「5年以内に黒字化」は4割下回る
調査は、全国の食品関係企業(製造業、卸売業、小売業、飲食業)7101社を対象に行われ、2498社が回答しました(回収率35.2%)。

農業参入への取組みについて【図1】 平成22年上半期調査との比較 (日本政策金融公庫作成)
「既に参入している」と回答したのは回答した企業の12.7%で、前回の調査(2010年)と比較して3.3ポイント増加しました。一方、「検討または計画している」「関心はあるが検討していない」といった農業参入に関心を示す回答が減少していることから、日本政策金融公庫では「食品企業の農業参入が進んだ一方で、新たに農業参入に関心をもつ層は増えていないことがうかがえる」としています。
農業参入の目的については、「原材料の安定的な確保」の回答が最も多くなり、次いで「本業商品の付加価値化・差別化」、「地域貢献」の順となりました。

農業参入の目的について(複数回答)【図2】 ※回答者:「既に参入している」または「参入を検討または計画している」と回答した企業 (日本政策金融公庫作成)
一方、「既に参入している」と回答した食品企業に対して、農業部門が黒字化するまでにかかった期間を聞いたところ、5年以内に黒字化した企業は37.9%でした。事業の黒字化に時間がかかった理由としては、「作付けから収穫まで年1回転であり作業の習熟に時間を要した」、「本業の安定的な稼働が目的であり、農業部門のみでの採算は意識していない」といった声が聞かれました。

農業参入後、農業部門が黒字化するまでの期間について(今回初調査)【図3】 ※回答者:「既に参入している」と回答した企業 (日本政策金融公庫作成)
課題は人材確保

農業参入における課題について(複数回答)【図4】 ※回答者:「既に参入している」または「参入を検討または計画している」と回答した企業 (日本政策金融公庫作成)
さらに、「既に参入している」または「参入を検討または計画している」と回答した企業に農業参入にあたっての課題を聞いたところ、「人材の確保」が63.2%と前回調査時と比べ27.0ポイント増え、最も大きな課題となっていることが分かりました。
他には、「採算性の判断」、「農地・事業地の確保」、「技術習得」と続き、日本政策金融公庫は「農業参入にあたっては、農業の特性を理解している専門家によるサポートが求められていることがうかがえる」としています。
また、農業参入における課題として「資金調達」が22.8%(前回調査比▲15.0 ポイント)に減少したことも特徴的な動きです。
「自社・子会社の直接参入」が最多
「既に参入している」及び「参入を検討または計画している」と回答した企業に対して、農業参入の方法を聞いたところ、「自社・子会社が直接参入」との回答が最も多く(63.9%)、前回調査と比べ10.1ポイント増加しています。
一方で、「農業法人への出資・業務提携」による農業参入は17.2%(同▲5.2 ポイント)にとどまり、食品関係企業が自ら農業経営を行う方法が増加していることが分かりました。
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