中国地方の特徴
東西に延びる陸の中央に中国山地が走り、1700メートル超の大山(だいせん)や1200メートル超の蒜山などの名山が連なっています。この山地を挟んで、日本海側では積雪が見られる一方、瀬戸内海沿岸では温暖で降水量が少ないというように、気象条件が異なります。
全国でも有数の中山間地域で、まとまった平たんな土地を確保しづらいことなどから、農業にとっては厳しい環境となっていることも事実です。こうした中、地域の人々は中国山地が生んだ多様な気象条件を活用することで、稲作、畜産、果樹栽培など幅広いジャンルに取り組み、さまざまな作物を生産してきました。多様な土地や気象条件を活用して、夏は涼しい山間部で、冬は温暖な平野部などで安定的に農作物を生産・出荷する「リレー出荷」も多く行っています。また、大消費地に比較的近い立地条件も味方に付け、ブドウや梨などの名産物を中心に出荷を行っています。
日本海に面する鳥取県、島根県、山口県
では、各県でどのような農業が盛んなのかを見ていきましょう。鳥取県と言えば、日本海に面する「鳥取砂丘」を思い浮かべる人も多いかもしれません。県東中部の鳥取砂丘ではラッキョウ、県西部の弓浜砂丘地帯では白ネギなど、砂丘地帯では野菜が多く生産されています。中山間地域では、傾斜地や丘陵地で梨などの果樹を生産。2017年産の日本梨なし収穫量では全国で5位にランクインしています。中心となっている「二十世紀」のほか、「なつひめ」「新甘泉」「王秋」などの県オリジナル品種も栽培されています。
西南部の大山山麓地域では酪農が盛ん。東部、中部、西部にはそれぞれ、千代川、天神川、日野川の三大河川が流れ、流域は水田地帯となっています。
島根県は、東西に長く広がり、標高差のある地形が特徴です。このため島根県でも中国地方で多く見られるリレー出荷が活用されており、夏涼しい山間部と冬温暖な平たん部を利用することで、年間を通してキャベツなどの野菜を安定的に出荷しています。
代表的な名産品には「島根ぶどう」があります。県のブドウ栽培の歴史は江戸時代にまでさかのぼり、種なしブドウの代表品種「デラウェア」が4月中旬から7月下旬まで市場に出回ります。一本のツルに果実を一つだけ残して丁寧に育む「島根メロン」も人気です。
三方が海に面し、全体的に温暖な気候である山口県。毛利藩時代に米、塩、紙の生産を進める「三白(さんぱく)政策」が始まったことをきっかけに干拓や棚田の開発が進み、米どころとなりました。瀬戸内側では温州みかんが、中山間地域では梨、ブドウ、桃、栗、リンゴなどが育ちます。
県南西部の宇部市小野地区はお茶の名産地。その濃厚な味わいと豊かな香りに定評があります。
また、山口県は岸根栗や夏みかん、カボスやスダチの仲間である「長門ゆずきち」の原産地であり、オリジナル柑橘(かんきつ)「ゆめほっぺ」の栽培にも力を入れています。
瀬戸内海に面する岡山県、広島県
瀬戸内海に面し、瀬戸大橋を有する岡山県は、古くから中国・四国地方をつなぐ交通の要衝として重んじられてきました。県北部には中国山地と盆地が広がり、県中部では吉備高原をはじめとする丘陵地が続き、県南部には平野が広がっています。温暖な県南部に対して、県北部の山地付近では冬に積雪が見られます。
岡山県はブドウや桃の名産地です。中でも、温暖で日照量が多い、降水量が少ないといった気候を生かして栽培している「マスカット・オブ・アレクサンドリア」「ピオーネ」のブドウ2種、「清水白桃」などが有名です。最近では、皮ごと食べられる「シャインマスカット」の生産量も拡大しています。
たくさんの小さな島々を抱える広島県では、同県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ全長約70キロメートル(一般道含む)の「しまなみ海道」が人気の観光スポット。県の中央部には霧の名所「三次(みよし)盆地」、瀬戸内海側の南部には平野部が広がります。
しまなみ街道の島々では、温暖な気候を利用した柑橘類の栽培が盛んです。中でもレモンは「広島レモン」と呼ばれ全国一の生産県となっており、現在は防腐剤を使用せず皮ごと安心して食べられるブランドレモン「赤秀(あかしゅう)」などの生産が勢いを増しています。
今回は中国地方の農業をご紹介しました。傾斜のある山間部、平野部など各地が地形を生かしてさまざまなブランド農作物の生産に取り組んでいます。みなさんが普段、デザートとして食べているフルーツも中国地方産かもしれませんね。
※ 生産量・産出額はいずれも2017年、農林水産省調べ。
参考
地域の農業:中国四国農政局
鳥取県農林水産業の概要(PDF):鳥取県
県内で栽培されている主要野菜の紹介:島根県
やまぐちQ&A 産業ほか:山口県
岡山ってどんなところ?:岡山県
瀬戸内しまなみ街道:広島県