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【第3回】農業法人を設立しよう! 設立手続きの流れ

連載企画:明日を拓く農業経営

【第3回】農業法人を設立しよう! 設立手続きの流れ

第1回、第2回と農業法人化の意義やメリット、法人形態について解説しました。今回は法人形態の主流である株式会社を例に、設立の手続きについて解説します。具体的な手続きは司法書士などの専門家に依頼することが多くなりますが、どのような組織にするかを考えるのは農業経営者自身です。今回は、基本事項の決定から実際の届け出まで順を追って解説するので、ご自身が法人設立することを想像しながら、手続きの流れをチェックしてみましょう。

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法人設立手続きの流れ

前回、農業経営の方針等により、いくつかの法人形態が存在することを紹介しました。今回はその中でも最も一般的な株式会社の設立を例に、法人設立のステップを順に説明していきます。法人の設立には以下のステップを踏んでいく必要があります。

①基本事項の決定

〔商号〕
会社名のことです。ひらがな、カタカナ、ローマ字など自由に決めることが出来ます(一部の禁止語句を除く)。また、株式会社を前に付けるか、後に付けるかも要検討です。

〔本店所在地〕
会社の住所です。本店とは本社のことを指します。登記される住所なので正確に決定しましょう。郵便物等もこの住所に送られます。

〔目的〕
事業内容のことです。会社でどのような事業を行っていくかを決定します。
現在行う事業とあわせて、将来行う予定の事業も記載しましょう。設立後の登記簿謄本(全部事項証明書)は誰でも見ることが可能なので、何を行っている会社なのか明確にわかることが大事です。

〔資本金〕
会社の元手の資金です。現在は資本金1円以上で設立ができますが、対外的な目もあるため、設立後、最低半年の運転資金をまかなえる額を用意するのが一般的です。また、資本金が1,000万円以上の場合、消費税が初年度から課税事業者になる点や、都道府県や市町村の均等割り税額が高くなる点が注意点となります。

〔株主構成〕
資本金の出資者(構成員)を決定します。農業法人では、農地の貸借や所有をする場合、一定の制限があります。詳しくは第6回「農地所有適格法人」で解説する予定ですが、実際に農業に従事する方々が、資本金の50%超を所有することが必要です。要件が合致していないと、農地の所有が認められない場合があるので、注意が必要です。

〔役員構成〕
会社を運営する人のことです。併せて、役員の代表者も決定します。〔株主構成〕と同じように、農地の貸借や所有する場合、一定の制限がかかります。役員になる方の過半数は、農業に従事する構成員でなければなりません。

〔事業年度〕
会社の決算日のことです。会社は事業期間が1年間あれば、いつでもかまいません。3月決算(4月1日~3月31日)の会社が一般的には多いですが、農業では事務負担を考慮して、農繁期が一段落した時期や、在庫が一番少ない時期を決算期にしている会社も多いようです。


基本事項が決定したら、会社の代表者印を準備しましょう。
(登記の際に必要です)

②定款の作成

①の基本事項決定後は定款の作成を行います。
定款は、国で例えるならば、憲法のようなものです。前段の基本事項とともに、会社の重要な案件の決議方法や役員の任期等も記載されます。

③公証人役場での定款認証

定款の作成が終わると、定款に構成員の捺印をし、本店を管轄する公証人役場で定款の認証を受けます。
〔必要なもの〕
 ・定款
 ・取締役の印鑑証明書
 ・4万円の収入印紙(電子定款作成の場合不要)
 ・公証人手数料5万円

④資本金の預け入れ

定款の認証が終わると、資本金の預け入れを行います。代表者の口座に、出資者の名義で振込みます(代表者も同様に振り込みます)。全員の払い込み後、通帳をコピーし会社の代表者印で割印します。これは、登記申請の必要書類になります。

⑤必要書類の準備と法務局への登記申請

資本金の預け入れが完了後、いよいよ法務局への登記申請です。以下の書類を準備して、法務局へ登記申請を行います。
〔必要なもの〕
 ・株式会社設立登記申請書
 ・会社の実印(代表者印)
 ・取締役の印鑑証明書
 ・定款(③で認証を受けたもの)
 ・役員の就任承諾書
 ・出資金の払込があったことを証する書面(④の口座の写し)
 ・印鑑届出書
 ・印鑑カード交付申請書
 ・登録免許税 最低15万円(資本金の額の0.7%が15万円より高い場合はその額)

⑥各種届出

法人設立後、各種届出を遅滞なく期限内に提出します。

以下は代表的な届け出です。
〔税務署〕
 ・設立届出書
 ・青色申告承認申請書
 ・給与支払事務所の開設届出書
 ・源泉所得税の納期の特例に関する申請書
〔各都道府県〕
 ・設立届出書
〔各市町村〕
 ・設立届出書

社会保険関係の届け出は従業員の雇用をした場合に必要です。
〔労働基準監督署〕
 ・労働保険関係成立届
 ・労働保険概算保険料申告書
〔公共職業安定所(ハローワーク)〕
 ・雇用保険適用事業所設置届
 ・雇用保険被保険者資格取得届
〔年金事務所〕
 ・健康保険、厚生年金保険新規適用届出書
 ・健康保険、厚生年金被保険者資格取得届
 ・健康保険被扶養者届

届出は、専門家(司法書士、税理士等)に依頼して行う事が多いようです。また、提出期日がそれぞれ異なりますので注意が必要です。

法人設立手続きの注意点


以上、設立の流れを見てきましたが、農業法人の設立の際は、農地を所有または貸借する場合に株主構成や役員構成等の制約を受けるなど、一般法人とは異なった注意すべきポイントがあり、専門家を交えて慎重に決定することが重要です。これらについて詳しくは、第6回「農地所有適格法人」にてご説明いたします。
今回紹介した設立手続きについては、その多くが法務局ホームページに掲載されていますので、設立を検討されている方は一度、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
 

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