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SNSを活用して「農家のファン」を育てよう

連載企画:儲かる農業特集

SNSを活用して「農家のファン」を育てよう

FacebookやTwitterなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を利用する人は年々増えていて、多くの企業や法人がマーケティングの一貫としても取り組んでいます。長野県東御市(とうみし)の「はすみふぁーむ&ワイナリー」はSNSが使われ始めた2010年からいち早くFacebookやTwitterでの発信を始めました。土地を取得するところから始まった小さな農園は、SNSでの発信などを通じてファンを増やし、順調な経営を続けています。ご自身の経験をもとに、SNSを活用して農業を盛り上げるべく活動している代表の蓮見喜昭さんに、農業におけるSNSの活用方法や可能性について、話を聞きました。

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蓮見喜昭(はすみ・よしあき)さん プロフィール

蓮見喜昭 東京都生まれ、愛知県育ち。株式会社はすみふぁーむ(はすみふぁーむ&ワイナリー)代表取締役、東御市議会議員。
10代で単身渡米し、現地の高校・大学を卒業後、米国大リーグの球団職員や国内メーカーの海外営業マネージャー等を歴任し、世界中を飛び回る。2005年に長野県東御市に移住してワイン用ぶどう、巨峰栽培を中心とした「はすみふぁーむ」を設立。2010年から「はすみふぁーむ&ワイナリー」としてワイン醸造も手掛ける。2014年に『SNSで農業革命』を出版し、農業分野でのSNS活用法について講演なども行っている。

農業経営が軌道に乗った背景には「SNSの活用」があった

はすみふぁーむ&ワイナリー

はすみふぁーむ&ワイナリー(長野県東御市)

──蓮見さんは、2005年に1人で農業をスタートされたんですよね。

2005年に1人で長野県東御市に移住してブドウなどの栽培を始めました。特に専門知識があったわけでもなく、「情熱」だけを持って土地を借りるところから始めましたね。当時は毎日が挫折の連続でした。

ブドウ

──そんな中、2010年からSNSを始められました。何かきっかけがあったのですか。

そのころ、育てていたぶどうの木が十分に育ち、ようやくワインを醸造して商品として出荷できるようになりました。ブログやメルマガ、ホームページはすでに始めていたのですが、自分が作ったワインをもっと多くの人に知ってもらいたいと、Twitterを見よう見まねで始めたのです。さらにその後、ワイナリーの建設を機にFacebookも始めました。

「はすみふぁーむ&ワイナリー」

「はすみふぁーむ&ワイナリー」のFacebookページ

──始めてみて、どんなことがありましたか?

投稿して反応が返ってくるその速さに驚き、交流できることが面白くてすぐに虜になりました。毎日コツコツと投稿を続けていくと、どんどんフォロワーとファンが増えていき、応援してもらっていることを実感しました。実際にワインを買ってくださるお客さんのほとんどは、SNSを通じて「はすみふぁーむ&ワイナリー」を知ってくださった方々です。現在も農園のSNSを多くの人たちがフォローしてくださっていて、おかげさまで順調に経営を続けることができています。私の農業経営が軌道に乗ったのは、SNSを始めたことがきっかけだったと感じています。

「はすみふぁーむ&ワイナリー」のTwitterページ

SNS活用のススメ~具体的な方法とは?

──それでは、具体的なSNSの使い方についてお聞きしたいのですが、まず農家さんが「SNSを始めたい」と思ったら、何から始めればいいですか。

現在、Instagram(インスタグラム)を利用する人も増えているので、SNSの選択肢としてはTwitter、Facebook、Instagramなど複数ありますよね。どのツールを使うにしても、まずは登録してほかの人の投稿を見るところから始めてください。特にフォロワー数やファンの数が多い農家さんのページを見ると、必ず何かヒントがあるはずです。まずはその投稿を参考にすることから始めるのがいいでしょう。

