平安時代から使われていた食用菊
食卓に彩りや香りをプラスしてくれる食用菊ですが、口にするとシャキシャキとした歯ごたえも楽しめます。
平安時代から料理に使われていた食用菊は、毎年9月9日の「重陽の節句(菊の節句)」になると、長寿を願って菊花を浮かべた酒を飲む風習がありました。昔から日本の食卓に深く関わり寄り添ってきたことが伺えます。
食用菊の旬と産地
食用菊は1年を通して市場に出回っていますが、本来の旬は9月から12月頃です。産地としては愛知県が最も多く、全国の生産量のうち約6割を占めており、山形県、青森県が続きます。
食用菊の主な種類
食用菊には、主に「大輪の菊」と「つま物の小菊」の2種類があります。大輪の菊は、花そのものを食用にする菊で、特徴として甘みがあります。つま物の小菊は、黄色の品種のみで、よく刺身などの横に添えられています。
黄(阿房宮:あぼうきゅう)
黄色の大輪で干し菊にされたりサラダや漬物に利用されたりします。
紫(延命楽:えんめいらく)
紫色の「延命楽」は赤紫色の中輪の大きさが特徴的です。「もってのほか」「かきのもと」という別名があります。
鮮度のいい食用花の見分け方
花は鮮度が命なので、花弁の先までしおれていないものを選びましょう。表面上はきれいに見えていても根元がしおれている場合があります。また、菊特有の香りがあるか確認しましょう。華やかな香りがある場合は鮮度が高い証拠です。さらに、茶色く変色していたり、触った時にすぐに花びらが落ちたりするものは、避けた方がよいでしょう。
食用菊の栄養
食用菊に代表される栄養素は、ビタミンEです。抗酸化作用が強いとされるビタミンEは、体に良いとされ健康維持の働きもあると言われています。さらに血行を良くする効果も期待できます。
ビタミンEの他には、ビタミンCやカリウムなどが含まれています。
食用菊の保存法
最も適切な保存方法は、パックのまま冷蔵庫の野菜室へ入れること。鮮度が落ちないうちに早めに食べるか、茹でて冷凍保存しておいてもかまいません。
食用菊の下ごしらえ・おすすめレシピ
食用菊の下ごしらえは、酢を加えた熱湯でさっと茹で、水にさらしておきましょう。茹ですぎないことでシャキシャキとした味わいを保つことができます。
食用菊は漬物がぴったりです。また加熱しても変色しにくいため、おひたしにしたり、炊きたてのご飯に混ぜ合わせて菊花ごはんにしても良いでしょう。ガクの部分は香りが強く、佃煮にするのがおすすめです。
食卓を彩るエディブルフラワー
エディブルフラワーは、一般的に欧米で利用されてきた食用花のことを指します。品種がとても多く、同じ品種でも色のバリエーションが豊富です。
エディブルフラワーの下ごしらえ・おすすめレシピ
エディブルフラワーは、水か塩水で荒い、水気をしっかりとってから使用しましょう。ガクの部分は苦味が強いため、つまんで取り外しておきます。料理やスイーツの飾りに利用するほか、製氷皿に花びらを入れ、ジュースや水を加えて凍らせると、美しいアイスキューブができます。
エディブルフラワーの主な種類
バラ
色によって味が違います。カクテルなどの飲み物や、酢などの調味料に入れるのがオススメです。ビタミンCが豊富です。
プリムラ
プリムラはサクラソウの仲間で、花弁が柔らかいことが特徴です。黄色、赤色、紫色など色のバリエーションが豊か。12月から3月頃に多く出回ります。
なでしこ
「ダイアンサス」とも呼ばれています。ガクに苦みがありますが、外すとバラバラになるため注意が必要です。含有量の多い栄養素はカロテン。
ビオラ
ビオラはスミレの仲間で、やわらかいのでサラダやお菓子作りの際に多く使われます。食物繊維が豊富。旬は11月から5月頃です。
金魚草
金魚草には「スナップドラゴン」という別名が付けられていて、少し苦めですがユニークな形をしています。ビタミンCが豊富。
バーベナ
クセが無く食べやすいエディブルフラワーです。生のバーベナは3月から11月ころ市場に出回ります。ドライ品なら加熱しても色が変わりにくいのが特徴です。
デイジー
キクの仲間。生だと苦味がありますが、茹でると苦みが取れて食べやすくなります。
ストック
アブラナ科のエディブルフラワー。甘い香りでクセが無いので、ゼリーなどのお菓子によく使われます。
料理を一段と華やかに見せてくれる食用菊やエディブルフラワー。家庭で利用したことがある方は少ないかもしれませんが、一度試してみてはいかがでしょうか。
参考:「野菜と果物の品目ガイド~野菜ソムリエEDITION」(農経新聞社)