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農業でブロックチェーンはどう使われるか ~スマートコントラクト編~

農業でブロックチェーンはどう使われるか ~スマートコントラクト編~

ブロックチェーン技術によって、様々な場所での実用化が期待される「スマートコントラクト」。スマートコントラクトは、プログラム上で契約が自動的に手間なく執行できる技術です。国際間不動産取引や電力取引といった、手続きが煩雑で市場環境が刻々と変わる領域で実用が始まっています。本記事ではスマートコントラクトの概略を説明するとともに、農業分野での実際の事例と、考えられる活用方法について紹介したいと思います。

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プログラム次第で自動で契約を執行する「スマートコントラクト」

スマートコントラクトとは、「プログラムに基づいて自動的に執行される効率的な契約」という、元々あった概念でした。“特定の管理団体を持たず、改ざんできず、価値の送付もできる”ブロックチェーン(※)や仮想通貨が誕生する事によって、この概念が現実のものになろうとしています。

※ 農業でブロックチェーンはどう使われるか ~トレーサビリティ編~

具体的なプロセスは、①契約定義(取引内容や執行条件など)をあらかじめブロックチェーン上に記載しておく事で、後々②イベント発生(あらかじめ定義されていた執行条件を満たす)を自動的に検知し、③契約執行、④決済、を自動的に行う形になります。

ブロックチェーン

スマートコントラクトのメリットは、契約の改ざん不可能性と、仲介者の不在によるコスト・手間の削減です。従来の一般的な個人取引では、お互いに信用を担保する事ができず、仲介者に頼ったものとなっていました。例えば、不動産取引の場合、Aさん個人が持っている土地を、Bさん個人に販売したい場合、直接契約を行うケースはまれで、仲介として不動産会社が入る事で、契約の改ざんを防いだり、不動産の権利がきちんと移行される事をサポートしたりしています。その際に、権利移譲が正確に行われるよう、多くの書類や手続きが必要となります。結果、市況価格の変化等の状況に合わせた細かな契約内容の変更が難しくなります。このような契約は、不動産企業にも手間がかかるため、その分手数料が発生し、取引者双方のコストを押し上げます。スマートコントラクトでは、改ざん不能な形で契約の執行内容をプログラムに記載する事で、仲介者を持たないと同時に、従来の手間を減らした契約の執行が可能になります。このことは、信用を持った中間者が不要になる事から、“トラストレスな取引”と呼ばれます。

希望価格を決めて自動で取引を行うAgriDigital

農業

AgriDigitalは、オーストラリアのスタートアップ企業が提供する農作物取引プラットフォームです。元々ブロックチェーンを利用しない形でサービスを提供しており、プラットフォーム上で穀物の契約から配送、倉庫管理、請求、決済までの全プロセスを管理できます。現時点(2018年5月時点)で、ユーザー数1600以上、累計決済額4.5億ドル以上を達成しています。昨年より、穀物輸出会社CBHグループと連携して、ブロックチェーン導入の試験を進めています。

ブロックチェーン活用の狙いの一つはスマートコントラクトを利用した条件に応じたリアルタイムの取引実行です。AgriDigitalはリアルタイムでの市場価格の追跡が可能なため、生産者や買い手双方が事前に希望価格と取引内容を設定しておく事で、自動で最適な取引を行う事ができます。つまり、どの生産物をいつ購入するか、販売するか、倉庫に保管するか、あらかじめプログラム上に設定しておけば、市場の変化に合わせた形でそのとおり自動的に取引が行われていくという事です。

国をまたいだ土地資産もスムーズに!?

農業

スマートコントラクトの農業事例は少ないですが、可能性のある領域は多くあります。その一つが土地資産の売買です。特に国際間の土地取引は、スマートコントラクトで大きく改善できるかと思います。現在、農業分野ではありませんが、不動産取引の領域でサービスが誕生しています。

世界初の国際不動産取引市場であるPropyの取引ツールでは、個人が不動産を購入できます。昨年、本サービスを使ってウクライナの不動産売買が行われた事が話題になりました。このサービスのすごいところは、スマートコントラクトが自動的に、不動産代金の支払いからウクライナ国内の不動産所有権の登記自体の書き換えまでを行ったところにあります。

今のところ、農地に特化した不動産サービスで有名なものはないようですが、現在煩雑になっている土地取得(海外の場合は特に)がスマートコントラクトで効率化できる事は間違いありません。日本にいながら、グローバルに農業経営を行うという未来が来るかもしれません。

AgriDigital
Propy

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