貴重な失敗談が語られた“伝説の回”
マイナビ:すべて思い入れがあると思いますが、皆さんにとって特に印象深いゲストやロケを教えてください。
山崎:私が印象に残っているのは、九重町の牧場「イーグルファーム」さんでのロケです。こちらは6次産業化に力を入れていらっしゃるのですが、私はそれまで「6次産業」という言葉を知らず、農業というのは作る人、加工する人、売る人…にそれぞれ分かれていると思っていました。一つ一つの工程だけでも大変なはずなのに、一貫して作っていらっしゃる。しかも、畜産だけでなく米も果物も生産していらっしゃるのが本当にすごいなぁ、と。朝早くから活動されているそうですが、いきいきとお話される姿が印象的でした。
マイナビ:アナウンサーというお仕事も、朝が早く忙しい印象です。
山崎:私たちとは比べ物にならないです。「自分も頑張ろう」と勇気を貰いました。
大田:山崎アナが牛の舌を触らせてもらったり、牛の出産が始まって牧場主さんが飛んで行ったりと、相当躍動感のある現場でしたね。
山崎:でしたね!黒毛和牛の牛タンを触ってしまいました。
大田:楽しい話ばかりじゃなくて、台風で再起不能の打撃を被ったり、何千万円という借金を負ったり…と、強烈な経験をされた農家さんが、失敗談を包み隠さず話してくれた回がありました。リスナーの農家さんたちは、仕事を全て中断して聞き入ったそうです。どの回も忘れられないですが、それは特に印象に残っています。
矢田:あと、ゲストで来てくれた“農ガール”(女性農業者)たちは素晴らしいですね!
山崎:矢田さん、力が入ってますね!
矢田:やっぱり「カッコイイお姉さんだなぁ!」って思うわね。人を束ねて、目標を持って突き進んでいけるから、凄いと思うなぁ。ああやって頭角を現す人には、ファンがつくよね。凛々しい娘さんがいると、周囲のじいちゃんばあちゃんも応援するようになるし。その人が地域へ色んな人を引き連れてくるだろうし、楽しいもんですね。
大田:農ガールっていま流行ってますけど、上の世代の女性も強いんですよ。既に農業からは引退されている、80代の元・農ガールが出てくれたこともあります。その方がゲスト最高齢ですかね。お洒落な可愛い人やったね。女性の力は、農業に不可欠ですからね。特に“チーム力”に長けていますよね。
矢田:リーダーっぷりがいいわな。「親分に付いていきます!」という気になる。野菜ソムリエとかパティシエとか、「食」の方面から出てくれた人も良かったね。
大田:農業をネタに番組をやっていると、ありとあらゆる人に繋がっていきますよね。番組を通じて出会った若手農家さんらを通して、八百屋さん、市場の方々、シェフ…と色々な方に繋がっていきます。
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ラジオパーソナリティの知られざる努力
マイナビ:「教えて!農業」のパーソナリティを務められているからこその、「職業病」は存在しますか?
山崎:ラジオは音だけで伝えるメディアなので、番組中に物を食べるときは、より美味しそうな効果音を立てて、魅力を伝えなくてはならないんですね。日常生活ではお行儀が悪いですけれど、飲むときも「ジュルッ」と音を出してみたり。旬の魅力を伝えるために、スナップエンドウをマイクギリギリまでに近付けて、「サクサクッ」という音を出して食べたり。食材ごとの効果音を研究し、普段から食べ方を練習するようになりました。大田さんはいかがですか?
大田:最近、農業は旬のトピックとして、ありとあらゆるメディアから注目されていますが、自分の知らなかったことを報道されると、「うわぁ遅れた」と悔しくなりますね(笑)
矢田:努力家やな~。私はずっと文章を書く仕事をしていたので、しゃべることに関しては職業病といえる程のものはないですが、出来る限りゲストを引き立てて、キラッと光るものを引き出すようにしています。そのためなら、自分が笑い者になってもいい。
リスナーに「聞いて良かったな」と思ってもらえるかが勝負です。リスナーとゲストは放送日に初めて出会うのだから、「自分たちは知っている」といった内輪的な雰囲気を出してリスナーをがっかりさせない、ということには最も気を付けています。
リスナーからの良い反響を農業者へ繋ぐ、接着剤のような役割でありたいです。
マイナビ:山崎アナウンサーの前任者は、放送開始から今年3月まで番組を担当していた安元佳奈アナウンサーです。先輩の存在は大きいと思いますが、山崎さんならではの“味”を出すために気を付けていることなどありますか?
