日本の米はどんな米? ジャポニカ米とインディカ米
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日本人が主に食べているジャポニカ米
世界で栽培されている稲は、そのほとんどがアジア稲。アジア稲から取れる米には、大きく分けると「ジャポニカ米」と「インディカ米」があります。私たち日本人が主に食べているのは、このうちのジャポニカ米です。
ジャポニカ米は、粒が丸く短いのが特徴。米のおいしさの決め手となる“粘り気”を作る「アミロペクチン」がインディカ米よりも多く含まれているため、ネバネバと粘り気があり、ふっくらとした食感に炊き上がります。
一方のインディカ米は、ジャポニカ米よりも細長く、パラパラとした感じの炊き上がり。“ツヤと柔らかさこそが米の至高”と定義されがちな日本ではあまり身近なものではありませんが、実は世界規模で見ると、生産量、消費量ともに最も多いのがこのインディカ米です。生産量にいたっては、なんと世界の米の生産量の約80%をも占めているといいます。
“香り米の最高峰”バスマティ米
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香り米の一種であるバスマティ米
インディカ米の中でも、特に“高級米”とうたわれる米があります。その一つが、冒頭で触れたバスマティ米。バスマティ米は、玄米そのものに若干の香りがあり、炊くと一層香りが強くなる「香り米」の一種。例えば、インドやパキスタンなどカシミール地方で栽培されている「Basmati(バスマティ)370」は、古くから世界中で高値で取引されています。
インドやパキスタンの人々などは、このバスマティ米を日常的に食べるといいます。水気が少なくパラパラとした食感のバスマティ米は、インドやパキスタン特有の汁気の多いカレーと相性抜群。スパイスをきかせた炊き込みご飯である「ビリヤニ」や「プラウ(またはプラオ)」(いずれもインド、パキスタンにおける米料理)などは、このバスマティ米の風味こそが料理の味を決定づけるものだといえるかもしれません。
日本であまり食べられてこなかった理由は
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バスマティ米を使った料理「ビリヤニ」
前述の通り、世界的には大変人気の高い香り米ですが、日本ではあまりなじみがないのはなぜでしょうか。
一つは、その独特な匂いにあると考えられます。世界にはいろいろな香り米がありますが、そのいずれも香りの成分は「アセチルピロリン」。「ポップコーンのような匂い」と好意的に評されることもありますが、ネズミの尿のような匂いだという人も多く、日本でも、香り米は古くから「じゃこう米」「鼠米(ねずみごめ)」などとも呼ばれてきました。
また、香り米は、東北地方や高知県、宮崎県山間部などで昔から栽培されてきましたが、単位面積あたりの収量が少ないことが一つの課題として挙げられ、年々栽培が減少の一途をたどってきたという事実も少なからず関係があるのかもしれません。
しかしながら、1989年に農林水産省が開始した「スーパーライス計画」(※)により、多様な新形質を持つ稲が育成され、香り米にも「キタカオリ」や「サリークイーン」などが誕生しました。「キタカオリ」は耐冷性に優れ、収量も多いのが特徴。「サリークイーン」は「Basmati 370」の血筋を引く品種でありながらも「Basmati 370」に比べて香りが弱いため、日本人の味覚に適しているといいます。
日本の食卓や外食産業における多国籍料理が今後さらに大きな地位を占めるものとなれば、今回紹介したバスマティ米のように、普段私たちが食べる米とは異なる食感や匂いを持つ米がどんどん普及し、親しまれていくかもしれませんね。
※ スーパーライス計画:正式名称を「需要拡大のための新形質水田作物の開発」。米の需要を拡大するため、消費ニーズの多様化に対応するべく新たな形質を持つ水稲品種を育成するプロジェクト。
参考
「お米の大研究 イネの生態から文化とのかかわりまで」
著者:丸山清明(監修)
出版:PHP研究所
「Q&A ご飯とお米の全疑問 ―お米屋さんも知りたかったその正体」
著者:高橋素子(著)、大坪研一(監修)
出版:講談社
上記の情報は2018年7月9日現在のものです。