世界都市農業サミットが開催
来年2019年、東京都練馬区で「世界都市農業サミット」が開催されます。ニューヨークやロンドンなど、都市農業について特徴的・積極的な取り組みを行っている都市の中から、5都市ほどの行政関係者や研究者などを招聘する予定です。
サミットは3日間にわたって開催されます。シンポジウムや分科会、収穫体験などの視察を通して、練馬区での都市農業の魅力や可能性を発信するとともに、海外の都市農業に携わる人々と意見交換を行います。
練馬区都市農業担当部 都市農業調整課長の山本康介(やまもと・こうすけ)さんに、サミット開催のきっかけを伺いました。
「23区内で最大の農地面積を誇る練馬区が先頭に立って、区内はもとより世界に向けて都市農業の魅力を広く発信していきたいと考えました。そこで、区では2016年10月に学識経験者や農業者らで構成する世界都市農業サミット推進委員会を設置し、2017年8月に練馬区が『世界都市農業サミット開催計画(案)』を策定しました。その後同月に、区、学識経験者、農業者らで構成する世界都市農業サミット実行委員会を設立し平成31年度にサミットを、平成30年度にサミット・プレイベントを開催することとしました」。
練馬区の農業に携わる人々
世界的にも都市農業は注目されており、近年ではニューヨークの屋上農園やロンドンの市民農園などが成功事例として挙げられます。一方練馬区は、都市のなかに江戸時代からの農地が残っており、市民生活と融合していることが特徴です。
例えば、世界都市農業サミット実行委員会委員に名を連ねる加藤農園の加藤博久(かとう・ひろひさ)さんが農業を営むのも、江戸時代から代々受け継いできた区内の農地です。
元々は会社員であった加藤さんは2011年に農業を始め、少量多品種生産であった加藤農園のビジネルモデルを変え、現在はイチゴを主流としてブランド力を高めています。
また、今年3月で終了しましたが、加藤さんは「ネリマナイトマルシェ」をスタートしたことでも知られます。現在マルシェが多い練馬区ですが、その先駆けとなるような取り組みでした。
加藤農園のイチゴは直売がメインで、マルシェにも加藤さん自ら赴いて販売を行っていました。直接消費者に販売を行うのは、大規模農家にはない都市らしいスタイルともいえます。
また、市場には流通させないながらも、イチゴのほかに東京では珍しいオリーブを地元の飲食店に卸したり、飲食店のスタッフが農園に収穫に来たりとコミュニティが生まれているようです。消費者は、練馬区で練馬産の素材を使った料理をレストランで食べるという形で、地産地消に関わることができます。
また、練馬区には農業従事者とは違う立場から農業に携わる人もいます。同じく実行委員会委員のひとりである東京ワイナリーの越後屋美和(えちごや・みわ)さんは、2014年に東京で初のワイナリーを練馬区でオープンしました。東京のブドウを全体のワインの2~3割に使用し、ほかは山形県や青森県から仕入れています。農作物を使った加工品という意味でのワインでもありますが、練馬区の野菜を知ってもらうためのツールでもあります。ワイナリーでは曜日限定でワインと一緒に野菜料理を出すなど、練馬区の野菜のおいしさを知ってもらう取り組みをしています。農業に従事する人や行政だけでない立場から農産物の魅力をアピールする人がいるのも、練馬区の農業の魅力です。
2019年、何をアピールする?
今年の11月には世界都市農業サミットのプレイベントが行われ、本番の開催は2019年11月29日からです。来年の開催に向けての準備期間ですが、世界に向けてどんなことをアピールするのでしょうか。
山本さんによると、練馬区としてアピールしたいのは、まさに市民生活に農業が根付いている点だといいます。
「練馬区のように、市街地でありながら農地が融合して、代々続く農家が生業として農業を営んでいるということが、世界でも極めて特徴的であると考えています。練馬区では、生産者と消費者が近い距離にあり、その日に採れた農産物を味わうことができるという恵まれた環境にあるだけでなく、防災や環境面など、今後の都市における市民生活をさらに豊かにする可能性があります。このことについて、区内外はもとより世界に発信したいと考えています」。
山本さんは、世界の都市農業の意義や魅力を共有し、都市農業の発展につなげていきたいと話します。世界的にも都市と農業の在り方が見直されているなか、世界都市農業サミットで他都市とどんなやりとりが生まれるのか、練馬区でこれからどんな取り組みがされていくのか、楽しみです。
世界都市農業サミット 2019年11月29日~12月1日
【参考】
世界都市農業サミット開催計画(案)
ねりまの農業