山崎:私が安元さんに唯一勝てることといったら食べる量なので(笑)、いかに美味しそうに伝えるかというのは、私らしさとして今後伸ばしていきたいと思っています。安元さんは8年間、県民から愛されていらっしゃったので、番組のテイストは変えたくないと思っています。守るものは守りつつ、私らしさも加えて変えていけるよう心がけたいです。
マイナビ:「守りながら変えていく」って、農業でもキーワードですよね。
山崎:そうですよね。あと、いま安元さんとテレビ番組でもご一緒しているので、迷ったときはすぐ聞いて、頼っています(笑)
マイナビ:番組に長く携わっていらっしゃるお二人から見て、山崎さんの健闘ぶりはいかがですか?
大田:ものすごく好奇心旺盛です。たとえば、家庭菜園でトマトや大葉、ブルーベリーを作ってみたり、生産者に教わった調理法を実際に家でトライしたり。現地に行っても好かれますので、何も心配していません。
マイナビ:ブログで拝見しましたが、ダイコン農家さんからのお裾分けを、おすすめされた通りにカレーの具材として使い、茹で方を「しっかり」と「シャキシャキ」の2パターンに分けて料理されていましたね。
番組を聞いて、山崎さんは受け取り手のことを考えて言葉を選んでいらっしゃるのだなと思いました。たとえば、価格の話題では「安い」ではなく「お手頃ですね」と表現したり。
山崎:実は「安いですね」というのは、以前テレビ番組で使ってしまって、「人によって捉え方は違うから、その表現は使わない方が良いよ」とアドバイスを貰ったんです。それからは気を付けています。
矢田:私は爺ですから子守役なので、この子の評価が私の評価です。皆さんに愛される存在に育っていくのが楽しみだね。
農業新規参入者が心がけること
マイナビ:「昨今の農業ブーム」についてセミナーでお話されたこともある、大田さんにお伺いさせてください。最近、農業に関心を持つ企業や個人が増えていますが、農業とどのような関わり方をするのが理想的なのでしょうか。
大田:大分県は特に農業への企業参入が多いことで有名なのですが、鳴り物入りで入ってきても、失敗して撤退する事例も少なくありません。でもそんななかで、上手くやっていらっしゃるところは、地元の方と密な付き合いをしている。いかに地元と溶け合っていけるかが大切だと思います。制度の整備などで農業へ参入し易くはなっていますが、入ってからが肝心ですよね。地元の人が、入ってきてくれた人を盛り上げる応援団になることも大切だと思います。
県内でも新規就農者や小さな農業塾の生徒の数は増えていますが、若者が地域に完全に溶け込んでうまくやっている例はたくさんあります。
マイナビ:ありがとうございます。それでは最後に、皆さんが番組を通して伝えたいことを教えてください。リスナーさんのメッセージがあればぜひ!
山崎:大分には、お値段はするけれど美味しい「ブランド農産物」が多いです。たとえば、ハウスみかんなど。しかし、ほとんどが関東などへ出荷されてしまって県民が知らないことが多いので、まずは地元に消費してもらえるように番組で伝えていきたいです。
リスナーの方には、番組を聞いて「私も食べてみたい」「農園に出かけてみたい」と思って頂き、消費量や認知度アップ、回り回って農家さんの利益に繋がればうれしいです。リスナーさんには、「美味しいもの情報をお届けするのでぜひ食べてね!」と伝えたいです。
矢田:今まで番組に出てくれた人が、成長していく姿、昇り詰めていく姿を、リスナーと応援していきたいですな。あとは、山崎アナの成長していく姿を一緒に見ていきましょう!トリは、大田くんですね。この番組は、大田くんがどんな人を連れてくるかに懸かっているわけですから。
大田:伝える手段が色々とあるなかで、ラジオは「言葉」が主なので難しい部分もあります。ですが、やはり農家さんとラジオは密接です。ラジオファンの農家の皆さんはもちろん、農業に関心のあるリスナーの皆さんに「やっぱり農業っていいな」「なんだか、勇気や希望がわいてくるラジオだな」と感じて頂きたいですね。生産者と消費者を結ぶ架け橋となり、「農業LOVE」の心で、大分の農業の魅力や元気を「言葉」で伝えていきたいです。
マイナビ:言葉と効果音とで、ですね!
山崎:そうです(笑)あと音楽と!
大田:リスナーさんには、少しでも大分の農産物に関心を持って頂ければうれしいです。
マイナビ:皆さんの熱い思いが伝わってきました、ありがとうございました!
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<取材を終えて>
フレッシュな存在ならではの“体当たり”で農業と向き合い、自らの言葉と感性で伝える山崎アナ。生産者に寄り添いながら、自らの足で旬の情報を探す努力を惜しまない大田さん。誰もが笑顔になる独特の語りと、その背後に隠された気配りが光る矢田さん。あらゆる世代と農業とを近づける番組の魅力は、まるで家族のように仲が良いパーソナリティにあると分かりました。筆者も「農を伝えるメディア」の先輩方から、様々なことを学ばせてもらいました。
県外の方々もぜひ番組を聞いて、魅力的な農産物が溢れる大分県の素晴らしさを見つけてくださいね。
※インタビュー前編はこちら
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