なぜ生えている雑草で土の状態がわかるのか
まず、なぜ生えている雑草で土の状態がわかるのか説明したいと思います。これは「植生の遷移」という自然の働きが関係してきます。言葉だけ聞くと難しいですが、要するに「どんな土地も放っておくと森になる働き」のことだと思ってください。耕作放棄地がどんどんジャングルのように茂っていくのもこの働きによるもので、時間が経てば経つほど、生える植物が大きくなり、そこに住む生き物も増え、生態系が豊かになっていきます。地上の生態系が豊かになるのと同時に、土の中の生態系も豊かになり、これが植物を育てる力の源になります。土の力が増えるごとに生える植物が少しずつ変わっていき、最終的に森になるのです。
畑は人の手が入るため、森になるのとはまた違った遷移になりますが、段階を経て生態系が豊かになる力が働いており、生える雑草も変わっていく点は同じです。逆に言うと、そこの土地にどんな雑草が生えているかを見ることで、今その遷移のどの段階にあるのか、土の力がどの程度あるのかが分かるのです。
畑の地力レベルを調べよう

地力の4段階の図(筆者作成)
生えている雑草を調べることでそこの地力、ph(ペーハー)、土質、人がどの程度手入れしているかどうかなど様々なことがわかりますが、今回は地力(ちりょく)という、そこの土地が植物(野菜)を育む力がどの程度あるのか調べる方法をお伝えしようと思います。上の図は目指す地力のMAXをレベル4として、4段階に分けて書いています。実際にはこんなに綺麗に分かれる訳ではないですし、その土地に残っている肥料や季節・地域などでも変化しますのであくまでも目安として参考になさってください。
それでは各地力レベルで生える雑草の種類と役割、そのレベルに適した野菜を説明していきます。
地力レベル1
生える雑草例:チガヤ、セイタカアワダチソウ、ヨモギなど

セイタカアワダチソウ

チガヤ。根っこを噛むと甘いのは糖分が出ているから
適した野菜例:雑穀類
地力レベル1は土が硬く、痩せている状態です。 生える雑草は地下茎と言う、土の中で茎を伸ばして増えていくものが多いです。 逆に言うとこの地下茎が土を掘り進め、柔らかくしてくれています。また根っこから糖分を放出して、微生物を集めて増やす役割も担っていると言われています。背が高くなる雑草も多く、これは枯れた時に土の材料や微生物の餌となる有機物を大量に土に補給してくれます。地下茎で増える植物はアレロパシー(※1)と言って、化学物質を出すことで他の植物が生えにくくする働きを持つため、野菜との共存は難しいと言われています。
※1 植物が化学物質を出して、他の植物の生育を抑えたり、微生物や虫を防いだり、引き寄せたりする効果のこと
地力レベル2
生える雑草例:スギナ、ギシギシ、シロツメクサなど

スギナ(ツクシと同じ植物)

シロツメクサ。白クローバーとも言います
適した野菜例:サツマイモ、ジャガイモ、ダイズ、エダマメなど
1段階レベルが上がりましたが、なお土の栄養素は少なく、適した作物も少ない状態です。このレベルで生える雑草は、土や雨水、空気中の栄養素を捕まえて蓄える力が高いものが多いです。逆に言うとそういう強い植物でなければ生きていけないということです。スギナなどは特に多くのミネラルを溜め込む性質があります。これらの雑草が土に還ることで、彼らが集めた栄養素が次の世代の成長の源にもなっていきます。
地力レベル3
生える雑草例:カラスノエンドウ、ツユクサ、ノボロギクなど

ツユクサ。綺麗な青い花を咲かせます

カラスノエンドウ。名前の通りマメ科の植物です
適した野菜例:ミニトマト、カボチャ、キュウリ、ダイコン、ニンジンなど
この段階になるとだいぶ育てられる野菜が増えてきます。綺麗な花を咲かせる植物が増えてくるのが特徴です。花はハチなどの虫を呼び、受粉を行うためのものですので、植物と虫の共生関係がより築かれやすくなっていることを表していると考えられます。受粉して実がなる野菜にとって、生きやすい環境になっていることがわかります。
地力レベル4
生える雑草:ハコベ、イヌノフグリ、ホトケノザなど

ハコベ

ホトケノザ。七草のホトケノザとは異なります
適した野菜例:キャベツ、ナス、ピーマン、タマネギ、大玉トマトなど
この段階になるとほとんどの野菜が育つようになります。柔らかくて背の低いものが多く、野菜の近くに生えていてもあまり邪魔になりませんし、草刈りも楽になります。
雑草にも生えている意味がある
このようになんとなく生えているような雑草も、ちゃんと役割があり、意味があって生えてきていることが分かります。例えばスギナはカルシウムやカリウムなどのミネラルが豊富なことが知られていますが、それは土にそういったミネラルを補給する役割を持っているからです。だから、スギナが生えている畑にはそういったミネラルが必要なんだなと判断ができますし、刈ったスギナも土に還して上げることで地力が上がっていきます。
次回はこの雑草を活かした堆肥の作り方をご紹介します。その畑に生えていた雑草を使うことで、その畑に必要な栄養素を補給することができ、地力を上げることができます。お楽しみに!
次の記事:初心者でも簡単!雑草堆肥で土づくり【畑は小さな大自然vol.8】