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進化するスマート農業、新技術に各社しのぎ 「農業ワールド2018」レポート

進化するスマート農業、新技術に各社しのぎ 「農業ワールド2018」レポート

国内最大級の農業見本市「農業ワールド2018」が、10月10~12日の3日間、幕張メッセで開催されました。大規模農業を想定したドローンやAIを活用した病害予測など、スマート農業はさらに進化。深刻な担い手不足に対応するロボットやアシストスーツも各社が工夫を凝らし、記録的な酷暑だった今年はさらに、暑さ対策の商品にも注目が集まりました。マイナビ農業編集部が取材した展示会の様子をお届けします。

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ドローン同時に5機制御、AI使い病害予測 植物の「見える化」も

ICTを活用し省力化・精密化、高品質生産を目指す「スマート農業」。
大規模農業を念頭に自動制御や精密化で効率的な農薬散布を可能にしたドローン、圃場のモニタリングによる環境制御技術にAIによる病害予測の機能を追加するなど、革新的な技術の開発に各社はしのぎを削り、今年も多くの来場者が関心を寄せていました。

DJIの「AGRAS MG-1P RTK」

ドローンメーカーのDJIは、高精度な自動航行を可能にした新型「AGRAS MG-1P RTK」を発表。ドローン1機に10リットルのタンクを搭載し、10分間に1ヘクタールの農地に農薬や液体肥料などを散布できるといいます。また、1台のコントローラーで最大5機のドローンを同時に制御でき、「大規模な農地への効率的な農薬散布をかなえられる」とアピールします。さらに別売りの空撮用ドローンと連携することで自動航行も可能になります。

一方、ナイルワークスは、作物の上空30~50cmの至近距離を自動飛行し、薬剤散布とともに作物の生育状態を1株ごとにリアルタイムで診断する「Nile-T18 」を紹介。診断結果に基づいて最適量の肥料・農薬をピンポイントで散布する技術も実用化に向けて準備しているといいます。

ボッシュの「プランテクト」

最新のセンシング技術で、圃場や植物の様子を「見える化」する環境モニタリングシステムも、さらに正確に高機能にと進化を続けています。

自動車部品や電動工具などを手掛けるボッシュは、トマトの病害予測機能を搭載したハウス内の環境モニタリングサービス「プランテクト」を展示。温度、湿度、二酸化炭素量、日射量を計測しハウス内の環境を可視化するだけでなく、独自に収集した膨大なデータとAIを使ってトマトの灰カビ病の感染リスクを54時間先まで92%の精度で予測することができるそうです。同社の担当者は「センサーは電池式で電源がない場所にも設置でき、月額4980円からと価格的にも比較的導入しやすいと思う。データによる改善・改良に意欲的な農家の助けになれば」と話します。
今後、イチゴやキュウリといった作物についても病害予測サービスを始める予定だといいます。

さらに、環境ではなく、植物の状態そのものを「見える化」する試みもあります。

愛媛県のプラントデータは、植物の光合成速度や蒸散といった植物自体の状態と、生育環境を計測しリアルタイムに表示するサービス「フォトセル」を展示。最先端の環境制御システムを見ようと、多くの人が訪れていました。

選果ロボにアシストスーツ 担い手不足の解消に、省力化技術

農家の高齢化、若者の農業離れなど、年々深刻化する農業の人材不足。今回の展示会では、農業就業人口の減少への対応し、作業を省力化するための技術も目立ちました。

シブヤ精機のロボット選果システム

例えば、ロボットによる選果システム試作機のデモンストレーションを行ったシブヤ精機。取り付けられたアームは、慶應義塾大学の野崎研究室らが開発した、ものの柔らかさや形を高精度に感知する「リアルハプティクス技術」を使い、イチゴやトマトといった繊細な果実も傷つけずにつかんでラインに供給できるといいます。重さや形状などの計測と品質センサーにより、等級を識別して箱詰めまでを自動で行います。同社は「人に代わる『ロボットの手』が明日の選果作業に革命をもたらす」とPR。ロボットが柿とトマトを仕分ける様子を、多くの人がカメラに収めていました。

オランダ・レイボ社のアシスト装具「レイボ」を試す来場者

作業の肉体的負担を軽減するアシストスーツも様々な商品が展示され、来場者は実際に試着してその着心地を試していました。
法政大学・石井千春教授が立ち上げたベンチャー企業サステクノ「エアロバック」の担当者は「人工筋肉に空気圧を入れて腰の負担を軽減する。中腰姿勢が続いたり重いものを持ち上げたりすることも多い農作業での負担を減らし、労働力の確保につながるはず」と話しています。

暑さ対策、人も動物・植物も 自治体は企業誘致

いけうちのブース。農業と畜産の両方で使えることをアピールした

酷暑が続いた2018年の夏。会場では、空調服や作業用冷房装置も注目されました。

従来の細霧よりさらに細かい「微霧」という領域の霧を使って冷房・加湿・薬液散布を行う栽培環境管理システムを展示した、いけうちの担当者は「暑い日が続いた今年は特に問い合わせが多かった。昨年の展示会で畜産関係者も来場していることを知り、今回の展示会で温室ハウスだけでなく畜舎にも使えると牛や豚のパネルを置いてPRしところ、来場者の2割が畜産関係者になった。家畜のストレスを減らす冷房としての需要も大きい」と話します。

会場では、企業だけでなくいくつかの自治体もブースを構え、情報収集や相談に訪れた人たちが話を聞いていました。
その一つ熊本県のブースでは、県内で農業に参入する企業を誘致しようと、様々な支援策や補助制度をPR。担当者は「熊本は多様な気候・地形を持つ日本有数の農業県。企業に県外から農業に参入してもらうことで、これまでになかったノウハウやアイデアで熊本の豊かな素材をさらに活用してもらいたい」と話していました。

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