家だけではない! 農作物にも被害を与える厄介者
天井裏でカサカサ、配線をカジカジ。ネズミは家に被害をもたらす害獣として有名ですが、実は農作物にも被害を与える農家にとっての天敵です。その被害の多くはハタネズミという野ネズミによるもので、他にハツカネズミ、ドブネズミなども農作物を荒らします。
代表格のハタネズミは、全長10~13センチほどの茶褐色の体で、尾の短い日本固有種。本州、九州、佐渡島などの低地から高山帯まで幅広く生息します。農耕地やあぜなどを好み、穴を掘ってトンネルを作り、ワラや枯れ草を集めて巣を作ります。草食性で、果樹や野菜のほか、樹木も被害を受けるので、農家にとっては大変面倒な存在です。
野ネズミは、どんな被害を与えるの?
ハタネズミの被害は、果樹を始め、サツマイモ、ニンジンなど、幅広い種類の農作物に及び、冬から春にかけてピークを迎えます。特にリンゴ、ナシ、ブルーベリーなどの果樹を好み、木の根の皮、苗木や若木などを狙います。特に冬の間に被害が多く、雪解け後に明らかになることも少なくないようです。さらに雪がなくなってからも根への加害が続き、被害が著しい場合は木が枯れてしまうこともあります。
また、被害のあった木の周辺には、ハタネズミが作った穴やトンネルが多数残され、農地自体にも被害が及ぶなど、農家の悩みは尽きません。
意外な動物が活躍! その被害対策とは
ハタネズミの被害対策は、主に被害回避と駆除に分かれます。まずは農地をいつもきれいにして、巣を作りにくい環境を整えます。特に根雪前の整備が大事で、木の根元を除草・清掃し、雪が積もる前に、金網やビニール、杉の葉、合成樹脂のプロテクターなどで地上約1メートルのところまで覆い、ネズミの害から守ります。木の幹や周囲に忌避剤を使用するのも効果的です。
駆除法としては、捕そ器(カゴ型やパチンコ型など)や粘着板を用いたネズミ捕りによる物理的な駆除法のほか、毒エサや殺そ剤による化学的な駆除法も一般的です。しかし、露地栽培では駆除してもすぐに新たなネズミが侵入してしまうことがあります。
そんな中、青森県や長野県のリンゴ園ではフクロウを使った被害対策が広がっています。フクロウはハタネズミをエサとして好み、成長期には1日3匹ほど食べるとのこと。この高い捕食能力を生かすため、園地に巣箱を設置して営巣を促します。その結果、営巣後はネズミの生息数が平均70%減ったという驚くべき成果も報告されています。
ネズミはその繁殖力と被害の大きさで、有史以来、人間を悩ませ続けています。人間の知恵に加え、フクロウなどの天敵の力も借りながら、農作物に害をなすネズミを撃退しましょう。
これからも農家にとっての憎らしい天敵、アブなすぎる害獣に注目していきます。