ファーストクラスで愛される、障害者のワイン―美味しさの秘密とは【前編】 – マイナビ農業

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生産者の試み

ファーストクラスで愛される、障害者のワイン―美味しさの秘密とは【前編】

ファーストクラスで愛される、障害者のワイン―美味しさの秘密とは【前編】

最終更新日:2018年04月26日

主要国内航空会社の国際線ファーストクラスや、九州沖縄、北海道洞爺湖サミットで提供され、国内外にファンを持つココ・ファーム・ワイナリー(栃木県足利市)。自社畑でのブドウ栽培から醸造、瓶詰めまでの作業を、ここで暮らす知的障害者の園生(えんせい)が手作業で行います。「福祉ワインとして同情で買ってもらうのではなく、美味しさで選んでもらう」。そんな気概のもと、手間ひまを惜しまず造られたワインの美味しさの秘密を探りました。

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“沢山の手仕事”が人とワインをつくる

平均斜度38度という急斜面のブドウ畑に、「カン、カン、カン…」と缶を叩く音が響きます。これは、畑に寄り付くカラスを追い払うために、知的障害者支援施設「こころみ学園」の園生たちが缶を叩く音。農薬を極力使わずに作られるブドウをついばむ、鳥たちを追い払うため朝から晩まで缶を叩いているのです。

今からちょうど60年前、地元の中学校の特殊学級教諭だった川田昇(かわた・のぼる)さんと生徒たちが中心となり、2年掛かりで畑を開墾しました。平らな土地が手に入らず、やむなく山を開墾することになりましたが、南西向きの畑は日当たりと水はけが良く、幸運にもブドウにとって栽培条件に恵まれていることが分かりました。

急斜面の畑には機械を入れることができず、手作業が求められました。結果的に土が機械の重さで踏み固めらることなく、柔らかい土壌を保つことができました。何より教室では心許なげに見えた生徒たちが、畑仕事で汗を流すことで、瞳の輝きを取り戻していきました。1969年に知的障害者が暮らす「こころみ学園」を設立、1980年には父母からの出資により、同園敷地内でココ・ファーム・ワイナリーが産声を上げました。

そもそも開墾した畑の作物にブドウを選んだ理由は、栽培の過程に「365日やってもやりきれない仕事があるから」と、専務取締役の池上知恵子(いけがみ・ちえこ)さんは話します。ブドウの栽培は、元々は園生の心身を鍛える訓練の一環として取り入れたものでした。子どもたちの仕事がなくなるという理由で、開墾以来この畑で除草剤を撒いたことがありません。草取りを始め、結実した16~17万個のブドウを守る「傘かけ」や「袋かけ」、そして果実一粒一粒の摘み取りなど、すべての作業を手で丁寧に行います。

都会の家では心身のバランスを乱し、暴れて家のガラス戸をすべて割ってしまったこともあったという若い園生が、早朝からの農作業のお陰で沢山食べて安眠し、自分自身をコントロールする忍耐力と自尊心を養えたというケースもありました。この「沢山の手仕事」こそが、人とブドウを立派に育てる秘訣でした。

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