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農業大学校とは?学べる内容・卒業生の主な進路・大学の農学部との違いなど

農業大学校とは?学べる内容・卒業生の主な進路・大学の農学部との違いなど

将来の進路に、農業にかかわる仕事を考えるとき、学びの場は案外多いものです。その一つが農業大学校。全国にありますが、実際にどんな場なのでしょうか。「何が学べるの?」「他の教育機関とは何か違う?」「学費はいくら?」など、分からないことも多いかもしれません。高校生だけでなく社会人でも入学できる農業大学校。学科や授業、気になる学費や就職など、農家を志す進学希望者が知っておきたい情報をまとめました。

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農業大学校は“農業の専門学校”

農業を学べる場はたくさんある?

将来、農家として働こうと思う高校生や社会人が、就農前に農業を学ぶ場にはどんな選択肢があるのでしょうか。
4年制大学の農系学部を目指す場合もあるでしょう。大学の農学部や、生物・食など農に関わる学部では、4年で農業を広く学ぶことが可能です。また、すでに農業を営んでいる農家や農業法人に入って学ぶこともあり得ます。

農業大学校と農業大学は別モノ

農業の学び場の一つ、農業大学校は、言わば“農業の専門学校”です。

1~2年で農業の技術や経営を学ぶことができ、その多くが専門学校(専修学校専門課程)として認定されています。
農業大学校は大学と付いていますが、文部科学省管轄の4年制大学や短期大学とは違います。ただし、2年制の専門学校は、4年制大学への編入学を視野に入れることも可能です。

また、農業大学校の中には、養成課程と呼ばれる2年間を卒業した後に通える研究課程が設けられている学校もあります。

その他、より手軽に1日からでも学べる研修課程を設ける学校も。

働いている農業者のスキルアップにも適しています。

つまり、農業大学校は、短期間で農業生産の技術や経営に特化した学びが得られることが最大の特徴と言えます。

農業大学校で学べる内容は?

農業大学校は、新規就農者や経営発展を図る農業従事者を対象にした研修教育機関で、全国の42道府県に設置されています。

農業大学校は、2年程度で農業の実践的な技術や経営を実習も通して学ぶことができる、いわば専門学校です。

教科は稲や野菜、果樹、酪農、肉牛、養豚、養鶏などがあり、各分野で専門的な知識、技術を学びます。

農業大学校の学習課程ごとに学ぶことができる内容をみていきましょう。

「養成課程」

農業の入門的な課程で高校卒業程度の方を対象としています。講義・演習・実験と実習がそれぞれ半分で構成され、2年間で2400時間の履修時間があります。

「研究課程」

研究課程は、養成課程の学習内容を深化させ、高度な農業技術、経営能力の修得を目的にしています。

養成課程と同様に講義・演習・実験と実習がそれぞれ半分で構成され、2年間で2400時間の履修時間があります。

「研修課程」

研修課程は、高度な技術や知識を修得したい農業従事者や新規に農業に携わりたい方を対象にしており、気軽に通うことができます。農業技術や機械の操作、農業体験など分野別に学習コースがあり、数週間程度で履修できます。

農業大学校の卒業生の主な進路は?

農業大学校の卒業生は、どのような進路を歩んでいるのでしょうか。実家が農家である生徒が多くを占めていますが、農家出身かどうかで進路が分かれているようです。

農家になる

実家が農家の場合、大学校卒業後は実家に戻って農業に携わる方が大半です。

家族で農業を営みながら、実際の作業を通してさらに知識や技術などを修得していきます。また、これとは別に卒業して自分で機械などを購入して新たに農業を始める方もいます。

農業法人に就職する

農業法人は大規模な農業経営によって安定していると言え、新卒の方も多く採用しています。

農業法人は、実家が農家ではない大学校卒業生の最大の就職先です。仕事を通して農業技術を修得したり、人脈を構築することができ、新たに農業を始めるため農地の目途がついてから独立を目指す方も多くいます。

農業協同組合(農協)に就職する

大学校の卒業生のうち農業団体に就職をする方もいます。

たとえば、農業協同組合(農協)や農業共済組合、地方農政局などです。

農業大学校と大学の農学部との違いは?

