農業の世界にもICTの波は来ている
現在、農業は国の重要な成長産業に位置づけられ、これまで農業分野の事業に関わってこなかったICT(Information and Communication Technology)企業が、続々と農業ビジネスに参入してきています。ビッグデータ分析や画像認識をはじめとしたAI技術や、センサー情報などのIoT(Internet of Things)技術を生かして、農業分野を支援するNTTテクノクロス株式会社(以下 NTTテクノクロス)もその一社。NTTグループ約30社の連携で、ICTによる農業の活性化を目指すし、グループ各社はもちろん、豊富なノウハウを持つパートナー企業と連携して、新規の農業プロジェクトを展開。
現在は酪農ビジネスに通じたデザミス株式会社が提供するサービス『U-motion®』に、NTTテクノクロスが開発したタグ型のセンサー情報を分析し、牛の行動や状態を通知する機能を提供したり、伊藤忠飼料株式会社と連携し、従来コストや手間がかかっていた豚専用の体重測定の省力化に向け、高いレベルで豚の体重を簡単に推定できる『デジタル目勘®』を開発するなど、酪農・畜産・養豚業界から大きな注目を集めています。
全国の牧場からのフィードバックで完成度を高める『U-motion®』
『U-motion®』は、すでに北海道から沖縄までの全国各地の牧場で導入されているソリューションです。NTTテクノクロスのAI×IoT技術を生かし、牛に取り付けたタグ型のセンサー情報から採食・飲水・反芻・動態・起立・横臥・静止の7つの主要行動を、データ分析プラットフォーム「IoTデータ分析Suite」でリアルタイムに見える化しています。さらに蓄積データを分析することで、畜産農家が確認すべき牛の状態である「発情兆候」、「疾病(体調不良)」、「起立困難」を適切なタイミングで通知するサービスを提供しています。
特に起き上がれなくなった牛が突然死する“起立困難牛”を早期発見できるアラート機能の効果は大きく、「『U-motion®』の導入が進んだことで、起立困難牛の検出事例が蓄積されており、精度も向上しています。これまでに多くの事例が報告されており、導入した畜産農家も喜んでいます」と、IoTイノベーション事業部の除補由紀子氏は語ります。1頭約100~150万円で取引される肉牛の飼育において、「起立困難」な牛を早期に検知できるのは一番のメリットですが、『U-motion®』の導入効果はそれだけではありません。酪農の現場では重要な乳量の減少を予防する効果もあると除補氏は話します。
「酪農では牛が体調不良になると乳量に影響します。『U-motion®』によって疾病を早期に検知して対処できるようになり、乳量の減少を最低限に抑えられるようになったと、導入した農家には喜んでもらえています」
現在、全国の生産農家から大量の牛のデータをリアルタイムに収集しており、そのビッグデータにより分析精度は日進月歩で向上を続けています。もちろん、生産現場の方々からのフィードバックも重要となるため、担当者は頻繁に牧場へと出向いて情報の収集・分析を行っているといいます。「常に牧場にも行っており、月の半分くらいしか社内で見かけないメンバーもいます」と除補氏。精度を向上させるための努力を怠らないNTTテクノクロスの姿勢が、『U-motion®』の完成度を高めているといえるでしょう。
畜産(養豚)農家がリリースを心待ちにする『デジタル目勘®』
『U-motion®』と並び、全国の畜産農家から熱い視線を集めているのが、豚の体重を推定するソリューション『デジタル目勘®』です。豚の飼育において、体重測定は重要な仕事です。出荷時の体重で豚の価格が変わるといった経営上の問題に加え、豚の健康管理においても正確な体重を把握することが重要だと除補氏は話します。「子豚から成長していく過程で必要な飼料が変わります。適切なタイミングで適切な飼料を与えなければ健康面・品質面で悪影響をもたらすため、体重に合った飼料を与えるのが重要なのです」
飼育中の豚の体重を量る手法としては、豚専用の体重計、オートソーティングシステム、トラックスケールでの集団計測などがありますが、どれもコストと手間がかかり、養豚農家の負担となっています。これまでは月齢や熟練者の“目勘(めかん)”で出荷タイミングを決めており、熟練者の経験が必要とされてました。この“目勘”を、AIによる画像認識技術を活用して誰にでも容易に行えるようにするのが『デジタル目勘®』なのです。
当初はスマートフォン向けのアプリとして開発していましたが、現在は専用のハードウェアも含んだソリューションとして開発が行われています。技術的にはほぼ完成しており、2018年度末のリリースを目指して専用機の開発が進められているとのこと。5月30日~6月1日に名古屋で開催された「国際養鶏養豚総合展 2018」では、伊藤忠飼料株式会社との共同出展で専用機のプロトタイプを展示し、数多くの来場者から注目を集めたといいます。体重測定にかかる手間やコストの軽減はもちろん、熟練技術の継承問題までを解消する『デジタル目勘®』のリリースを心待ちしている生産者も少なくないでしょう。
AIの活用による農業の活性化、今後の展開にも注目
このように、豊富なノウハウを持つパートナー企業との連携によって開発した『U-motion®』、『デジタル目勘®』で畜産農家の課題解決を強力にサポートするNTTテクノクロス。牛の行動分析、豚の体重推定でNTTグループのAI技術ブランドである「corevo®(コレボ)」の認証も今春に取得。
「当社では“AIファースト”を掲げ、AI技術の活用による社会の課題解消を目指しており、その中の重要な軸として『AI活用がもたらす、新しい農業のみらい』というテーマがあります」と戦略ビジネス特区 AIビジネス創出ユニット シニアエキスパートの田口真理氏が、同社の農業ビジネスへのスタンスを語ります。
同社では、10月10日から幕張メッセで開催される「農業ワールド2018(次世代農業EXPO)」を皮切りに、10月17日からは東南アジア(ベトナム・ホーチミン)でのビッグイベント「VietStock 2018」に出展。さらに10月30日には、東京・日本橋(ベルサール東京日本橋)で開催する自社イベント「NTTテクノクロスフェア2018」で農業関連のソリューションを展示・紹介し、その中では、取り組みを開始した、AI×IoT技術を生かした野菜の生産・品質管理に関する取り組みの展示も予定されているといいます。
AIを活用した“新しい農業のみらい”を目指すNTTテクノクロスが手がけるソリューションには、今後も注視していく必要があるでしょう。
【展示会情報】
◆農業ワールド2018(次世代農業EXPO)
2018年10月10日-12日 幕張メッセ
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◆NTTテクノクロスフェア2018
2018年10月30日 ベルサール東京日本橋
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【お問い合わせ】
NTTテクノクロス株式会社 戦略ビジネス特区 AIビジネス創出ユニット
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