農家の平均年収は500万円強
農林水産省の経営形態別経営統計(個別経営)によると、全国の農家の年間総所得の平均は、2016年で前年比5.1%増の約521万円となっています。これは、農業粗収益(農業経営によって得られた総収益額)から土地代などの農業経営費を差し引いた「農業所得」に、作物の加工販売やレストラン経営で得る「農業生産関連事業所得」、それ以外の収入の「農外所得」、受け取った年金などの収入を足し合わせた数字です。具体的に見ると、農業所得の平均額は前年比21.2%増の約185万円、農業生産関連事業所得は前年比60%減の約6000円、農外所得は前年比4.7%減の約140万円となっています。
農業所得が20%以上伸びた理由としては、農機具の購入費増などにより農業経営費は高くなったものの、畜産、野菜・果樹生産、稲作などの収入の伸びを受け、農業粗収益を9.1%押し上げたことが挙げられます。
兼業農家、専業農家での違いは
ただ、農業を主な仕事としているか、別の職業と掛け持ちして生計を立てているかによって、総所得に差が生じます。農業所得が総所得の50%以上を占め、1年間に60日以上農業に従事しているなどの「主業農家」の総所得は約788万円、農業所得が総所得の50%未満で1年間に60日以上農業に従事しているなどの「準主業農家」は約689万円、どちらにも当てはまらない「副業的農家」は約429万円となっています。
就業スタイルにより、約360万円も差があることになりますね。兼業を考えている人は、農業以外の職業でどれくらい収入を得るかがプランを立てる際のポイントとなりそうです。
儲かる作物はある? 作物別の農業粗収益とは
せっかく農家になるなら、できれば儲かる作物を栽培したい!と考える人も多いのではないでしょうか。営農スタイルや作物別に農業粗収益を比較してみましょう。農林水産省の営農類型別経営統計(個別経営)では、水田作、畑作、露地・施設野菜作、果樹作、花き作の農業粗収益の平均を知ることができます。2016年の統計を順番に見ていきましょう。
水田作は、農家1戸当たりの農業粗収益の平均が約266万円。しかし“水田作付延べ面積20ヘクタール以上”に限定して見ると、1戸当たりの農業粗収益は、約4637万円となります。うち農業所得だけでも約1568万円となり、全国の農家の総所得の平均の3倍を超えています。
畑作の農家1戸当たりの農業粗収益の平均は約863万円。露地野菜作は約608万円、施設野菜作は約1281万円、果樹作は約609万円、露地花き作は約697万円、施設花き作は約1543万円でした。
また、少し古いデータにはなりますが、農林水産省の2007年の品目別経営統計を見ると、個別の作物について10アール当たりの農業粗収益をチェックすることができます。例えば、施設野菜作の農業粗収益を見ると、ミニトマトの約407万円が最も高く、スイカの約75万円が最も低くなっています。同じ施設野菜であっても、栽培する品目によって農業粗収益は大きく異なるということが分かります。
何にお金がかかっている? 支出の項目について
農業粗収益が高くても、生産にはコストがかかります。一体どのような項目にお金がかかっているのか、2016年産米の10アール当たりの栽培にかかる支出を例に見ていきましょう。
年間の費用合計は11万1652円。費用は労働費と物財費に大きく分けることができ、それぞれ約3割、約7割の構成割合となっています。労働費は、雇用する従業員への賃金など主に人件費を指します。
物財費の内訳では、農機具費が2万3872円、賃借料および料金(薬剤共同散布などの共同負担金、農機具賃借料など)が1万1953円、肥料費が9313円、農業薬剤費が7464円となっています。生産には、このようにさまざまなコストがかかっているんですね。
以上、農業の年収についてご紹介しました。収入は営農スタイルや作物によって大きく異なるので、ぜひこれから就農する際の参考にしてみてください。
参考
経営形態別経営統計(個別経営):農林水産省
営農類型別経営統計(個別経営):農林水産省
品目別経営統計:農林水産省