一般的には農業大学校と大学の農学部は、ほとんど違いがないように思われていますが、実際のところはどうなのでしょうか。ここでは、どのような違いがあるのかについて具体的に見ていきます。

農業大学校は?

農業大学校は実際に農業を始めるため、学習と実習を通してすぐに役に立つ実際的な知識や技術を修得していきます。

たとえば、履修時間の半分は水稲、野菜や酪農といった専門課程の実地研修が占めているので、実践的な知識や技術が身につき、卒業後はその経験をすぐに役立てることができます。

また、農業大学校の特徴として、その地域で特産の作物や家畜の専門家を育成することに力を入れていることがあげられます。

大学の農学部は?

農業大学校が農業を営むための実践的な知識や技術を修得する専門学校とすると、大学の農学部はもう少し俯瞰的でさまざまな視野から農業にアプローチするのが大きな違いでしょう。

たとえば、栽培や加工方法などの生産方法を研究したり、DNAなどの科学技術的なアプローチを行ったり、また、環境保全に配慮する農業や地域経済に果たす農業の役割などもっと専門的、分析的に多面的な観点から農業にアプローチしていくのが大きな特徴になります。

農業大学校のメリットとデメリットは?

メリットは?

メリットは大きく3点あります。1点目は、農作物と土壌などの基本的な学習をしっかりと積み、並行して実習体験を行うため、農業の初心者でも農業を始める際の基礎的な知識や技術を修得できることです。

失敗などを通して実践的なノウハウを学ぶことができるのです。

2点目は、実習を通して実際の農家や農業関係者と知り合うことができるので、卒業してからさまざまなアドバイスをもらったり、役に立つ関係を構築しやすいことです。

3点目は、さまざまな作物の栽培方法を学ぶので、その過程で自分が栽培したい作物を見つけることができることです。

デメリットは?

デメリットも3点あります。

農業大学校では、さまざまな農作物の栽培方法を広く浅く学んでいきます。しかし、自分が栽培したい作物が決まっている場合は、その作物に絞った知識や技術を修得したいので時間的にムダが生じてしまうことです。

これがデメリットの1点目です。2点目は、新規に就農する場合、農業大学校では農地を斡旋してもらえません。農業を始めたくても、農家の方から信用がないため、簡単に農地を借りることはできません。

このため、卒業後に農家の方から農地を貸してもらえるように実習を通して親密な関係を構築しておくことが大切です。

また、3点目は学習期間が比較的長いため、期間を通して学習意欲を維持していくことが難しいことがあげられます。

公立の農業大学校は全国42道府県に設置

全国には公立の農業大学校が42道府県に設置されています。

「かながわ農業アカデミー」など、農業大学校と名前に付かない学校もあります。また、公立以外に「八ヶ岳中央農業実践大学校」など民間の農業大学校もあります。

以下では、一般的な公立の農業大学校の養成課程を中心に紹介していきます。

北海道・東北

学校名 住  所 電話番号
青森県営農大学校 上北郡七戸町大沢48-8 0176-62-3111
岩手県立農業大学校 胆沢郡金ヶ崎町六原蟹子沢14 0197-43-2211
宮城県農業大学校 名取市高館川上字東金剛寺1 022-383-8138
山形県立農林大学校 新庄市大字角沢1366 0233-22-1527
福島県農業総合センター農業短期大学校 西白河郡矢吹町一本木446-1 0248-42-4111

関東

学校名 住  所 電話番号
茨城県立農業大学校 東茨城郡茨城町長岡4070-186 029-292-0010
栃木県農業大学校 宇都宮市上籠谷町1145-1 028-667-0711
群馬県立農林大学校 高崎市箕郷町西明屋1005 027-371-3244
埼玉県農業大学校 熊谷市樋春2010 048-501-6845
千葉県立農業大学校 東金市家之子1059 0475-52-5121
神奈川県立かながわ農業アカデミー 海老名市杉久保北5-1-1 046-238-5274

