した対策

キャベツとネギの混植の様子

欧米では、忌避植物のことを「コンパニオンプランツ」と呼ばれていますが、栽培する植物の近くに忌避植物を植えることで、病気や害虫から守る方法があります。

比較的効果が高いとされるのはネギやニラとの混植(※1)です。ニラを4~5株ほど、トマトを取り囲むように植えつければ、拮抗微生物(※2)というニラの根の周辺に寄生する微生物の機能を利用することで、トマトの根腐萎凋病(※3)が発生しにくくなるといわれています。

ニンニクも有効に利用することができ、イチゴの株と株の間に1球ずつ植えることにより、香りとの相乗効果でアブラムシの防除に効果を発揮します。ニラやニンニクの香りの力は、ジャガイモの葉に寄生して吸汁(きゅうじゅう)するナスノミハムシの防除にも有効とされています。

(※1) 混植(こんしょく)…種類の違う植物を一緒に混ぜて植えること。

(※2) 拮抗微生物(きっこうびせいぶつ)…作物の根などに悪さをする微生物を駆除するために、土壌中で有効に働く微生物群のこと。

(※3) 根腐萎凋病(ねぐされいちょうびょう)…根から菌が侵入して維管束が褐変し、地際や茎の付け根などが腐り、下の葉から順番にしおれたり、黄変して枯れてしまうこと。

紫外線から身を守る働き

植物にとって脅威となるのは害虫だけではありません。病気の発生と大きく関連する活性酸素は、長時間紫外線を浴びることで植物の体内に発生するとされています。

この活性酸素は外部から攻撃する害虫と同じように、植物の生存を左右する要素となります。この活性酸素に対し、植物はカロテン、フラボノイド、ポリフェノールなどといった耐病性の高い抗酸化物質で内側から保護すると言われています。

植物の抗酸化物質の発生は、人間の健康にとってもプラスとされています。カラフルな色素を持つ野菜や果物は、この抗酸化物質の象徴でもあり、紫外線から身を保つ重要な役割を担っています。

抵抗力を最大限に生かす環境選びとは

植物にとって好しくない条件下で栽培すると、備わっている抵抗力を削ぎ、病害虫に悩まされる原因となります。それぞれの植物がもつ抵抗力を、最大限に生かす環境づくりが必要です。

基本的には日中の間、日によく当たることと、全方位から風が通り抜ける開けた場所であれば、植物は順調に育ちます。

なるべく日光が注ぐように枝葉を調節したり、風の通りが良くなるように間引きするなどして、環境づくりの工夫をすることが欠かせません。もちろん暑さに弱い植物には、日光が直接あたらない庭木の陰などに移動させたり、反対に寒さに弱い植物は早めに越冬対策をすることも大切です。一度暑さや寒さをしのいだ株は順応力が備わり、翌年も健康に育つことが多いとされています。

ですが、花つきや実つきを良くするために品種改良が加えられた品種は、病気や害虫の被害をうける可能性が高いこともあります。例えば、改良を施して味を良くすることを優先した結果、病害虫への抵抗力を弱めてしまう品種もあるようです。日々の観察を怠らず、早期に症状を発見して要所で薬剤を散布することが一番有効な方法です。

日あたりと風通しというこの二つを重要なポイントとしておさえることで、植物が本来備える抵抗力を効果的に生かした栽培環境を整えることができます。農薬の使用はここぞという時にのみ使用し、病気や害虫から守っていく自家栽培を実現していきましょう。

参考:『病害虫百科』(万来舎)

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