マイナビ農業TOP > 農業経営 > 【第6回】農地を所有したい! 農地所有適格法人となるには?

【第6回】農地を所有したい! 農地所有適格法人となるには?

連載企画:明日を拓く農業経営

【第6回】農地を所有したい! 農地所有適格法人となるには?

第5回まで、法人の設立から資産の移転、公的保険制度の整備と「法人を立ち上げて環境を整える」ことを解説してきました。今回は農業を行う上では欠かせない「農地の所有」についてお話しします。農業法人が農地を所有するためには、「農地所有適格法人」の要件を満たさなければなりません。農地所有適格法人となるための要件は、法人の設立時の検討事項としても深くかかわってきます。今回は、その要件と審査等について解説しますので、法人設立をする上で参考にしてください。

twitter twitter twitter

1.「農地所有適格法人」とは?

「農地所有適格法人」という言葉はあまり耳慣れないと思いますが、以前は「農業生産法人」と呼ばれていました。平成28年4月1日の農地法改正により、この呼称に変更されました。農地所有適格法人は農地法で規定された呼称で、法人の形態(株式会社、農事組合法人等)を意味するものではありません。文字通り、「農地の権利を取得するための要件を満たしている」法人を指します。では、その要件について見ていきましょう。

2. 農地所有適格法人の要件

農地所有適格法人の要件は図の4つです。それぞれ、内容を詳しく見ていきましょう。

農地所有適格法人の要件

①法人形態要件

法人形態の要件

●農事組合法人(2号法人のみ)、株式会社、持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)であること
株式会社にあっては、非公開会社(発行するすべての株式について、定款で譲渡制限を定めている会社。株式を譲渡・取得する際には会社の承認が必要となる)であること。
また、農事組合法人において、農業に係る共同利用施設の設置、または農作業の共同化に関する事業のみを行う場合は法人形態の要件に当てはまりません。その理由は事業要件で解説していますが、法人の主たる事業が「農業」でなければならないためです。

②事業要件

その法人の主たる事業が農業であること
「農業」には、関連事業で農畜産物を原材料として行う、製造、加工業等を含みます。また、主たる事業が農業であるか否かは、その判断の日を含む事業年度前の直近する3か年における農業に係る売上高が、当該3か年における法人の事業全体の売上高の過半数を占めているか否かで判断されます。
個人経営から法人化する場合は新規事業者のため、上記の要件を判断する実績はありませんが、農地の許可申請を行う際の申請書類に申請(申請日の属する年度)からの3年間の農業の売上見込み額を記載することで、判断の基準になります。農業委員会によっては、売上げ見込みに関する資料の提出が求められる場合もあります。

③構成員・議決権要件

株式会社である場合は、次に掲げる者に該当する株主の有する議決権の合計が総株主の議決権の過半数を占めていなければなりません。持分会社である場合は、次に掲げる者に該当する社員の数が社員の総数の過半数を占めていなければなりません。

1.その法人に農地等について所有権若しくは使用収益権(賃貸・使用貸借による権利)を提供した個人

2.法人の行う農業に常時従事する者(※1)

3.地方公共団体

4.法人に農作業の委託を行っている個人

5.農協等

※1 判定基準は、その法人が行う農業に年間150日以上従事すること

構成員・議決権の要件は平成28年4月1日の農地法改正で緩和されました。言うなれば、上記の方の議決権の合計が総株主又は総社員数の過半数を占めていれば、それ以外は誰でもよいことになり、最近では後継者である学生や、他で就職している家族に株を持たせるケースもあります。
         

④役員要件

1.法人の常時従事者である構成員(構成員・議決権要件に合致している者)が、理事等(農事組合法人では理事、持分会社では業務を執行する社員、株式会社では取締役)の数の過半数を占めていること。

2.法人の理事等又は使用人(いずれも常時従事者に限る)のうち、一人以上の者がその法人の行う農業に必要な農作業に年間60日以上従事すると認められる者であること。
農作業は農地での耕作等の作業や酪農業であれば、搾乳作業や飼育作業等が該当し、事務作業や管理、営業等は除かれます。この要件も平成28年4月1日の農地法改正で要件が緩和された部分です。

要件の審査および報告の義務

農地の権利設定又は移転等の許可申請が上がった際は、農地等の所在地を管轄する農業委員会が、「農地所有適格法人の要件」に合致しているか審査をします。また、無事に許可を受けることができ、農地等の権利を有することとなった法人は、その農地等の所在地を管轄する農業委員会に毎事業年度の終了後3ヵ月以内に報告書を提出する必要があります。
せっかく農地所有の権利を得たとしても、要件について不正手段による許可取得であったり、定期報告を怠ったり、虚偽の報告をした者については、罰金等の罰則が農地法で定められています。また要件を欠くおそれがある場合には、まずは農業委員会による調査で要件確認が行われます。それでもなお確認が必要な場合は、農業委員会が法人事務所等へ立入調査を行うことが定められています。
なお、農地所有適格法人として認められると以下のメリットがあります。詳しく知りたい方は農林水産省や国税庁のホームページにてご確認ください。

◆農地所有適格法人の税務上のメリット
1. 農業経営基盤強化準備金の活用ができる
2. 肉用牛売却所得の課税特例措置が受けられる
3. 農事組合法人で農業の法人事業税非課税の適用が受けられる

以上、農地所有適格法人について解説をさせていただきました。個人経営から法人化する場合も、述べてきた4つの要件を満たした法人の設立をした上で、個人所有農地を法人へ権利設定する許可申請をしなければなりません。詳細については、所轄する農業委員会へ確認をお勧めします。
 

【さらに詳しく知りたい方にオススメ!】
今だけ無料で農業経営に役立つコンテンツを利用できます!
詳しくはこちらをご覧下さい。⇒スグスク
 

【明日を拓く農業経営】シリーズはコチラ

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

関連記事

タイアップ企画

公式SNS

「個人情報の取り扱いについて」の同意

2023年4月3日に「個人情報の取り扱いについて」が改訂されました。
マイナビ農業をご利用いただくには「個人情報の取り扱いについて」の内容をご確認いただき、同意いただく必要がございます。

■変更内容
個人情報の利用目的の以下の項目を追加
(7)行動履歴を会員情報と紐づけて分析した上で以下に活用。

内容に同意してサービスを利用する