甲信越

学校名 住  所 電話番号
山梨県農政部専門学校農業大学校 北杜市長坂町長坂上条3251 0551-32-2269
長野県農業大学校 長野市松代町大室3700 026-278-5211
新潟県農業大学校 新潟市西蒲区巻甲12021 0256-72-3141

東海

学校名 住  所 電話番号
静岡県立農林大学校 磐田市富丘678-1 0538-36-1561
岐阜県農業大学校 可児市坂戸938 0574-62-1226
愛知県立農業大学校 岡崎市美合町並松1-2 0564-51-1601
三重県農業大学校 松阪市嬉野川北町53 0598-42-1260

関西

学校名 住  所 電話番号
滋賀県農業技術振興センター 農業大学校 近江八幡市安土町大中503 0748-46-2551
京都府立農業大学校 綾部市位田町桧前30 0773-48-0321
大阪府環境農林水産総合研究所農業大学校 羽曳野市尺度442 0729-58-6551
兵庫県立農業大学校 加西市常吉町1256-4 0790-47-1551
なら食と農の魅力創造国際大学校(アグリマネジメント科) 桜井市大字池之内130-1 0744-47-3430
和歌山県農業大学校 伊都郡かつらぎ町中飯降422 0736-22-2203

中国・四国

学校名 住  所 電話番号
鳥取県立農業大学校 倉吉市関金町大鳥居1238 0858-45-2411
島根県立農林大学校 大田市波根町970-1088 0854-85-7011
岡山県農林水産総合センター農業大学校 赤磐市東窪田157 086-955-0550
熊本県立農業大学校 合志市栄3805 096-248-1188
広島県立農業技術大学校 庄原市是松町55-1 0824-72-0094
農業担い手支援部(山口県立農業大学校) 防府市牟礼318 0835-38-0510
香川県立農業大学校 仲多度郡琴平町榎井34-3 0877-75-1141
徳島県立農林水産総合技術支援センター農業大学校 名西郡石井町石井1660 088-674-1026
愛媛県立農業大学校 松山市下伊台町1553 089-977-3261
高知県立農業大学校 吾川郡いの町波川234 088-892-3000

九州

学校名 住  所 電話番号
福岡県農業大学校 筑紫野市大字吉木767 092-925-2403
佐賀県農業大学校 佐賀市川副町南里1088 0952-45-2144
長崎県立農業大学校 諫早市小船越町3171 0957-26-1016
熊本県立農業大学校 合志市栄3805 096-248-1188
大分県立農業大学校 豊後大野市三重町赤嶺2328-1 0974-22-7581
宮崎県立農業大学校 児湯郡高鍋町持田5733 0983-23-0120
鹿児島県立農業大学校 日置郡吹上町和田1800 099-245-1071

実践的な農業技術を学ぶ農業大学校のスクールライフ

少人数で実習が充実した農業大学校での学び

農業大学校は農業の専門学校として、教科書をつかった座学や研究よりも、実習時間が多いことが特徴です。

2年間で2400時間以上の履修が標準的で、その半分が実習に充てられます。つまり単純計算で年間600時間、実地で農業を学べます。

さらに、1学科が数十人程度のため、実習現場で作業し経験できることは自然と増えます。

実家が農家でない学生も多く、「福島県農業総合センター農業短期大学校」では約半分が非農家だそうです。

学科は学校ごとに異なる

学科は、米・麦、野菜・果樹、酪農・畜産の3つが設けられていることが一般的です。

その名称はさまざまで、「愛知県立農業大学校」のように、「教育部農学科」という一つの学科の中で8つの専攻に分かれている学校もあります。

また、「くだものづくり日本一の農大を目指して」をスローガンとする「山梨県立農業大学校」は果樹に力を入れ、授業では稲作も組まれているものの、米や酪農の学科はありません。

他にも、全国的にも少ない林業科がある「島根県立農林大学校」、茶業学科がある「静岡県立農林大学校」、またフードクリエイティブ学科・アグリマネジメント学科といった農業を広くとらえた学科を設ける「なら食と農の魅力創造国際大学校」など、特徴ある学校も見られます。

