ロボットトラクター、価格は約1300万円
同社が発表したロボットトラクター「TJV655R」は、出力65馬力。人間が監視する状況で、衛星利用測位システム(GPS)や地上に設置した基地局を利用した自動運転が可能です。30アールから1ヘクタールの圃場での利用を想定し、1人が有人・無人2台のトラクターを同時に動かすことで、1ヘクタールあたりの作業能率が約1.5倍になるそうです。農業の大規模化や熟練技術を持つ人材の不足に対応し、作業の効率化を図ります。
農業機械の自動走行に関する国のガイドラインに準拠しており、圃場を運転して外周の4地点を記憶させ作業範囲を指定すると、外周2週分の枕地を残した範囲で往復耕と1行程の周り耕による自動運転ができます。GPSの精度を圃場の基地局で補完し、精度の誤差を2~3センチメートルに収めています。
同機はタブレットとリモコンを装備し、基本設定はタブレットで、運転の開始・停止と緊急時の操作はリモコンで行います。トラクターの機体に4か所設置されたカメラの画像をタブレットで見ることもできます。作業中、機体の異常や衛星情報のロストを検出した場合、人や物の接近をセンサーで検出した場合は、灯火と音で異常を知らせ、自動作業を停止します。
今回はモニター販売の位置づけで、一年間で10台の販売を目指しているとのことです。
費用対効果を明確化し、本格販売へ
無人運転ができるトラクターは、17年からクボタやヤンマーが相次いで発売しています。
井関農機はこれまで、土壌センサーにより施肥量を自動調整できる土壌センサー搭載型可変施肥田植え機や収量センサー付きコンバイン、直進アシストシステム搭載田植え機といった「スマート農機」を投入。データと先端技術により農業を効率化する技術開発を進めてきました。自動運転が可能な農機の発売は今回が初めてです。
同社は、「日本の農業は農地集約による大規模化や稲作の畑作への転換など大きな変革期を迎えている。今後も、データと先端技術の活用によりさらに生産性の向上を図るニーズが高まる。ロボットトラクターは、大規模化によるオペレーターの疲労軽減と不慣れなオペレーターの技能習熟にかけるコストを省力化できる」とし、モニター販売で導入による費用対効果などを明示化し、本格販売につなげていく考えを示しました。
価格抑えたトラクター、130馬力のコンバインも
12日の発表会では、ロボットトラクターに加え新商品も発表されました。以下に一部を紹介します。
シンプルで価格を抑えた60 馬力トラクター「ジアスNT603E」
大規模農家の生産コスト削減の動きに対応。シンプル化した装備の一部はオプションとして追加装備が可能とのこと。
130馬力のコンバイン「ジャパンHJシリーズ」
大規模稲作農家向けコンバインです。作業速を2.05m/sにアップしたほか、負荷のかかるパーツの耐摩耗性と防錆性を向上させることで、耐久性も高めています。
簡単に操作できる小型コンバイン「フロンティアHVZシリーズ」
農業従事者の高齢化、担い手の多様化にも対応。小型で動作がわかりやすく、収穫効率の良いコンバイン。エンジン緊急停止時スイッチを押すとエンジンが停止し、さらに脱穀運転時にはこぎ胴カバーが自動で開くなど、安全性も向上しているそうです。
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