土の中で暮らすモグラの生態と特徴
モグラは土の中で生活しているため、普段はあまり見かけません。そのため、一般の人がモグラの生態について知る機会も少ないでしょう。
モグラの外見的特徴として、体はずんぐりとした胴体を持ち、濃い褐色か黒褐色の細かい毛で覆われ、手足と鼻はピンク色をしているものが多いです。しっぽは短い棒状。
土の中で生活するため前足が大きく発達し、土をかき分けやすいようにシャベル状の鋭い爪が生えています。この前足は横を向いているため、地上ではあまりうまく扱えません。
地中深さ30センチから1メートルのあたりにトンネルや穴を掘って、一生のほとんどを土の中で過ごします。そのため、モグラは冬でも冬眠せず、深いところで活動し餌を探し続けます。
目はありますが退化して小さく視力はほとんどありません。鼻の「アイマー器官」という振動をキャッチする感覚器官や嗅覚を使って、主食である地中のミミズやコガネムシの幼虫、カエルなどの餌を探し出します。聴覚・臭覚が発達していて、音と臭いに敏感です。
モグラは”光に弱い”といわれますが、実際は昼間でも地上で行動できます。また泳ぎが得意で水辺を泳いで移動もできます。しかしながら、モグラは体が何かに触れていないと落ち着かない習性があるため、パニックになり餌を探せず死ぬことがあるようです。
日本に生息するモグラの主な種類について
北海道を除く日本全域に生息しているモグラですが、東日本と西日本では生息している個体の種類が違います。
日本に生息するモグラは下記の通り、モグラ亜科6種類とヒミズ亜科2種類の合計8種類いるといわれています。害獣として知られているモグラでも、実は「絶滅危惧種」に分類される個体もいるのです。
種類 | 生息地域 | 特徴 |
アズマモグラ | 主に東日本に分布する日本固有種。
静岡県・長野県など本州中部地域周辺を中心に生息する。 |
体長12~16cm、体重50~130g、尾長2cm程度
絶滅危惧I類(大阪府) 絶滅危惧II類(愛知県) 準絶滅危惧(京都府・鳥取県・広島県・香川県) |
コウベモグラ | 本州(中部以南)・対馬・種子島・屋久島など、アジア大陸にも分布。
主に水田地帯や草地に多く生息する。 |
体長13~19cm、体重50~180g
西日本を主な生息域にしている大型のモグラ。 1つのトンネルを縄張りにして生活をする。 |
サドモグラ | 日本(佐渡島)固有種。
平野部の農耕地や水田付近、湿潤で土壌が深い環境を好む。 |
体長15~17cm、体重95~135g
準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト) |
エチゴモグラ | 日本(新潟県)固有種。
新潟県の新発田、五泉、新津、加茂、三条、弥彦を結ぶ線から西北側の平野に生息する。 |
体長16~18cm、体重110~160g、尾長約3cm
かつてはサドモグラの亜種とする説もあったが、携帯的に大型で染色体核形が分化していることがわかり、現在では別種とされる。 |
センカクモグラ | 日本(尖閣諸島魚釣島)固有種。 | 体長13cm、体重43g
絶滅危惧IA類 (CR)(環境省レッドリスト) 1976年に魚釣島の海岸近くの草地で採集されたメス1個体の標本があるのみで詳細は不明の幻のモグラ。 |
ミズラモグラ | 本州の青森県から広島県にかけて分布する日本固有種。
低山帯から高山帯までの森林に生息しているが、生息数はあまり多くない。 |
体長9cm前後、体重26~35.5g
準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト) |
ヒミズ | 本州、四国、九州とその周辺の島に広く分布する日本固有種。
低山帯の森林や草原の落ち葉の下に生息する。 |
体長9cm前後、体重15~26g
いわゆるモグラに比べると小型で、長い尾をもつ。 |
ヒメヒミズ | 本州、四国、九州に分布する日本固有種。山地帯上部〜亜高山帯下部の草地や落葉広葉樹林内の地中に生息する。 | 体長約7~8cm、体重8〜15g
非常に小型のモグラで、口先は非常に細長い。 尾の長さが体長の半分程度。 |
モグラによる被害。厄介すぎる「穴」にご用心!