寮生活が基本

ほとんどの農業大学校には寮が設けられています。

これは早朝や夜遅くの作業が発生する農業ならでは。時間が読めない牛の出産などに立ち会うためには、通学では難しくもあります。

月曜から金曜までの、朝の9時頃から夕方17時頃までが授業。ただし、早朝の牛の世話を担当するなどで、朝4時に起床することも。こうした際に敷地内の寮なら、すぐに向かうことができます。

学校によって、全寮制(1年次だけの場合も有り)や希望入寮制などの違いがあります。男子寮と女子寮に分かれ、2人部屋の場合が多いですが、1人部屋も増えてきているようです。

授業後は、部活動をする学生や、アルバイトをする学生などもいます。翌朝も早いために23時には就寝する学生も多いようです。

取得可能な資格

在学中には、大型特殊自動車運転免許(農耕車限定)、けん引免許(農耕車限定)などの取得を目指すことが可能で、資格の幅は学校により異なります。

年間の必要額は100万円以下が大半

また、学費は年間、約12万円の授業費に、初年度は入学費、教材費、入寮費・食費などがかかり、計80万円ほどの場合がほとんどです。ただし、寮生活や海外研修の有無によって差があり、50万円以下という場合も。

日本学生支援機構の「平成28年度学生生活調査」によれば、4年制大学(昼間部)の年間学生生活費(学費・食費・住居光熱費)は約160万円ですので、半額ほどで学べる概算になります。

さらに、専門学校であれば、同機構の奨学金を利用することもできます。

卒業後はほとんどの学生が農業に関する進路へ

このように実践的な農業を学べる農業大学校では、卒業後ほとんどの学生が農業に関する進路を選びます。

実家の農家を継いだり、農業法人や農協・農業団体、農業関係企業などに多くの学生が進みます。

農業大学校の入試やオープンキャンパス

推薦入試も一般入試もある

さて、いざ入学しようとする際、制限はあるのでしょうか。

まず、農業大学校にも入試があります。

学校ごとに異なりますが、推薦入試、一般入試(前期・後期)がある場合がほとんどです。推薦入試は10月頃、一般入試は1月、2月にそれぞれ試験を行う場合が多いようです。

農業大学校の入試問題

推薦入試では小論文(800字程度)と面接、一般入試では学科試験(国語・数学・生物・化学・農業など)が行われることが一般的です。
各学校のホームページには入試情報以外に“過去問”が掲載されていることもあります。事前に確認しておくと良いでしょう。

〈小論文の問題例〉

「農業で高い所得を得るためには、どのような農業をすればよいと思うか、現状と課題を踏まえて、あなたの考えを述べなさい。」平成29年度 岡山県農林水産総合センター農業大学校(岡山県)

「あなたは、農業大学校で何を学びたいですか。また学んだことを将来どのようにいかしたいですか。」平成30年度 栃木県農業大学校(栃木県)

農業大学校に年齢制限は無し

受験資格については基本的に、高等学校の卒業者か卒業見込みの方であれば、誰でも可能です。ほとんどの学校では、年齢制限もありません。高校卒業を条件とするわけでもなく、「高校卒業程度の学力を有する方」と定められています。

社会人からでも受験し入学できます。高校を卒業して間もない18歳から20代前半の学生が多いですが、社会人経験もある30代以上の学生がいることもあります。

先述のとおり農業大学校は全寮制であることも多く、年齢差のある同級生と共に他では得られない貴重な学生生活を送ることができるとも言えます。

オープンキャンパスや学園祭に行ってみよう

農業大学校では夏にはオープンキャンパス、秋には学園祭が行われる学校も少なくありません。また、日ごろから、学校で作った野菜などを直売所で販売していることもあります。

気になる学校があれば機会を見て、足を運んで話を聞くのも良いでしょう。

確かな知識と実践的な経験、何より苦楽を共にできる仲間は、将来的にも得難く貴重であることは間違いないはずです。

一部写真提供:茨城県立農業大学校
参考
「農業を学ぶための研修教育機関のご案内」(農林水産省)
「平成28年度学生生活調査」(日本学生支援機構)
⇒特集「農業高校・農業大学校ってどんなところ?」一覧に戻る


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