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2019年スタート! 今から始める「収入保険」準備 第4回収入保険制度の加入条件とスケジュール

2019年スタート! 今から始める「収入保険」準備 第4回収入保険制度の加入条件とスケジュール

2019年からスタートする「収入保険」は、チャレンジする農業者を支援する新しい保険制度。これまでの生産品目によって異なる補償ではなく、農業者ごとの収入減を補てんすることが最大のポイントです。新たな作物の導入や販路の拡大など、“攻めの農業”を展開したいけれど、リスクにちゅうちょしてきた農業者にとっては大きなチャンスです。少ない保険料で、自然災害はもちろん、価格の下落をはじめ、様々な要因で起こり得る“万が一”の収入減少にも、平均収入の8割以上を補てんする収入保険制度。その特長を4回に渡って紹介してきた最終回は、加入条件と今後のスケジュールについてまとめました。

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収入保険の加入条件「青色申告」

これまで、収入保険の補てん方法や保険料について触れてきましたが、最後は加入条件について。農業者の収入に合わせて、保険料や補てん金額が変わる「収入保険」。

その算出の基本となる過去5年間の平均収入を求める際の収入の把握方法は、農業者の自己申告によります。実施主体の全国農業共済組合連合会が、個々の農業者の収入を正確に把握する必要があるため、実施主体は農業者が提出する農産物の販売金額などを記載した加入申請書や、青色申告などの税務関係書類をもとに農業者の収入を確認します。そのため、収入保険に加入を希望する農業者は「青色申告」を行うことが加入の条件になっています。

青申告とは

青色申告は、日々の取引を所定の帳簿に記帳し、それに基づいて正しい申告をする制度で、「正規の簿記(複式簿記)」と「簡易な方式」があります。

正規の簿記の原則に沿って記帳している場合、それに基づいて作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付し、税務署に提出します。期限内に提出した場合には、青色申告特別控除として、最高65万円差し引かれるメリットがある申告方法です。※「簡易な方式」の場合、10万円を控除。

※「青色申告」については、各地域の農業協同組合、農業委員会などでも農業者からの相談や代行サービスなどのサポートを行っています。

収入保険 初年度の加入申請は2018年10月から

収入保険制度は、2019年1月1日から実施初年度の保険期間が始まります。それに合わせて加入する場合、2018年10月から11月末までの間に加入申請を行い、同年12月末までに保険料・積立金を納付する必要があります。 ※分割支払いも可能(納付期限は保険期間の8月末まで)。

初年度は、2019年1月1日から同年12月31日までの保険期間の確定申告(青色申告)を2020年3月の期限内に行い、保健期間中の収入が基準収入より下回った場合、農業者は、確定申告後の3月から6月までの間に保険金・特約補てん金の請求を行います。請求を受けた事業実施主体の全国農業共済組合連合会で査定が行われた後、農業者に保険金・補てん金が支払われます。

青色申告の実績が1年分以上ある農業者は2019年(平成31年)1月から加入できますが、青色申告を5年間継続している農業者が基本なので、4年未満の加入者は、補償限度額の上限が変わります。

加入申請時の青色申告実績が1年 保険方式の補償限度額の上限は70%、2年・75%、3年・78%、4年以上・80%
※保険開始後に得られる加入申請の年分の実績と併せて5年以上となる
※ただし、青色申告のうち、現金主義による所得計算の特例を受けている農業者は対象外になります。

2018年(平成30年)4月以降に青色申告に取り組む場合、2019年(平成31年)3月15日までに、税務署に青色申告承認申請を行えば、2022年1月から加入できます。
就農間もない人や、現在、白色申告を行っている農業者も、5年の実績を積むまで加入できないということはありません。

もう一度確認 対象となる収入

ここで、収入保険の対象となる「収入」を再度確認しましょう。
・収入保険は、自ら生産した農産物の販売収入全体が対象です。
※「収入」からコストを差し引いた「所得」では、合理性の確認が難しいことから、「収入」を基にした保険制度になっています。
・農業経営者の中には、近年、6次産業化の取り組みに力を入れ、農産物の加工品を製造・販売する事業者も多くなっていますが、加工品については、農産物以外の原材料のウエイトが大きい場合や、加工事業者との公平性を考慮して、原則として販売収入には含めません。
・ただし、所得税法上の農業所得として申請されているもの(※もち、荒茶、仕上げ茶、梅干し、干し大根、畳表、干し柿、干し芋、乾ししいたけ、牛乳など。精米などの加工品であっても、農業者自らが生産した農産物を加工して販売する場合)は含まれます。
・補助金については、販売収入に含めませんが、実態上販売収入と一体的に取り扱われている、畑作物の直接支払交付金(麦、大豆など)、甘味資源作物交付金(さとうきび)、でんぷん原料用いも交付金(かんしょ)や、加工原料乳生産者補給金の数量払は含みます。

もう一度確認 対象要因

・自然災害による収量減少
・需給変動による価格低下
といった農業者の経営努力では避けられない収入減少が補償対象
・捨て作り
・取引先と結託した意図的な安売り
などによって生じた収入減少は補償対象外
※保険金などの不正受給防止策のため、農業者は災害などの事故発生時に実施主体に通知などを行うとともに、実施主体は、必要に応じて、現地調査を実施します。
不正があった場合は、保険金・特約補てん金を支払わないほか、重大な不正があった場合は、翌年以降の加入を禁止する処置が講じられます。

収益性の高い新規作物の生産や、新たな販路の開拓などにチャレンジする農業経営者の意欲的な取り組みを促進する「収入保険制度」。農業者は、2018年10月の収入保険加入申請の開始までの間、現状のセーフティーネットの役割を担う制度と比較し、選択する時間があります。様々な「農業を強くする制度」の中で、最適な補償を得ることも、農業経営に必要な視点。新たな制度は始まる今、改めて、自身の農業に必要な制度を検証にしてみてはいかがでしょうか。

収入保険制度の事業主体

収入保険制度の実施主体は、全国を区域とする農業共済組合連合会(全国連合会)と、各都道府県の農業共済組合連合会です。
加入条件や補償内容について、詳しくは各都道府県の、農業共済組合の相談窓口にお問い合わせください。

問い合わせ一覧

出典:農林水産省Webサイト

農林水産省のホームページは、収入保険のシミュレーションや、基準収入の算定シミュレーションを用意しています。

2019年スタート! 今から始める「収入保険」準備 を第1回から読む
2019年スタート! 農業収入を補てんする「収入保険」 第1回収入保険とは?
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