販売単価の低下などで収支・資金繰りが悪化
日本政策金融公庫農林水産事業は2018年7月、融資先の担い手農業者を対象に「平成30年上半期農業景況調査」を実施しました。
農業全体の30年上半期景況DIは3.3となり、過去最高だった29年(21.2)から17.9ポイントの大幅下落となりました。
販売単価の低下(販売単価DI:24.3→▲7.9)と生産資材や労賃などの生産コストの上昇(生産コストDI:▲25.2→▲37.3)を背景に、収支・資金繰りが悪化し(収支DI:14.7→▲2.7、資金繰りDI:15.5→2.4)、その結果景況DIが亜悪化したものと考えられます。
(※)DI(Diffusion Index=動向指数)について DIは、前年と比較して「良くなった」の構成比から「悪くなった」の構成比を差し引いたもの。
業種別の景況
景況DIが業種全般で低下傾向にある中で、酪農(北海道:44.8→38.0、都府県:12.6→12.1)は、販売相場の好調が続いていることなどから、調査実施時は高い値を維持していました。また、養豚(59.4→12.4)やブロイラー(55.3→18.4)は、相場が前年を下回っている物の、未だ比較的高い価格帯にあることから、業況DIはプラス値を維持しています。一方で、採卵鶏(32.7→▲49.1)は、生産量の増加により相場が下落していることから、大幅に景況DIが低下しました。
畜産以外の耕種農業も、全体的に業況DIの低下がみられますが、29年に続き相場が好調な果樹(21.8→12.8)や、畑作(34.8→6.7)はプラス値を維持しています。他方、施設野野菜(15.0→▲1.5)、茶(26.5→▲21.1)、きのこ(▲2.5→▲8.7)、施設花き(▲10.6→▲25.2)の景況DIはいずれもマイナス値となりました。なかでも、茶(26.5→▲21.1)は天候不順により出荷時期と需要期がずれ込んだことで相場が過去最低の水準にまで下落しており、景況DIは大幅に悪化しています。
通年の景況DIは悪化見通し、夏場の天候不順も影響
農業全体の景況DIの2018年通年見通しは、前年(21.2)より33.5ポイント低下し、▲12.3となりました。
夏場の天候不順により作柄(生育または収穫高の程度)が不安視される畑作(34.8→▲28.5)や露地野菜(7.5→▲6.5)は、景況DIを大幅に下げ、マイナス値に転じる見通しです。
また、政策の大きな見直し行われた稲作(北海道):39.7→▲50.4、都府:10.3→▲11.6)も、今後の先行き不安や足元の販売価格が低下傾向にあることから景況DIは低下し、マイナスに転じる見通しです。
また、養豚(59.4→▲5.3)は海外からの輸入量が増加していること、採卵鶏(32.7→▲59,8)、ブロイラー(55.3→▲6.1)は、販売単価が低下傾向にある中で、さらに増産が進んでいることから、慎重な回答が多く景況DIは悪化する見通しとなりました。
設備投資DIは過去最高値を更新 48.0%が「昨年よりも投資額増加」
設備投資見込みDI(14.2)は、前回調査(2018年1月時点)の▲6.8から21.0ポイント上昇し、過去最高値を更新しました。
また、設備投資額の増減見込みについてのアンケートでは、「昨年に比べ増加する」との回答が約半数の48.0%を占め、設備投資に対する意欲の高さがうかがえます。回答の中には、「建設資材の高騰などにより、同じ内容の設備投資を個なった場合でも投資額は増加する」といった声も聴かれました。2018年上半期の雇用状況DIは前年(▲36.8)からほぼ横ばいの▲37.4となり、依然として深刻な労働力不足が続いていることが伺えます。
【関連リンク】
農業景況DIは大幅下落、販売単価低下など響く ~景況悪化の中で設備投資DIは過去最高~<平成30年上半期農業景況調査>
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