「みんなのよい食プロジェクト」の一環でスタート
JA全中は、心と体を支える食の大切さ、国産・地元農畜産物の豊かさ、それを生み出す農業の価値を伝え、国産・地元産農畜産物と日本の農業のファンを増やそうと、「みんなのよい食プロジェクト」を推進しています。
ごはんやお米をテーマとした作文・図画コンクールの開催、インターネットやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を活用した情報発信。JAビル(東京都千代田区大手町)の4階にある農業・農村ギャラリー「ミノーレ」でのイベント開催を通して、日本人にとって、「よい食」とは何かを考え、行動していくことを目的としています。
小学2年生の明るい女の子・笑味(えみ)ちゃんを見かけたことがあるという人もいることでしょう。イメージキャラクターである笑味ちゃんが応援する、みんなのよい食プロジェクトの一つとして、1989年からスタートしたのが、バケツ稲づくりです。
「日本人である私たちにとって、お米は主食で毎日のように食べているものです。ですが、お米がどこでどのように、誰の手によって作られているのか、子どもたちが自分の目で見る機会は多くありません。そこで子どもたちに、バケツを使った稲栽培を体験してもらい、一粒の種もみから稲が生長していく過程を観察し、収穫してごはんにして食べるまでを体験してもらっています」と加藤さんは語ります。
バケツと土を用意すれば、誰でも始められる稲づくり
バケツ稲づくりの始め方は簡単です。JAグループの公式サイトから、種もみと肥料、栽培マニュアル、お名前シールがセットになった「バケツ稲づくりセット」を申し込みます。
バケツ稲づくりセットが届いたら、バケツと土を用意するだけ。たったこれだけの準備で稲づくりが始められる手軽さが、バケツ稲づくりの魅力でしょう。第29回(2017年)には、3,181校の小学校にバケツ稲づくりセットを配布しています。バケツ稲づくりを授業に取り入れている学校の小学5年生を中心に活用されているそうです。(※1)
小学校の授業だけではなく、個人の利用者も多いといいます。バケツ稲づくりセットは、商業利用でなければ無料で配布してもらえます。おじいちゃんとおばあちゃんがお孫さんと一緒に、また、地域の子ども会で育てたいからといった理由で、申し込むケースもあるそうです。
第30回にあたる2018年は、33万セットが配布されます。個人向けは、2018年3月12日からインターネットで申し込みがスタート。在庫がなくなり次第、配布終了になるので、希望される方はなるべく早めに申し込みましょう。
インターネットを活用することで迷いや不安を解消
バケツで稲を育てるユニークさに目がいきがちですが、「バケツ栽培ならではのメリットも多い」と加藤さん。
「バケツと土を用意すれば、田んぼがないところでも庭やベランダなど場所を選ばず、手軽に稲作を体験することができます。バケツはホームセンター等で買ったものでもOKで、大きさは10~15リットルが目安です。
バケツ稲の育て方のマニュアルや動画、上手に育てるコツやポイントをインターネットで配信しています。よくある質問に対しても詳しく答えているので、参考にしていただけるといいですね」。
バケツ稲づくり事務局は、実際に日本農業新聞ビルの屋上で稲を栽培しました。ここでの栽培経験から得られたこと事務局に寄せられた質問などから、稲づくりに取り組む方が「これで大丈夫なのかな?」と心配になりがちなポイントを分かりやすくまとめて紹介しています。
例えば、良い種もみの選び方に始まり、スズメや害虫からの苗の守り方、水管理など、稲が立派に成長するよう、押さえておくべきポイントが細かく紹介されています。自分自身がバケツの中の畑を守り、稲を育てることで、生産者たちの苦労も想像できるようになります。自然の恵みやおいしいお米を食べられることに、感謝する気持ちが芽生えるのではないでしょうか。
手軽にチャレンジできることが良かったのか、プロジェクトをスタートさせて30年目の2018年、体験者が1,000万人を超える見込みとなりました。1,000万人が体験したことを知ることで、バケツ稲づくりを体験したいと思う方が増え、今後も体験者がさらに増えていくでしょう。
ごはんを主食とした、日本型食文化の再評価に向けて
JA全中は、子どもたちがバケツ稲づくりに取り組む様子を、インターネットなどを通じて情報発信することで、農業やお米を大切にしようというメッセージを広く世の中に伝えていきたいと考えます。
「バケツ稲づくりセットの配布は、次世代を担うこどもたちに向けた食育です。今後も子どもたちに向けてバケツ稲づくりセットの配布を継続していき、ごはんをたくさん食べるようになってほしいと願っています」。
バケツ稲づくりに関連した情報だけでなく、協同組合やJAの存在意義とそれらが果たす役割などを伝えていくこと。さらに、農業生産基盤の弱体化がすすむ日本の農業の現状、諸先進国と比べ低い日本の食料自給率の状況(現在、カロリーベースで38% ※2)などを伝えていきます。そして、改めてごはんを主食とした日本型食生活のメリットを知ってもらうきっかけを増やしていきたいそうです。
JA全中では全国各地でバケツを使った稲づくりを継続していくこと、そして体験者が1,000万人を超えたことを一つの節目として、バケツ稲づくりをより広く知ってもらえるよう情報発信を広く行う予定です。
30年かけて、コツコツとバケツ稲づくりの体験者を増やしてきたJAグループ。1,000万人を超える子どもたちが稲を育てたという事実が、食生活を大切にする気持ちを持った若い世代の育成に向けた、布石となるのではないでしょうか。
バケツ稲づくり(JA全中)
画像提供:JA全中
参考
※1 バケツ稲づくり指導書
※2 ⾷料⾃給率の計算⽅法
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