イーグルデザインに込められたメッセージ
新しいデザインに向けて動き始めたのは3年程前のこと。社内で「三菱マヒンドラ農機のプレゼンスを高めるために、デザインは今後どうあるべきか?」という議論があり、コンセプトやデザインの統一に向けた取り組みがスタートしました。
「それまでトラクタや田植機のデザインは、個々の機体ごとに行っており、シリーズのイメージや流れをデザイナーがそれぞれ解釈してデザインしてきました。そのため、目新しさは出しやすいのですが、ひと目で当社製と分かってもらえるような統一感はありませんでした」と馬場課長。
海外でも知名度があるエンブレムのスリーダイヤを効果的に使いつつ、統一したデザインやスタイリングを探るなかで、デザイン課ではコンセプトワークとして、自社のイメージを言語化して見直したといいます。
「スリーダイヤからは[技術力]・[伝統]・[グローバル企業]。三菱マヒンドラ農機からは[頑丈でパワフル]。そして、自分たちが追求する未来の企業像からは[常に挑戦し、成長する企業]・[先を見据え、常に繁栄を続ける企業]――といったようなキーワードに集約されました」と渡辺主任。
「さらに、キーワードをデザインに落とし込むためにモチーフを動物に求めたところ、すぐに鷲(イーグル)のイメージと繋がった」と馬場課長。
「鷲の凛とした姿からは[技術や伝統に対する自信と誇り]を。大きな翼は[グローバルな企業像]、鋭い爪や口ばしからは[パワフルで耐久性に優れた製品群]。そして、ヒトの8倍もある視力については[洞察力や先見性]を想起させます」とイーグルデザインに込められたひとつひとつのメッセージを渡辺主任が丁寧に解説してくれます。
農機具を超えるデザインへのこだわり
新しいデザインは、スリーダイヤをフロントマスクの中心に配し、口ばしからイメージしたノーズや、鋭い目をヘッドライトやシルバーのラインで強調するなど、鷲の気高さを表現したスタイリングに仕上がっています。
デザイン刷新のプロセスでは、設計や製造チームをはじめ、営業とも積極的にコミュニケーションを図ったといいます。短期間でプロトタイプを作り、一部の展示会に参考出品したところ、イーグルデザインやデザインの統一についても、販売店やユーザーからの評判は上々。営業が積極的に動いてくれたことで、開発プロジェクトは一気に加速したといいます。
しかし、設計や製造チームにとって、今回の開発はマイナーチェンジではなく、ワンピースのボンネット加工や塗装、各種部品などを含めた大掛かりなものになりました。
「最初にデザイン画を見せてもらった時には、フロントグリルがヒートバランスに影響しないよう、コンセプトとのバランスのなかで外気を吸う面積を最大限広くしてほしいとか、プロトタイプではヘッドライトの位置が上がったため、保安基準で定められたロービーム(すれ違い灯)の高さに変更してもらうなど、機能とデザインの刷り合わせは大変でした」と設計・技術担当の渡部課長。
「近年ではデザインや品質面において、ユーザーの要求水準が上がっています。特に今回のデザインでは、組み上げ精度や外観の仕上がりにこだわりを持っており、耐久性や生産効率とのバランスを各チームと話し合い、頑張ってもらいました。単なる農機具としてではなく、乗用車のようにデザインにも愛着を持って使っていただけたら嬉しいですね」と、馬場課長は全社を挙げたプロジェクトへの取り組みとデザインへのこだわりを笑顔で話してくださいました。
イーグルデザインでブランドイメージの統一を図る三菱マヒンドラ農機。取材ではデザインのお話以外にも、生産現場が抱える課題やその問題に技術者としてどう向き合うか―など、話は多岐にわたりました。これから同社が生み出す農業機械や技術に注目です。
※イーグルデザイン採用モデル(2018.7現在発表機種)
トラクタ[GSシリーズ][GMシリーズ][GAシリーズ][GCR1380]、田植機[LE4A]、コンバイン[V216/218/318]
◆設計・技術担当者に聞く、新型『GAシリーズ』のセールスポイント
2018年下期の新商品から、三菱トラクタのメインストリームである『GAシリーズ』にイーグルデザインを採用。イメージ一新ということもあり、新型『GAシリーズ』のセールスポイントを設計・技術担当の渡部課長に伺いました。
GAトラクタの特長は、まず走行性能があげられます。路上での走行時に主変速レバーを[アクセル変速]に設定すれば、AT車と同じ感覚で扱うことができるので、発進・停止がスムーズに行えます。
次に作業面では、耕うん作業の旋回(Uターン)時に、面倒な片ブレーキ操作が不要な[旋回アシスト機能]や作業機の上げ下ろしが自動で行える[旋回アップ]・[オートダウン機能]が実装されているので、運転者はハンドル操作に集中することができます。
また、耕うん性能ではジャイロセンサーを搭載した「ジャイロMAC」で耕うん時のねじれ現象を抑制し、圃場の条件に合わせて耕深制御を行う「VRC制御」で枕地など凸凹の多い場所でも耕うんの均平性を確保するので、熟練者でなくても均平性に優れたきれいな耕うんが効率よく行えます。
その他には、この新商品から[選べるSモード]が実装されています。この機能は、耕うん作業時に高負荷がエンジンに掛かった場合、速度を下げて負荷に対応するのか、速度は下げずに耕深の深さを浅くして対応するのかをオーナーが選択(販売店でのサービスマン対応)できるようになりました。
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