ブドウがなりたいワインを造る

約8,000リットルを醸造するタンクの前に立つ柴田さん
「ブドウの声に耳を澄ませ、ブドウがなりたいワインにする」-。これが、ココ・ファーム・ワイナリーのワイン造りの方針です。発酵には、培養酵母でなくブドウに付着している天然の酵母(野生酵母)を使います。「野生酵母はテロワール(土地特有の性格)が具現化しやすい」と語るのは、醸造部長の柴田豊一郎さん。東京農業大学の農学部醸造学科を卒業後、ココ・ファームで修業を積んだ生え抜きの醸造家です。
ココ・ファームのワイン造りは、園生が運び、腐敗果や未熟果を除いて選定したブドウをスタッフが品種や生産農家ごとに分け、ステンレスタンクもしくは木樽で天然酵母を使って発酵させます。白ワインは2週間から2カ月、赤ワインは10~14日間程度要し、その後熟成させます。ステンレスタンクで造るワインはすっきりとした味わいに、木樽から生まれたワインは香り高く色の濃いものになるといいます。
ユニークなのは、デザートワインの製法。シイタケ用の乾燥機で乾かしたブドウを、長靴を履いたスタッフと園生が踏み潰し、木樽で発酵させた後、5年ほど熟成させます。
柴田さんは、「同じ銘柄でもビンテージ(製造年)ごとにかなり違うものができるが、それがココ・ファームの良さでもある」と話します。
国内外からの高い評価について、「自分もですが、何より園生の励みになっているのでは」と、柴田さんは笑みを浮かべます。ただ、飲み手に望むのは「難しいことは考えずに、楽しんで飲む」ということ。ブドウ作りから醸造、そして理想とする消費シーンまで、一貫した“自然体”が美味しいワインに結びついていました。