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【農業マーケティングの現場からVol.2】生活者には「オススメ」と「クチコミ」が必要

【農業マーケティングの現場からVol.2】生活者には「オススメ」と「クチコミ」が必要

最終更新日:2018年10月03日

スマートフォンなど交信ツールが普及している現代、はたして農業者の発信する情報は、本当に生活者へ届いているのでしょうか?また、彼らへ届ける有効なツールとは何でしょうか?実証実験の結果を通して、農業経営に対して有効にマーケティングを取り入れる方法を考えてみましょう。農業経営を支援するマーケティング企業「株式会社ファーマーズ・ガイド」(博報堂DYグループ)の中島慶人(なかしま・よしと)代表に、全6回にわたって発信していただく、シリーズ第2回目です。

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農業者と生活者との関係性を見直す

どんなに優れた農業者でも、どんなに大規模な農業者でも、目の前のたった一人の食べてくれる人を大切にする。農業を見直すならそこからだと思います。

農業者にとって、自身の努力や工夫が生活者に伝わり、買ってくれる姿、食べてくれる姿、喜んでくれる姿が見えることは、この上ない喜びになるでしょう。

生活者にとって、地域の、良いものをつくることにこだわる農業者を知り、つながることは、何物にも代えられない贅沢になるでしょう。

その生活者の人生に、なくてはならない存在に、農業者はなることができます。それはとてもうらやましいことです。「◯◯さんのつくったお米・野菜が、子どもを元気に育ててくれた」「□□さんの枝豆を食べないと、私の夏は始まらない」「△△さんの梨を食べると、あの日の楽しかった家族との思い出が蘇る」

価値ある農業は、生活者との関係性において、実現できます。

一方で、そのためにかかる農業者の負担は極力下げる、という視点を欠くことはできません。農業経営が声高に叫ばれますが、生産にかかる負担は大きいのが実情です。それらを踏まえた上で、あなたの農業の理解者を得て、安定した農業経営を実現するためのマーケティングこそが、求められています。

農業経営にマーケティングを取り入れる

下記はわたしたちが行った農業におけるマーケティングの投資対効果を分析する実験の一部です。

※出典:2017年12月博報堂DYホールディングス「小規模直売所におけるプロモーション効果実証」

千葉県松戸市にある個人直売所を対象に、チラシを近隣1万世帯に配布したところ、1週間程度で32人の新規来店につながり、売上が5万2000円ほどアップしました。ただし、このプロモーションにはおよそ9万6000円のコストがかかりましたので、投資対効果では見合わない形だといえます。

現状は、農業者がマーケティングを行うにはコストがかかり過ぎる環境になっているのではないか、投資対効果に見合う広告宣伝の手段があまり存在しないのではないか、そのような問題意識を持ちました。

仮に売上の10%を広告費に当てられるとして 5000円程度の広告費なら見合うと言えますので、そのようなものがあれば、皆さんにとって使い勝手がよくなるはずです。また、一時的に売上をアップさせるだけでなく、継続的・安定的な売上が立つという視点も必要になるでしょう。

生活者が必要としているのは「オススメ」と「クチコミ」

生活者が必要としている情報とは、どこで何を買えばいいかという案内・オススメであり、買いたい商品についての第三者意見・クチコミです。そして現在、多くの小売事業者は、これまで主流だった折込広告やDM広告だけではなく、デジタルを取り入れた施策に注目しています。

スマートフォンやタブレットの画面を触るのはちょっと…という方にもぜひ聞いていただきたいのですが、わたしたちはいま第三次産業革命、そして第四次産業革命の時代にいます。

(※)第一次産業革命は蒸気機関など、第二次産業革命は電話機・電球・蓄音機・内燃機関など、第三次産業革命はパーソナルコンピュータ・インターネット・情報通信技術(ICT)など、第四次産業革命はロボット工学・人工知能・ナノテクノロジー・量子コンピュータ・生物工学・モノのインターネット(IoT)・3Dプリンター・自動運転車などに代表されると言われている。

