野菜づくりの新常識はどこから生まれたか【畑は小さな大自然vol.20】

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野菜づくりの新常識はどこから生まれたか【畑は小さな大自然vol.20】

連載企画:畑は小さな大自然

野菜づくりの新常識はどこから生まれたか【畑は小さな大自然vol.20】

最終更新日:2018年12月06日

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。この「畑は小さな大自然」シリーズでは「自然の仕組みを知ると、今まで野菜づくりの常識だと思っていたことが実は違った!」ということをいくつかご紹介してきました。特に「水やりはしない方が良い」、「雑草を根から抜くのは間違い」という記事は大変好評をいただいております。このように実は家庭菜園には向かないことが常識となってしまっているのにはある理由があるのです。今回はその理由と、この新常識が生まれた経緯についてご紹介します。

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農家を挫折したことで生まれた気づき

自然農で野菜の生産販売をしていた時の畑の様子。この3倍の面積を全て手作業で行なっていた

僕は以前、野菜の生産農家をしていました。少量多品目の野菜を育て、それを野菜セットとして個人や飲食店に販売していました。しかし、3年前に野菜農家として生きることに挫折します。野菜を育てることは好きだったものの、出荷のために広い面積で野菜を大量に作る作業は、同じことをコツコツ続けることがとても苦手な僕にはあまりにも大変だったからです。特に僕が行なっていた自然農という農法は、機械はあまり使わずに鍬や鎌での細かい作業が多いため、面積を広げるのに比例して精神的にも身体的にも負担が増し、うつのような状態になりました。僕はそれでも畑という環境が好きだったため、畑を職場にしながら「野菜を生産して販売する」以外の形での働き方はないかとを模索し始めました。

そんな時、家庭菜園をこれから始めてみたいという方から「うちの庭で自然農をやってみたいので教えてもらえないか」という依頼がありました。
その時に気づいたのです。僕は農家としての野菜づくりではなく、「暮らしのための野菜づくり」がしたかったのだと。
自然農で生計を立てるほどに野菜を育てるのはかなり大変ですが、自給する分であれば難しくありません。しかも耕運機などの機械が要らず、堆肥や肥料を買ってこなくても、雑草や落ち葉などで十分に土づくりをすることができます。この知恵と技術は家庭菜園にこそ求められているのではないか。
そこから僕は「暮らしの畑屋」と名乗り、今まで学んで実践してきた自然農の知恵と技術を、暮らしのための野菜づくりをしてみたいと志す人たちに伝えていこうと決意したのです。

農家と家庭菜園の野菜づくりは違う

今の農家向けの農法は効率性・生産性に価値観が置かれている

今当たり前になっている野菜づくりの農法は、基本的には農家のために研究されてきたものです。それが家庭にもほぼそのまま入ってきているのですが、そもそも農家と家庭菜園では野菜づくりの目的が全く異なります。ですから今常識とされていることが、必ずしも家庭菜園に適した農法ではないこともあるのです。もちろん農家と同じ農法をやることが間違いではないのですが、家庭菜園に適した農法にはもっと研究の余地があると感じています。

僕が現在運営している体験農園でも最初は、有機農家を長年営んできた父が「農家として行なっていた有機農法」を教えていました。しかし、そのやり方をそのまま家庭で行うとなると、無理とまではいかないのですが、いろいろと不都合な面が出てきたのです。しかし、その問題点に対して僕が実践していた自然農の知恵と技術を用いることで、より選択肢が広がり、自分で実践しやすくなったのです。特に大きく改善された点を3つご紹介します。

堆肥・肥料を買わなくてよくなった!

初心者だけでも簡単に作れ、失敗も少ない

畑の寺子屋では長年、父の自家製の牛糞堆肥を使用していました。しかし受講生の方々はそんな簡単に自分で作ることはできません。買うとしても自分でホームセンターなどで買うことになりますが、質の良い有機肥料がなかなか売っていないのが実態です。あったとしても結構な出費になってしまいます。家庭菜園ではできた野菜を売るわけではないので、できるだけ肥料にお金はかけたくないものです。ここも自然農で行われる雑草・落ち葉堆肥を用いることで、受講生自ら堆肥を簡単に作ることができるようになりました。原料となる雑草・米ぬかだけできちんと栄養価が足りるのかが心配でしたが、土壌分析の結果はかなり良好なものでした。

【関連記事】初心者でも簡単!雑草堆肥で土づくり【畑は小さな大自然vol.8】

狭いスペースでたくさんの種類の野菜を作れるようになった!

レタス、ワケギ、ベビーリーフミックスを同時に栽培。大きいものから間引きながら食べていくことで、長期間楽しめる

農家では作業効率を優先するために、一箇所には基本1種類の野菜しか植えません。しかし、家庭ではそんなに同じ野菜ばかり食べるものではないですし、限られたスペースでいかにたくさんの種類を植えるかが大切になってきます。コンパニオンプランツを利用したり、雑草や落ち葉を活用して地力を上げていくことで、一箇所で多くの種類の野菜を同時に育てることが可能になりました。

耕運作業が楽になった!

畑仕事のこれまでの常識「耕す」は、家庭菜園では負担が大きい

畑仕事といえば「耕す」ことをイメージされる方も多いと思いますが、これがなかなか大変な作業です。初心者がやるには負担が大きいということで、うちの体験農園では、一年に一回大型機械でまとめて大量の堆肥を入れ、トラクターで耕していました。しかし、この部分もいずれ利用者の方が自立した時のことを考えて、自分たちでやれるような方法を考えておく必要があるなと感じていました。鍬で毎回耕すのも初心者には大変ですし、かといって家庭用の耕運機を買うのはそれなりの出費が必要となります。しかし自然農では一年目に土台の土づくりと畝立てを行なっておき、2年目以降ほとんど耕さなくても土が固くならないようにする方法があります。これを導入することで、トラクターを使わなくてもよくなりました。この方法だと広い面積は難しいので、農家には向いていない方法なのですが、家庭菜園ではオススメのやり方です。

まだまだ家庭菜園の農法は改良の余地がある

プランターでも自然の仕組みは活かせる

これまでのシリーズで紹介してきたように、自然の仕組みを知ってもらいそれを畑づくりに活かすことで、家庭菜園ならではの新しい野菜づくりの方法が見えてきました。そしてそれを知った方々が「自然の仕組みって面白い!」「自然ってよくできてるな〜」と、自然に対する見方が変わり、興味を持っていただけるようになったことも嬉しいです。
ただそもそも家に畑がなかったり、体験農園に通う時間がないような忙しい家庭も多いのも事実。そんな現代人の暮らしを豊かにしてこそ意味があると思いますので、プランターや水耕栽培も含めて、今までの常識を破った新しい家庭菜園の野菜づくりを提案できればなと思います。
 

◆次回予告
次回は先ほどご紹介した「耕す必要がなくなる畑づくり」の方法について詳しくご紹介します。これを知ることで、耕すことに無駄な労力やエネルギーを使う必要がなくなります! お楽しみに!
 

過去の記事はコチラ!【畑は小さな大自然】シリーズ

そーやんがアドバイスする【枯れ専かーちゃんのベランダ菜園】シリーズ一覧はコチラ!

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