百姓のさらに上を目指す「千姓」
「子どもの頃から、農業に従事する百姓は、百の仕事ができなければならないと聞かされてきました。千姓(せんしょう)という法人名は、私が家業を引き継ぐことを決めたとき、父が法人を立ち上げる際に、父と私で考えた名称です。百姓のさらに上を目標にして、農業を産業として盛り上げようという思いや決意を込めました」と、一度聞いたら忘れられない法人名の由来を話すのは、代表の都築興治さん。知多半島のほぼ中央、愛知県阿久比町で10品種以上の米をはじめ、キャベツやブロッコリーなど、20種類を超える野菜を「多品種大量生産」し、独自の「つづき農場」ブランドで消費者に届けています。
都築さんが農業を志したのは大学2年生の時。夏休みに帰省した際に、実家でアルバイトをしたのがきっかけ。稲作専業農家だった父の下で、改めて農作業に触れて、自分で作ったものを工夫して売る。その可能性に「農業は面白いと感じた」都築さんは、大学卒業後、山梨県の農業法人「サラダボウル」で3年間、生産技術をはじめ、農地の管理や農業経営を学び、2011年の春、25歳で実家に戻り、父から会社を引き継ぎました。
肥沃な土地で多品種大量生産
阿久比町は古くから、温暖な気候と肥沃な水田に恵まれた米の町と知られています。秋に田んぼにまいたレンゲを春に鋤き込んで肥料とする「れんげ農法」で作る特別栽培米「れんげちゃん」を地域のブランド米として守り、生産しています。
父から引き継いだのは「れんげちゃん」をはじめ、コシヒカリ、ミルキークイーンや、あいちのかおり、ひとめぼれなど、早生から晩生まで、長い作付け期間を使って、稲作を行っていた20ヘクタールの水田。
農業を志した当初から、野菜生産に関心が強かった都築さんは、初年度から野菜生産にも取り組みました。タマネギ、トマト、イチゴや花、酪農まで、幅広く検討し、試行錯誤した結果、今では、阿久比の粘土質という土壌の特性が生きる品目、キャベツ、ブロッコリー、白菜、レタス、小松菜、ホウレンソウ、ナス、ダイコンなど、20品目を作付けする畑と、水田併せて120ヘクタールを耕作しています。