モグラは完全な肉食動物であるため、農作物が直接食べられる被害はありません。
しかし、餌をとるために農地に「トンネル」や「穴」を掘られると、野菜の根が切られてしおれたり、苗が倒されたりするなどの農作物への被害が生じます。
また、モグラは畑の土壌にとって強い味方の益虫・ミミズを餌とします。ミミズは、ダンゴムシや微生物など他の土壌生物達と協力して、畑の表層にある枯れ葉・枯れ草や堆肥、虫の排せつ物や死骸などを食べて体内で分解し、肥沃な土壌へと変えていきます。そんなミミズが食べられると…畑は深刻なダメージを受けてしまうでしょう。
もちろん畑だけでなく、庭や運動場・ゴルフ場などの芝生がモグラ塚で荒らされる被害も。
モグラの掘ったトンネルや穴からネズミが入り込み、農作物を食べてしまうなどの間接的な被害もあり、水田では掘られた穴による水の流出や畦(あぜ)の崩壊などの恐れもあります。
特に、良質な農作物を育てるため畑や田んぼの土づくりを大切にしている農家にとって、モグラは厄介な存在です。
モグラ対策を行う前に!モグラの巣について
モグラ退治を開始する前に、まずは「巣の構成」と「巣を作る場所」を把握しておくことが大切です。巣の特徴を理解しておくことで、効率良くモグラを退治できるはずです。
また、モグラの巣を見つける必要があります。モグラは地面の中にいるため見つけ方にもコツがあります。それぞれ解説していきます。
巣の構成と巣を作る場所
モグラの巣は直線の穴ではなく、アリの巣のように部屋があり、部屋ごとに役割があります。例えば「餌を捕る場所」「餌を蓄える場所」「侵入者から身を隠す場所」「休憩すす場所」など、複数の部屋を作り巣を構成しています。
これらの部屋(巣)を繋ぐトンネルを本道(本管)、それ以外で餌を捕るために掘ったトンネルを支道(支管)と呼びます。本道は1日に何度も行き来しますが、支道はめったに使用せず一度きりの使用で終わることも。
そしてモグラは、雨をしのぐため木の根や小高い丘の下などを中心に巣を作ります。また畑などで見られるとしたら、田畑の畦や畝、塀などの障害物に沿った場所に巣を作る可能性も高いです。
次に、モグラの巣(トンネル)を見つける方法をご紹介します。
⑴モグラ塚(土が盛り上がった場所)を探す
モグラが地中を掘りながらエサを探す際や巣をつくる際、土を地上に押し上げることで「モグラ塚」と呼ばれる盛り土ができます。モグラの存在を認知するためにも、まずはこの「モグラ塚」を見つけるとよいでしょう。
⑵地面の盛り上がりを探す
モグラが地中を移動する際、地面が少し盛り上がった形または又はひびが入った状態になる場合があります。
⑶本道と支道を特定する
モグラ対策を行うため、モグラの巣(トンネル)が頻繁に通る道(本道)か、めったに通らない道(支道)なのかを見分ける必要があります。
モグラが頻繁に通る本道を見つければ、ピンポイントで対策を講じることができるからです。
本道と支道の見分け方は、農地や芝生に掘られた穴があれば埋め、上記のような盛り上がりを平らに整えてから、板(一辺が50センチ以上で厚さ1センチほど。古いコンクリートパネルなど)を地面に密着させて数メートル間隔に10枚ほど置き様子を見てください。翌日、板の下にトンネルが復活していた場合は、再度平らに整えて板を置き直します。
3日連続でトンネルが復活していたら、そこは本道である可能性が高く、変化のないままであればめったに通らない支道である可能性が高いです。
標的は土の中、モグラ退治の方法とは?
