黄ニラ栽培の歴史
黄ニラはニラの品種のひとつというわけではなく、栽培方法を変えることで、食感や色に違いを出したものです。一般的なニラが葉を食べるのとは異なり、黄ニラは主に根の部分を食します。
ニラはユリ科の多年草で、中国や東南アジアが原産と言われています。9世紀ごろには日本に伝わったとされており、『古事記』などの書物にも登場します。食材よりも、整腸剤などの薬剤として使われていたようです(※1)。
その後の歩みははっきりしませんが、明治時代以降、各地でニラの栽培がはじまりました。黄ニラは明治時代から栽培が始まり、特に岡山県で浸透しました。明治時代から全国に先駆けて生産開発を試みた人がおり、生産技術や品種の研究を重ね、販路の開拓や調理方法も開発を進めたのが岡山県で発展した理由だと考えられています(※2)。30年ほど前になって、ようやく全国に流通する基盤がつくられました。
岡山県は現在も黄ニラ生産量全国1位を誇り、東京や大阪等の大都市を中心に広く出荷しています(※3)。中でも、岡山市の牧石(まきいし)地区では、旭川の育む豊かな砂壌土(さじょうど)の水はけのよさから、黄ニラの栽培がさかんに行われています(※4)。
黄ニラを黄色くするための栽培方法とは
ニラは光合成をすることで緑色になります。そこで、黄ニラは太陽光線を遮断して栽培し、着色しないように育てます。この方法を「軟白栽培」といいます。当初は農閑期に室内で育てていたようですが、現在は年間を通じて畑で育てられます。
発芽して育ったニラの根に養分をしっかりと蓄えさせたあと、ニラを刈りとって根だけの状態にします。その根を黒いビニールシートで覆ってやることで、黄ニラは育ちます。この間に少しでも日が当たってしまうと緑色になってしまうので、厳重にしなくてはなりません。ビニールシートの下で、根の養分を使って、ニラはしっかり育つのです。
成長した黄ニラの収穫は、太陽光を浴びないように気をつけ、時間を掛けずに行うのがコツです。収穫したら洗った後に天日干しします。天日干しすることで、黄色がしっかり色づくからです。収穫後もていねいに面倒をみてあげることで、見た目も味も優れたものになります。
シャキシャキしていておいしい黄ニラ 脳にもよい!?
こうして育てられた黄ニラは、やわらかい食感で、甘味があります。香りは一般的なニラからイメージする強烈なものではなく、ほのかで上品です。中華料理などで人気ですが、生産量が一般的なニラよりもずっと少ないため、高級食材と言われることも。炒め物などにいれるとシャキシャキ感が増して、特においしく食べることができます。
黄ニラには、脳の老化防止の働きがある「アホエン」という物質が含まれています。アホエンはニンニクなどにも含まれますが、熱に弱いため、加熱を与えずに調理が可能な黄ニラの方が摂取しやすく、この点でも注目されています(※1)。
いかがでしたか。手間暇かけられて育った黄ニラは、ぜひ味わってみたい食材。市場で見かけることは少ないかもしれませんが、レストランなどで見つけたらぜひ召し上がってください。ニラのイメージが変わるかもしれません。
参考
※1 黄にら:JAつやま
※2 黄金の束、岡山ブランド黄ニラの魅力に迫る
※3 晴れの国おかやまカタログ
※4 旬膳暦