【第11回】東京オリンピック・パラリンピックとGAP – マイナビ農業

マイナビ農業TOP > 行政・団体・個人の支援 > 【第11回】東京オリンピック・パラリンピックとGAP

行政・団体・個人の支援

【第11回】東京オリンピック・パラリンピックとGAP

【第11回】東京オリンピック・パラリンピックとGAP

最終更新日:2018年11月16日

GAPとはGood Agricultural Practiceの頭文字をとったもので、日本語で「良い農業の取組み」という意味になります。昨今、GAPは産地や農家の生産工程の管理・改善を体系的に扱う優れた仕組み(標準)として、東京オリンピック・パラリンピックや海外輸出の調達基準になってきています。既に一部の農家ではこのGAP認証取得を、続いてこの農家から原材料の調達を受けた食品加工メーカーでは、まもなく法令に基づいて義務化される食品衛生管理基準HACCP(ハサップ)の資格取得を求める動きが活発化しています。
この特集は、GAP、HACCPの基礎知識から認証取得までのポイント、そして日本農業の再生までを展望した全12回のシリーズで皆さまにお届けしています。

  • twitter
  • facebook
  • LINE

1.GAP本来の意義

GAP

これまでの10回の連載を通じて、GAPは、農場に持続可能性を求める規範であることをご理解していただきました。その持続可能性とは、消費者に安心・安全な農作物を提供し、働く人には安全な作業環境を保証し、農場の周囲に汚染されていない環境を作ることである、ということです。一方で、GAPを実践したからと言って、農作物が、自動的により美味しくならないし、ブランド価値も上がらず、農場の収益も向上するわけでもない、こともおわかりいただけたと思います。
つまり、GAPは農場がその農作物を市場で販売するための前提条件に当たるものであり、その前提条件を備えたうえで、個々の農場は、より美味しい農作物を作るためのの栽培技術や販売方法を工夫することが必要になるということです。

2.GAPから見た我が国の農業

GAP

我が国の農作物の品質は、インバウンドブームで日本を訪れる外国人など、他国から高い評価を受けるようになっており、また「安心安全」な農作物を作っていると自負する農家が増えています。しかし、安心安全な農作物を作るしくみを農場がもっていることを消費者に説明する努力が、これまで不足していました。この結果、海外のバイヤーが求めるGAPを認証していないため、美味しい日本産の農作物は、これまで輸出される機会を失っていたと言えます。
我が国の状況は、GAPが普及しているオランダと対照的です。オランダは農業輸出大国として知られ、なかでも温室栽培のトマトは世界中に輸出されています。しかし、栽培されるトマトは加工用が多く、生食すると糖度が日本のものより低いなど、品質の点は日本を超えているとはいいがたいものがあります。

3.規範であるGAPを活用する

以上のように、読者の中には、GAPは、実践するために余分な管理コストがかかるので、ただでさえ収益の低い農場にとってハードルの高いものではないかと思われる方もおられるでしょう。そこで、このハードルを低くするために、GAP普及を進める我が国政府は、GAP認証のために補助金を出したり、それぞれの都道府県によるGAP確認制度を作ったりしています。
こうしたGAPコスト低減の政策に加えて、GAP実践に躊躇する農場の後押しをするイベントが2020年の東京オリンピック・パラリンピック(東京オリパラ)です。この一大イベントでは、東京オリパラ組織委員会は、参加選手や関係者の食事のため、大量の食材を調達することになります。その食材の調達基準は「持続可能性に配慮した農産物の調達基準」です。たとえば、農薬に関する調達基準(野菜)は以下のようになっています。

GAP

この基準を満たすのは、これまでご紹介したJGAP、GGAP、都道府県のGAPです。GAPの認証や確認を受けることで、農場の食材が世界的イベントで採用されることになれば、認知度が向上し、売上が上がる可能性もあります。そうなれば、農場や産地にとって、大きな励みとなるでしょう。つまり、GAPを外圧と考え、受け身で対応するのではなく、GAPを積極的に活用し、農場の収益を向上させるチャンスとなるのです。
さらに、最近、GAP実践を後押しする新たな政策に関するニュースもあります。選手村などオリパラの施設で提供する食材の産地情報の表示をできるようにすることが農林水産省と東京オリパラ組織委員会の間で確認された、と日本経済新聞(2018年6月7日朝刊)で報道されています。具体的には、県や市町村など自治体の名前を産地情報として表示することができそうです。GAP認証や確認を受けていないと、調達の対象にならず、産地表示もできないとなれば、GAPに前向きになる農場が増えることでしょう。

4.GAPは農産物市場メカニズム健全化に貢献する

GAP

農産物の売上向上という成果を得る過程で、GAP実践により、農場の品質管理が強化され、消費者の農産物に対する信頼感が増します。この結果、農産物市場がGAPに必要な費用を織り込めるような適正な価格付けが可能になると考える専門家(※)も出てきています。それは、たとえば中古自動車市場が、法定車検や中古車の情報開示により、健全化されるのと似ているとも言われます。

※ オイシックスドット大地(株) 戦略調達部門 ファウンダー 阪下利久氏【平成29年度次世代施設園芸地域展開促進事業(全国推進事業)事業報告書(別冊2)、次世代施設園芸・植物工場のケーススタディ、3章、一般社団法人日本施設園芸協会】

5.最後に

GAPは高齢化に歯止めをかけ、耕作放棄地を増やさない効果があるだけでなく、農場の努力次第では、輸出促進やインバウンドにより売上が増加することにもつながります。その大きなきっかけとなるのは、東京オリンピック・パラリンピックです。日本人アスリートだけでなく、日本農業にも大きな声援を送りましょう。

 
> 記事に関するお問い合わせはこちら
 
一般社団法人中部産業連盟 執行理事 主席コンサルタント
JGAP指導員、ISO14001主任審査員 梶川 達也(文責)
 
【関連記事はこちら!】
 

関連キーワード

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

あなたにおススメ

タイアップ企画

関連記事

カテゴリー一覧