実はシカではない、カモシカの生態とは?
東日本に多く分布するカモシカ(ニホンカモシカ)は、実はウシ科の動物で、シカ科のニホンジカなどとは生態が異なります。体の色は黒褐色または灰褐色が多く、オス、メスともに12~15センチくらいの角が生えていて、雌雄に外見の違いはほとんどありません。
群れで行動するシカと違い、カモシカは単独での行動が多く、4頭以上の群れを作ることはほとんどありません。オス、メスともに縄張りを持ち、子育て中のほぼ一年間は母親と子どもが一緒に行動します。低山帯から亜高山帯の山間部に生息し、草や葉を食べて生活するカモシカですが、近年は農地周辺にも現れ、農業被害が発生しています。
被害はピーク時に比べ大きく減少。しかし要注意!
カモシカによる被害と言えば、昔は林業被害が代表格でした。1975年頃から幼齢木の枝葉が食べられるなどの被害が増え、1980年頃にピークを迎えたものの、その後は大きく減少していきました。しかし、1990年頃からはカモシカの生息域の拡大に伴い、農業被害が発生するようになります。
カモシカの農業被害は、主に野菜類やイモ類(ツルや葉)、豆類、稲などへの食害です。林業被害同様にピーク時からは減少傾向にありますが、2017年度のカモシカによる被害金額はなんと1億5800万円。獣類による農業被害のトップ10に入るほどの金額です(※)。
※ 全国の野生鳥獣による農作物被害状況(平成29年度)(PDF):農林水産省
まずは追い払い! その被害対策とは
カモシカが農地周辺に現れたら、まずはしつこく追い払いましょう。威嚇をして、そこが餌場であると覚えさせないことが極めて重要です。カモシカは国の特別天然記念物なので、傷つけないように配慮をしながら、泥を投げたり、ロケット花火を発射したりして追い払います。
コストや手間はかかりますが、金網、ネット、電気柵などの防護柵の設置は全国的に行われている対策法で、ほとんどの場合はこの方法でカモシカの農地への侵入を防ぐことができます。それでも被害があれば、侵入口を探して、柵の高さや隙間、電気柵の電圧などに問題がないかをチェックして、改良していくことが大事です。
前述のとおりカモシカは特別天然記念物に指定されているため、捕獲にあたっては文化庁の許可が必要です。現状、追い払いや防護柵がカモシカから農作物を守る最善の策と言えます。
かつては生息数の減少などから「幻の動物」と言われ目にする機会の少なかった特別天然記念物のカモシカが、今や農家にとってはやっかいな存在で、意外にも被害金額が大きいという事実。保護管理にも配慮しながら被害対策に取り組みたいところです。
これからも農家にとっての憎らしい天敵、アブなすぎる害獣から目が離せません。
上記の情報は2018年12月13日現在のものです。