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2019年スタート! 農業収入を補てんする「収入保険」 第1回収入保険とは?

2019年スタート! 農業収入を補てんする「収入保険」 第1回収入保険とは?

2019年からスタートする「収入保険」は、チャレンジする農業者を支援する新しい保険制度。これまでの生産品目によって異なる補償ではなく、農業者ごとの収入減を補てんすることが最大のポイントです。新たな作物の導入や販路の拡大など、“攻めの農業”を展開したいけれど、リスクにちゅうちょしてきた農業者にとっては大きなチャンスです。少ない保険料で、自然災害はもちろん、価格の下落をはじめ、様々な要因で起こり得る“万が一”の収入減少にも、平均収入の8割以上を補てんする収入保険制度。その特長を4回に渡って紹介します。第1回は既存の制度との違いを整理します。

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農業収入そのものを補てんする保険制度

「収入保険」は農業生産物の品目の枠にとらわれず、自然災害による収量の増減だけでなく、価格低下も含めた収入減少を補てんする制度です。2017年6月、国会で農業災害補償法の一部を改正する法律案が可決され、新たに「農業経営収入保険事業」が創設されました。

収入保険制度の目的は、政府が推進する農業の成長産業化に向けて、農業者が自由な経営判断に基づいて、自らの経営を拡大できるようにすることに主眼を置いて、予期しなかった収入の減少が生じた場合に、総合的に対応し得るセーフティーネットを整備することです。

農業は自然災害をはじめ、様々な外的要因で収入が左右されるケースが多く、計画的な経営を進めることが難しい業種です。農業共済をはじめ、収入減少影響案和対策(ナラシ対策)や、野菜価格安定制度など、これまでも類似の制度はありましたが、いずれも作物の品目別に設けられ対策で、対象にならない作物が存在したり、地域データが基になるために、地域全体で被害が発生しなければ補てんが受けられないなどの課題がありました。

新しくスタートする「収入保険」は、個人の収入に着目した保険制度です。自然災害をはじめ、価格の下落など、さまざまな要因で農業者の収入が減少した際に、平均収入の8割以上が補てんされます。

収入保険制度のポイント

・原則としてすべての農業経営品目が対象
・価格低下も含めた収入減少を補てん
・農業経営全体として加入する

それによって、収益性の高い新規作物の生産や、新たな販路の開拓などにチャレンジする農業経営者の意欲的な取り組みを促進する。

収入保険に加入することによって、個々の農家は、これまで農業共済の対象外であるなどして、十分なセーフティーネットが措置されていなかった野菜などの生産・販売や、複合経営に取り組む際にメリットがあります。
ただし、収入保険は農業経営全体の収入を対象にしているため、従来の品目ごとに補償される類似制度との併用はできず、農業者はどちらかを選択しなければなりません。

現行の主な類似制度

・収入減少影響案和対策(ナラシ対策)
米、麦、大豆などの収入額が標準的収入額を下回った場合に補てん。
・農業共済
固定資産の損失を補てんするもの
・野菜価格安定制度
野菜の平均販売価額が補償基準を下回った場合に補てん。
一定規模以上の面積などを満たす指定産地などで生産された野菜が対象。
・水稲共済
災害により米の収穫量が平年の収穫量に比べ一定割合以上減少した場合に補てん。
・いぐさ・畳表農家経営所得安定化対策
・加工原料乳生産者経営安定対策
・マルキン

コスト増に対しても補てんする「マルキン」対象の、肉用牛、肉用子牛、肉豚、鶏卵は収入保険制度の対象品目から除きます。ただし、複合経営の場合は他の品目の収入保険制度に加入できる。

 

出典:農林水産省Webサイト(http://www.maff.go.jp/j/keiei/nogyohoken/syu_kyosai.html)

栽培規模の拡大や生産品目の多角化、新しい販路の開拓。チャレンジする農業者を力強く支える「収入保険」。次回は、収入保険のメリットと補てんされる金額の算出方法をお伝えします。「第2回収入保険制度の基準収入と補てん金額」は、2018年4月29日に掲載を開始します。

第2回はこちら
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