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年間500人が会いに来る! 銚子アフロ農家の魅力を伝えるブランディング術

年間500人が会いに来る! 銚子アフロ農家の魅力を伝えるブランディング術

観光農園ではないのに年間約500人が訪れる農家が、千葉県銚子市にあります。主力商品のトウモロコシとキャベツをブランド化し、特に「アフロコーン」は都内のスーパーで一日300本売れる人気ぶり。「価格競争に陥らない農業」と「農業を通した銚子の活性化」を目指し奮闘するヘネリーファームの坂尾英彦さんを支えるのは、元DJ・輸入業という経歴を持ち農家の12代目として家業を継いだからこそ磨かれたブランディング術でした。

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12代目の農家、「アフロ」コーンとキャベツでブランド化

ヘネリーファームは千葉県銚子市にある計4ヘクタールの畑で、温暖な気候を生かした3毛作を行い、冬と春のキャベツ、夏はトウモロコシを中心に栽培しています。12代目の坂尾英彦さんが両親と妻の麻美さんと共に経営しています。

銚子市の主な作物でもあるキャベツは、住宅地に点在する多くの畑で栽培されています。なかでも、ヘネリーファームのある海沿いの地域は土に含まれる豊富なミネラル分が作物の甘みを増しているといわれてきました。へネリーファームでは、農園でとれるキャベツと生でも食べれるトウモロコシを、それぞれ「アフロキャベツ」「アフロコーン」とブランド化。加工品も開発し、数年前から直接取引による販路を広げています。特に生のアフロコーンは東京・世田谷のスーパーで一日に300本売れた人気商品です。

さらに、ヘネリーファームが際立っているのは、その訪問者数の多さ。約1年前から「収穫体験」などを受け入れ始めたところ、ほぼ口コミで企業の研修や海の見えるキャベツ畑でのヨガ教室、キャベツの収穫体験ができるサイクリングツアー、ドローンの畑撮影などと企画の話が持ち込まれ、1年あまりで約500人が畑を訪問。様々な異業種とコラボして、農業そのものや銚子の魅力を伝えています。

農業での利用を模索しながら畑や農業体験の空撮もおこなっている

テレビや新聞などでも取り上げられ、その風貌や企画の斬新さが取り上げられることも多い坂尾さんですが、「アフロブランド」の知名度向上を支えているのは元DJ・輸入業という経歴で鍛えた堅実なブランディング術とも言えます。

輸入販売業で磨いた「オリジナル」の作り方

高校卒業後、大量の作物をただただ生産する「作業」のように見えた農業に魅力を感じられず、東京で2年間DJを経験。アメリカ文化へのあこがれから、その後はアメリカで音楽レコードや洋服を仕入れては、インターネットを通じて販売する仕事を始めました。結婚後、妻も子供服の輸入販売を始め、夫婦で輸入業を拡大してきましたが、子供ができたころから家業の農業に魅力を感じるようになったといいます。

大好評だった、「海の見えるキャベツ畑」でのファームヨガ(坂尾さん提供)

「10年ほど輸入業をしました。最初は魅力的な商品を選んでくれば売れていましたが、次第に競合が増え『売上はあるのになぜか手元にお金は残らない』という価格競争に陥っていました。自分のオリジナルでできることはないかと考えたとき、生産から販売までを自分でできる農業はまさにオリジナル!その時初めて、農業って面白いかもと思えたんです」。

そんな坂尾さんが取り組むのは、まさに「価格競争に陥らない農業」。作物の高い品質を具体化することで差別化し、商品の価値を認めてくれる取引先の選択と加工品の販売で、年間を通した収入の安定を図っています。

素材の良さ、きちんと伝えて差別化 自分らしさ伝える工夫も

銚子産のキャベツは甘さとみずみずしさ、豊富なうまみが特徴。坂尾さんは、これを「海が近いために土壌のミネラル分が豊富なのでは」と考え、専門機関に成分分析を依頼。文部科学省発表の食品成分データベースと比べ2.5倍にもなるカルシウムを始め多くのミネラル分を含むという結果が出ました。現在では「芯まで甘いアフロキャベツ」の特徴として、この成分分析表を表示して品質の高さを説明しています。

芯まで甘いアフロキャベツ。柔らかくてみずみずしい

また、アフロコーンも、20度近くになる糖度を保つため、立てた状態で発泡スチロールの箱に氷詰めにして出荷するなど、鮮度の維持にこだわります。

加えて、収穫体験などを通して多くの人を受け入れるのは、実際に畑を見てもらうことで栽培している環境を知ってもらいたいから。
「この辺りには何十軒も農家がありますが、育て方は様々。うちはたい肥にこだわりがあって、そういったことも案内して説明します。また、海沿いのこの辺りは銚子の中でも特に温かく恵まれた環境だということも、実際に来て肌で感じてもらえたら嬉しい」。

麻美さんが考案した「キャンディーラッピング」(坂尾さん提供)

キャベツやトウモロコシという大衆的ともいえる野菜を、さらに魅力的に演出する工夫もこらしています。農業体験を、アフロのカツラをかぶって行うのも工夫の一つ。農業の敷居を下げて、「作業」ではなく「楽しいこと」に農業のイメージを変える試みです。麻美さんが子供服販売時のギフトラッピングの経験を活かして考案したキャベツの「キャンディーラッピング」も、見た目がかわいらしいだけでなくキャベツを手軽に持ち運べるようにもなるすぐれもの。収穫体験と合わせて参加者に体験してもらっています。

また、作物そのものの価値を伝えられるよう、加工品の開発にも工夫を凝らします。例えば、トウモロコシを調味なしで乾燥させた「カリッとアフロコーン」は収穫後すぐの糖度20度近いトウモロコシの味をそのまま味わえる逸品。また、キャベツを木樽で乳酸発酵させた漬物「アフロきゃべつ てうし木樽漬け」は塩のみの味付けで、食感を大切に昔ながらの製法で作っているそうです。「加工品も素材の良さを表現できることが基本。あくまでも銚子に来て、生のキャベツやトウモロコシを味わってみたくなってほしいんです」と坂尾さんは話します。

おつまみとしても人気があるという「カリッとアフロコーン」(坂尾さん提供)

農業を通して地元を盛り上げる! 様々なプロジェクトが進行中

テレビ出演などで一躍有名になった坂尾さんが、現在力を入れるのが農業を通じた銚子の活性化。観光客の減少、少子高齢化に悩む銚子市ですが、「収穫体験に来る人を案内することで、美しい景色や人情味のある商店街など、いままで意識していなかった銚子の魅力を今更ながら発見しました」と坂尾さんは話します。

アフロのカツラをかぶる収穫体験は、わいわい楽しくメンバーの一体感を高めると評判だとか(坂尾さん提供)

10年以上前に初めて行った憧れのニューヨークで、街の勢いに魅了された経験のある坂尾さん。実際に訪れないとわからない魅力が地域ごとにあるといいます。
鉄道会社とタッグを組む農業体験や農泊の構想など、2019年も他業種とのコラボして銚子に人を呼び込む複数のプロジェクトが進行中です。「農業は、特に家族経営だったりすると閉鎖的になりがち。様々な業種の人が協力して地域を盛り上げることで、きっと農業も、銚子の街も新たな魅力を発信できると信じています」。

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