モグラが頻繁に活動する場所を見つけ、モグラの特徴を理解すれば、自力でモグラ退治ができます。以下の方法を試してみてください。
モグラの嫌いな臭いで対策する
モグラは嗅覚が発達しており、それを逆手に取った対策が、臭いを発する忌避剤を使ったものです。忌避剤はよく出没する場所に置くタイプの商品や直接吹きかけるスプレータイプ、モグラが堀った穴の中に入れる錠剤タイプなどがあります。
置くタイプの忌避剤は追い出したいエリアの端から2メートルおきに直線状に置き、続けて2メートルおきに平行して置くのが効果的(使用方法に異なります)とされ、錠剤タイプは、本道などモグラがよく出没する場所にまくと効果的ですが、土壌への影響が懸念されるため農地での使用には注意が必要です。
モグラの嫌いな音波振動で追い払う
音波振動発生装置は、聴覚が優れているモグラの特性を利用して、振動と音でモグラにストレスを与え、芝生・畑等からモグラを追い払う撃退機器です。利点として、薬剤を使わないため、農作物や環境への影響を気にせずにモグラ退治ができます。
設置方法はとても簡単、モグラの通り道(本道)に穴をあけて、その本道を垂直に貫通するよう発生装置を埋め込んでください。
一定振動タイプとランダム振動タイプがありますが、ランダムはいつ振動するかわからないため、モグラが慣れにくく効果的です。
またソーラー式と電池式があります。ソーラー式であれば日当たりが良い場所でのソーラー充電によって、経済的に使用することができます。
注意点として、設置当初は音波振動を受けたモグラが逃げ場を探すため、活動が活発になります。設置場所の土質や土中の障害物によって、効果が出にくい場合もあります。
万が一被害が続く場合は、設置場所の変更や機器の増設、他の対策と併用してみてください。
罠を使ってモグラを捕獲する
モグラが頻繁に通る本道に筒型の捕獲器をセットすると、かなりの確率で捕獲することができます。さらに捕獲器の中に餌となるミミズを入れておくと、より捕獲しやすくなります。モグラは匂いに敏感なので、捕獲器設置の際は必ず手袋をして、捕獲器を土にこすり付けて設置しましょう。
捕獲が済んだら耕運・うね立てを行い、素早くしっかりとした根を張らせます。また、モグラの餌となるミミズが集まりにくいスーパーセル苗を使用するのも良いでしょう。
モグラのなかには、絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されている種や都道府県によって希少鳥獣に指定されている種類が存在します。生きた状態で捕獲した場合は、すぐに離れた場所(自然)へ返してあげてください。
ただし「鳥獣保護法」によって、一般の方は無許可でモグラを捕獲したり、駆除することは法律で禁止されています。違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科せられます。個人で捕獲・駆除するには、お住まいの自治体などから許可を得る必要があります。
また、捕獲の許可が下りるまでは、約1週間ほどかかることがあります。
前述した通り、基本的にモグラ退治は畑や庭から追い出して、侵入対策をするのが個人で簡単にできる対策になります。
まとめ
モグラの知られざる生態やモグラの巣事情、自分でできる効果的な退治方法などについて詳しくご紹介しました。
キャラクターとして見るモグラは可愛らしいものですが、本物のモグラは農家からはかなり困った存在になっています。
捕獲許可を取るには時間も手間もかかるため、まずはモグラの追い出しを最優先にして対策してみてください。特に植え付け前の予防などをしっかりして、農地や庭をトンネルや穴で荒らされないように心がけましょう。
もし自分では難しいと感じた場合には、モグラ被害が大きくなる前に専門駆除業者に依頼するのもおすすめです。
害獣駆除110番なら、見積や相談、出張費も無料となっております。モグラ被害にお困りであれば、まずはご相談してみてはいかがでしょうか。
参考
農作物鳥獣害対策指導指針 第6章 本県で問題となっている鳥獣害(PDF):奈良県