野生のウサギの生態とは?

ペットで飼われるアナウサギとの違いは短めの耳と長めの足
ウサギが農作物を荒らすことをご存じでしょうか。実は、通常ペットとして飼われているウサギ(アナウサギ)以外に、日本には野生のウサギ(ノウサギ)が本州、四国、九州およびその周辺の島々に生息しています。農作物や森林に被害を与えているウサギは、このノウサギのことを指します。
ノウサギの耳は少し短めで、野山を駆け巡るため後ろ足が発達しています。毛色は基本的には茶褐色で、雪深い地域では冬になると白い毛色に変わります。山林や草原をすみかとし、夜行性で草食。アナウサギのように巣穴は作らず、一定の行動範囲内を移動しながら単独で生活しているのが特徴です。見た目や体格はもちろん、その生態も飼いウサギとはかなり異なります。
被害額は6200万円! 意外とあなどれない可愛い天敵
農林水産省の調べによると、2017年度のウサギによる農作物への被害総額は、何と6200万円。可愛らしい小動物の仕業にしては、決して可愛いものではありません。農作物への被害状況としては、キャベツ、豆類などの露地野菜や果樹への食害が発生しており、多くの農家を悩ませています。
農業同様に林業への被害も深刻で、ヒノキやスギなどの若木の枝葉、樹皮への食害が林野庁から報告されています。特に被害にあった若木は、幹の切断などにより木の成長を著しく妨げられ、林業にとって大きな打撃となります。林業地域の食害だけでなく、天然の林の劣化など生体系への影響も懸念されています。
場所によっては準絶滅危惧種、その被害対策とは?
ノウサギは、自治体によっては準絶滅危惧種などに指定されている場合があります。そのことを踏まえた上で、農地に近づけない、侵入させないという防止対策を取り、最終手段として捕獲対策に取り組みます。
まずは農地に寄せ付けないよう、周辺の草刈りや餌となりそうな果実や野菜くずの処理をして環境整備を行います。侵入防止対策としては、金網柵やネットを使用。ウサギのジャンプ力を考慮して高さは1.2メートル以上、網目は2〜3センチのものを使用し、地際からの侵入を防ぐため、5センチほど埋めて設置するのがよいでしょう。
捕獲にあたっては、“くくりわな”が適しています。農地周辺では獣道にわなを仕掛け、くくりわなの場合は石や倒木などを障害物として利用し、ウサギが足を置く場所を作って誘導します。狙われやすい若木の近くの成木に、くくりわなを設置すると捕獲効果があります。
野生のウサギに手を焼いているのは日本だけではありません。ニュージーランドやスコットランドでは大規模なウサギ対策がとられているそうです。ピョンピョン跳ねる姿や見た目は可愛いけれど、被害に遭った農家にとっては憎き害獣です。「二兎を追う者は一兎をも得ず」のことわざ通り、地道かつ確実に対処していきましょう。
次回も農家にとっての憎らしい天敵、意外な害獣をご紹介します。
参考
全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(平成29年):農林水産省
中型鳥獣の侵入防止対策と捕獲:愛媛県
野生鳥獣による森林被害:林野庁
上記の情報は2018年11月13日現在のものです。