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東京初のワイナリーができて3年半。東京の食の魅力を伝える

泉 友果子

ライター:

東京初のワイナリーができて3年半。東京の食の魅力を伝える

東京ワイナリーは、練馬区大泉学園にある東京初のワイナリーです。元々市場の卸で働いていたという越後屋さんが、「東京の食の魅力を伝えたい」と2014年にオープン。東京初のワイナリーとして3年半が経った今、ワインを通してどのように東京の食と関わってきたのか、聞いてきました。

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東京初のワイナリーをオープンしたきっかけは「野菜」

現在醸造中のタンクが5つ並ぶ

東京ワイナリー代表の越後屋美和(えちごや・みわ)さんがワイナリーをオープンするきっかけになったのは、東京都練馬区の野菜に出会ったことでした。元々市場で野菜の卸をやっていたという越後屋さんが配属されたのは、産地を開拓する部署。「東京の市場なんだから、東京の野菜を扱おう」という方針で、東京の農家と関わることが増えていきます。「東京で野菜ができるの?」という思いをもちつつ、東京の農地の4割を擁する練馬区へ。

そこで美味しい野菜と出合ったことから、「東京の野菜の美味しさを伝えたい」と考えるように。何の不満があったわけでもない卸の仕事ですが、「食や農の分野で何か表現ができないだろうか」と考えるうちにたどり着いたのが、ワイナリーをオープンすることでした。東京の野菜を知るきっかけとなった練馬でワイナリーを開くことを決め、移住します。

この数年で日本ワインがブームになってきたとはいえ、ワインシーンのなかでは海外産が主流です。当時はなおさら、日本産のワインはまだこれからという分野だったことでしょう。「地産地消」といったイメージがあまりないワインを、なぜライフワークとして選んだのでしょうか。また、どのように「東京の野菜の魅力を伝えること」に結びつけたのでしょうか。

ワインのマリアージュで初めてのものに出合う

これからワインになる沖縄の山ブドウ

元々ワインが好きだったという越後屋さん。ワインは農作物の味わいを伝えるのに適していると考えます。「ワインは農産物100%で水も入れずに作るので、農産物の味わいがよく出るんです」。

そして、ワインはフードとの「マリアージュ」が楽しめます。「野菜に合うようなワインを作りたいと思っています。同じ地元の土や水を使ったワインで、農産物の魅力を発信していきたい」。

併設のカフェでは土日に昼呑みと称して、ワインとともに野菜を使ったおつまみを出しています。ワインと同じように、野菜を美味しいと言ってもらえることが嬉しいのだとか。お客さんがここで初めて食べた野菜に興味をもって実際に買いに行くなど、少しずつ影響があるのではと感じています。

また、東京ワイナリーのサポーターには年に2回ワインを送っていますが、その際必ず東京で生産された野菜も送っています。この目的も、知らない野菜を知ってもらうこと。「知らない野菜が送られて来たら調べて調理したりすると、新しい発見になります」。

越後屋さんが目指すのは、決して東京の人に食べるものすべてを東京産にしてもらうということではありません。東京産のワインがあったり、東京でできた野菜があったりということを知ってもらって、少しだけでも生活に取り入れてもらえたらと話します。

「今まで知らなかったものを発見する、くらいでいいと思うんですよ。毎日東京のものを食べようと言っているわけではない。東京は山もあるし海もあるし、もっと広げれば小笠原諸島もあるから南国のものあります。食にとって恵まれた場所だと思うんです。ワインがそれを知るきっかけになれば。ワイナリーにはワインを飲まないという人も来るけど、それでも全然いいんです」。

自身も初めて東京の野菜に出合ったことがワイナリーをオープンするきっかけになった、越後屋さん。「出会い」や「発見」を大切に、東京の野菜の魅力を発信していることが伺えます。

日本ワインはやさしい

店内で試飲をして選べる

東京ワイナリーで使用するブドウは、高尾など東京でとれたものが全体の2~3割。ほかに、山形のデラウェアや青森のスチューベンなどのワインを作っています。

日本のブドウの収穫時期は夏から秋にかけてで、現在(3月末)は4シーズン目となる仕込みがひと段落したところです。初年度は500本ほどでしたが、2017年度は1万本ほどのワインが出来上がりました。

仕込み以外の時期は、実際にブドウを栽培している農園に赴いて生産者と話をしたり、そのときのブドウの状態を確認しに行ったりしています。その際、出来上がったワインをブドウの生産者に持っていくそうです。

「今年はこんなものができました、と必ずワインを持っていきます。農家の方との出会いもご縁ですし、毎年同じ方のブドウから作っているので報告しに行きます」。
一番長く付き合いのある農家は3年以上となり、「もっと糖度を上げてからとりましょう」「もっと酸が残っているうちにとりましょう」などと栽培や収穫についてリクエストするようにもなったそうです。

食に関して何でもあると感じる東京ですが、意外にも2014年に東京ワイナリーができるまで、ワイナリーはありませんでした。東京ワイナリーがオープンし、東京で暮らす人も、遠くに行かなくてもワインを醸造しているところに訪れられるように、しかもワインを同じ場所でとれた野菜と一緒に楽しむという選択肢ができたのです。

東京ワイナリーではボトルの販売や量り売りのほか、醸造所の見学も受け付けています。カフェや昼呑みも行っているので、営業時間などの詳細はウェブサイトをチェックしてみてください。

東京ワイナリー
東京都練馬区大泉学園町2-8-7

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