自然農法の師匠は祖父。学んだことを自分なりに体現していきたい
不動産屋が農業?と不思議に思う人もいるかもしれませんが、私にとって就農は自然の成り行きでした。幼い頃から自然が好きで、特に母方の祖父の影響を強く受けて育ちました。夏休みになると祖父と一緒に山の畑へ行って旬の野菜を作っている様子を見ながら農具の使い方や落ち葉の利用方法等様々なことを学びました。祖父が取り組んでいた自然栽培はその後の私の農業スタイルに大きな影響を与えています。
現在は森岡不動産にて農園事業部を立ち上げ、米類140アール、野菜を30アール育てています。より植物の力を引き出すにはどのような環境を作れば良いか試行錯誤しながら旬のものを多品目栽培し、産直やマルシェなどで販売しています。なるべく薬に頼らず自然と共存し持続できる農業を目指しており毎日が勉強です。口数少ない祖父に教えて貰ったことを実践しながら、より良い栽培方法を模索し続けています。
祖父からは「一度決めた事は最後までやる事」「相手の気持ちになって考える事」を学びました。失敗も含めて経験はすべて糧になる事や、視野を広げ目線を変える事の重要性を教えてくれたのです。その教えを守り、作物や土と向き合う日々です。
食の安心に応える栽培方法と、栄養価の高い古代米で差別化
実家も兼業で古くから稲作農家をしていましたが、就農してこれまでのやり方では生計が成り立たないという現実に直面し愕然としました。そこで、お米も自然栽培へと切り替え自社で販売するという方法を選択したのです。皆と同じ事をしているだけでは、価格競争に巻き込まれてしまうのが明かでした。それなら育てる過程もこだわりぬくことで、食に強いこだわりを持つ人に訴求できるものを生み出していこうと考えたのです。
そして、お米に加えて何か新しいものを取り入れたいと考えた時に出会ったのが、健康志向の方から支持されつつあった古代米でした。古代米には数百もの品種があります。その中の選りすぐりを見つけるため実際に栽培し、食感や風味などを比較・研究しました。そして出来の良い種籾を翌年また育てるサイクルを繰り返す事で絞り込みを行い、現在は黒・赤・緑米の3種の商品化に至りました。
パッケージには酸素を通さない素材を採用し、さらに脱酸素剤を同封し酸化を防止しています。冷蔵庫に保存しやすいサイズ・チャック付きのものにするなど、包装も召し上がる方の気持ちを心がけました。将来的には地元観音寺ブランドとして確立できるよう、象徴的な寛永通宝の絵も入れています。今後はブランディングにも注力していきたいですね。
野菜づくりとソーラー発電でスモール農業のモデルケースに
クオリティを追求する農業を掲げて試行錯誤しながら5年が経ちました。今後はインターネットでも古代米や旬の野菜セットをお届けできるように自社サイトの充実も図っていきたいですし、6次産業化に向けた取り組みもスタートすべく、食品衛生責任者の資格も取得し、加工食品の販売に向けて準備を整えているところです。農園の作物をスイーツなどに加工し販売出来れば、より多くの人に食を楽しんでいただけるチャンスが広がりますからね。農園体験の実施も考えており、まだまだやりたい事はいっぱいあります。
やりたい事といえば、ソーラーシェアリングを用いた農業もそのひとつです。農地に太陽光発電設備を設置し、その下で作物を栽培します。パネルの下とはいえ太陽光の70%は届くので、作物の栽培は可能とされています。植物には光飽和点があり、それを超えた光を浴びても光合成は促進されないと言われているので、太陽の恵みを「作物」と「太陽光発電」で分け合うという画期的なシステムなのです。このシステムを知ったときは感動しました。ところがいざ自分で作ろうとすると地元では設計者、施工業者もなかなか見つかりません。ようやく見つけた県外のパートナーさんたちの力を借りて3年越しに実現することが出来ました。
ソーラーシェアリングに未来の農業のあり方を見る
現在取り組んでいるソーラーシェアリングはまだまだ試験段階。現在は香川大学と連携を図りながら実験を行っています。論文発表の際には様々な意見が出たと聞きました。このシステムを広めていきたいと考えている私にとっては、肯定的で発展性のある意見はもちろん、否定的な意見も大変ありがたいものです。そういう活発な意見交換と諦めない心が次のステップに欠かせないものだと思っています。
ソーラーシェアリングが魅力と感じたのは、自然エネルギーを活用して持続可能な循環型の農業が確立できるのでは?と考えた事にあります。作物を育てる空間の上部で太陽の恵みをエネルギーに変え、農作業に使う電気エネルギーに変換できれば、耕作地のなかですべてを賄えるようになるのです。この実験が立証されれば、近い将来、家庭菜園にも導入可能ですし、そうなればもっと身近になりますね。いろんな可能性があるソーラーシェアリングは未来の農業のカタチを変えるかもしれません。
祖父から学んだ農業は出来上がった作物から種をとり、また撒いて育てていくという循環型農業でした。そんなサイクルを栽培の面でもテクノロジーの力を借りながら実現できれば理想ですね。
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