はすみふぁーむ&ワイナリー

育てるぶどうが獣害の被害にあった様子をFacebookに投稿した内容

──具体的には、どのような内容を投稿するのですか。

いろいろな投稿ができるので悩むと思いますが、私がおすすめしているのは「自分が書きたいことを書く」ことです。例えば、作業前に目に入った畑の風景を写真に撮って投稿するのもいいですし、今日の予定について書くのもいいですよね。そういった農家の当たり前の日常が、一般の人たちにとっては新鮮だったりします。
また、すべての投稿が農業に関連している必要はなくて、自分の好きな趣味のことや家族のことなどを書くと、その人となりが伝わりファンになってくれることもあります。作った農産物や商品をアピールしたいのであれば、まずはその農家のファンになってもらいましょう。その人が作るものならぜひ購入したい、発信したいと応援してくれる人は多いはずですよ。

──まだ畑を持っていない、これから就農を目指すというような人でも、SNSを始めることに意味はあるのでしょうか。

むしろ、その初期の段階で、毎日の日誌のようにSNSで記録を付けていくことはとても効果的だと思います。私自身、農業を始めると決めてからずっとブログを書いていましたが、その時から見ていてくれた人がいまだにうちの農産物を買ってくれています。「今日は農地の取得のために市役所に相談に来ています」とか、「こんな農業がしたい」とか発信することができますよ。

──どれくらいの頻度で投稿すればいいのでしょうか。

SNSは1回、2回発信するだけではファンはついてきませんよね。反応がないからと短期間で諦めず、最低でもまず半年間、毎日1回は更新して、さまざまな情報を発信してもらいたいです。農家は毎日作物に水や肥料をあげて、草むしりをして手間暇かけて育てていきますが、SNSもそれと似たような感覚です。毎日少しずつ投稿を積み重ねていくことで、農園のファン、そしてその農家個人のファンが育っていき、最終的にはその農家さんが作った農作物や、加工販売した商品を買いたいと思ってもらえるのです。

ワインを生産

ワインを生産する裏方の様子も積極的に投稿

──忙しい農家さんは多いですが、SNSをする時間はどうやって作ればいいのでしょうか。

基本的にはスマホで撮った写真に一言つけて、農作業前に短時間で投稿できるようにしています。また、ブログは会社の社員に書いてもらい、分担しています。SNSはできる範囲でしていかないと、自分の時間がなくなってしまうので、負担にならない程度にしてください。朝、農作業の前に15~30分程度事務作業を行うと、疲労感もなく頭も冴えているので、おすすめです。

楽しみながらSNS投稿を継続しよう

蓮見さんは作業している自身の様子も定期的に投稿している

──蓮見さんは、ご自身のSNS活用のご経験を広く発信しておられます。どのような思いで活動されているのですか。

毎日忙しい農家さんにとっては、スマホがあれば短時間で畑から発信できるという点で、SNSはとても有効だと思います。小さな農家さんは宣伝するツテや資金力がないので、せっかく良いものを作っていても、消費者に伝わらなければなかなか売ることができません。SNSでコツコツ投稿することで人の目に留まり、適正な価格で販売することにつながっていけば、農業の未来も明るくなるのではないかと思っています。

──SNSはこれからの農業に必要なもののひとつだと考えていますか。

私は、これから農業が発展するために必要なことは「SNSの活用」と「6次産業化」だと考えています。農業の6次産業化というと、農産物を作って、それを加工し販売するところまでするので、関わる時間が長いですよね。それだけ、SNSで発信する内容も多くあるはずです。長い期間、継続して発信し続けていると、一般の消費者の方が興味を持って、感情移入して応援してくれるようになります。そうした強い思い持ったファンがいてくれるというのは、農家にとっても強みになります。

──SNSをするうえで、一番大切なことはなんだと思いますか。

何よりも、楽しみながらやることが続けるコツです。負担にならない程度に、1日1~2分でいいんです。ぜひ楽しみながら好きなことを発信し続けて、自分だけの強いファンを育てていってほしいと思います。

写真提供:株式会社はすみふぁーむ

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