日本におけるインターネット利用者数は1億人を超え、普及率は80%以上となりました。スマートフォンは20〜30代ではおよそ9割、40代で8割、50代で7割、60代でもすでに4割が使用しています。

※図・出典:2018年6月総務省「通信利用動向調査」

スマートフォンの普及に伴い、まさにいつでもどこでも、インターネットに接続し、情報が得られるようになりました。さらにAI技術が発展することで個人の嗜好(しこう)に最適化・パーソナライズ化された情報まで届けられるようになりつつあります。

マーケティング環境は、アナログマーケティングから始まり、マスマーケティング、そしてデジタルマーケティングへ、さらにその先のインテリジェントマーケティングへと向かい始めています。

2010年頃よりGoogleがZMOT(Zero Moment of Truth)という概念を提唱しました。顧客が何を買うかは来店前にすでに決まっている、なぜなら、店に行く前の検索やレビュー、SNS上の友人からの推奨で購入商品を決定しているから、とする理論です。

デジタルツールを使いこなす生活者に、われわれはいかに向き合うべきなのでしょうか。

当社で行ったアンケート調査では「普段、野菜を購入する際に参考としている情報源はどれですか?」という質問に対して「ウェブ情報」と答えた主婦は14.3%。さらに「直売所の商品や価格などが事前に確認できれば、利用意向や頻度が高まると思いますか?」に対して「高まる」と答えた主婦が71.5%でした。

※図・出典:2017年10月博報堂DYホールディングス「ネットリサーチ調査(回答者:主婦/東京23区内外・千葉・茨城 各70人/計 280人)」

「どこにあるかとか、なにを販売しているかをわかっていれば行ってみたいと思う」「今は、そういった情報がなく存在すらわからないから、もっと明確な情報があるとうれしい」「他の大手スーパーマーケットはネットスーパーやチラシで値段が分かるが、実際行ってみないと値段が分からない場所にわざわざ行かない」というのが生活者の本音です。

さらに驚くべきことに、実に42.5%もの主婦が「身近にある直売所を1箇所も知らない」と答えています。

※図・出典:2017年10月博報堂DYホールディングス「ネットリサーチ調査(回答者:主婦/東京23区内外・千葉・茨城 各70人/計 280人)」」

農業者の発信する情報が生活者まで届いていないという実態が、これらのデータから見て取れます。

対策としては、店頭施策のみならず、ウェブチラシ・検索比較サイトやSNSなどデジタル施策も有効になるでしょう。予算をつけられるならその方が良い です。ウェブチラシで認知をあげ、それを元に少しずつリピーターを増やし、売上を大きくしていくということが可能になります。

自身のホームページを持つべきかを検討してみるのは良いかも知れません。ホームページの制作・開発費、サーバー代、デザインやメッセージの管理・定期的な更新作業。なんとかホームページを用意することができても、今度はそこへ集客するのにもコストがかかります。

農業に限らず、小規模ビジネスには大きなプラットフォームが必要です。例えば、飲食店選びや中古車購入で、個々の飲食店のホームページ、個々の中古車のホームページがあっても、皆さんなかなか見ないと思います。情報を集約したプラットフォームが存在し、充実した多くの情報が掲載されているからこそ、生活者に価値を提供できます。

農業においても、このようなプラットフォームがあれば生活者にそれを見る動機が生まれるでしょう。産地としての価値を高め、顧客獲得を低コストで実現するには、周りもみんなやっている、周りもみんなうまくいっているという状況をつくることです。地域で勝つ、みんなで勝つという農業の発想は、このようなプラットフォームづくりにおいて、強みになります。

とはいえ、農業経営においてマーケティングの視点がない、マーケティングをしっかり実践する担当がいない、というのが実際ほとんどだと思います。次回は、農業マーケティングにかかる負担をどのように最小化するか、についてお伝えしたいと思います。

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