葉物を混植した“鍋畑”の場合
2種類の土を使って栽培
秋に葉物野菜の種をまいたプランターが2つあります。 植えたのはミズナ、コマツナ、シュンギクの3 種類で、ウチのベランダ界隈では“鍋畑”と呼んでいます。この2つの鍋畑にはそれぞれ違う培養土を使いました。
Aのプランターに使った土は、見た目には特別変わったところのない培養土。袋の表書きに「有機」という言葉がありましたが、裏をよく読むと化成肥料が含まれているとのこと。
一方、Bの培養土は、2〜3ミリの粒状の欠片や細かなバーミキュライトなどが混ざった重みのある土。裏書きには「腐植酸(微生物のエサになるもの)配合の有機物入り」と書かれていました。
ネットの書き込みなどを見ると、どちらも割と評判がいい培養土のようですが、今回の鍋畑の成長経過には大きな違いが見られました。
育つスピードに明らかな差
種をまいたのは10月の後半に入ってからです。その後、本葉が出始めた頃まではさほど大きな違いはなかったのですが、その後徐々に育つスピードに差が出てきて、一ヶ月後の記録ではAの方が明らかに大きくなっているのがわかります。

播種から18日目のA(左)とB(右)

播種から44日目のA(左)とB(右)
さすがにこれには何か理由があるのではないかと考えて“そーやん師匠”こと橋口創也さんに訊ねてみました。
違いが出た理由は?
育ちが遅いときはどうする?
ここでは“栄養分”などと雑な聞き方をしていますが、「農業も化学だ! 野菜づくりの3大栄養素【畑は小さな大自然vol.24】」にもあるように、野菜が育つのに必要な栄養素は「チッソ」「リン」「カリウム」の主に3つ。どれも野菜の成長に必要な栄養素ですが、特にチッソは葉を大きくし茎を太くする働きがあるそう。
Bの土に含まれる成分の構成比までは分かりませんが、購入したばかりで、どんな野菜にも使える培養土なので、チッソが極端に少なかったとは考えにくい。だとしたら、冬場で地温が低く微生物が活動しにくい状況だったことが今回の育ち方の違いに大きく関係していそうです。
どうしたものかと迷いましたが、この時点ですでに播種から1カ月半が経過しています。このままでは収穫に至るまでに大変な時間がかかりそうなので、Bの方には60日目ごろと75日目ごろに化成肥料を足しました。効果があったのか、その後は少し成長が上向いたような気がします。

播種から86日目のA(左)とB(右)
葉物の切れ端を植えた“リボベジ畑”の場合
コマツナ、チンゲンサイ、ネギが元気に再生中!
また、リボベジ(再生野菜)に挑戦したときに葉物野菜の切れ端を植えた、通称“リボベジ畑”にも興味深いことが起こりました。
11月の頭にコマツナ、チンゲンサイ、ネギ、ミズナの切れ端を植えました。使ったのは購入したばかりの培養土です。ミズナは根が生えずに間も無くダメになったのですが、他の3つは根が出てゆるゆると再生。特にコマツナは大きな葉が育ってきました。
その葉の色がずいぶん濃いのです。

リボベジ畑で再生したコマツナの葉

購入時のコマツナ(右から2番目)
スーパーで買ってきたときの葉の色も特別薄いということはありませんでしたが、そのときよりずっと色が深い。一般的に野菜を選ぶ基準として、葉物野菜は葉の色が濃くて肉厚なものがいいとも言われています。ならば、これこそまさに買ってきたばかりの培養土だからこそできた“栄養豊富”なコマツナなのではないか……!?
そう鼻息を荒くしたところで、再びそーやん師匠に突撃です。
葉の色が濃くなる理由は?
「土」と「栄養素」と「育ち」考える契機に
つまり、葉物の色の違いにはチッソ分の多寡が大きく関わっており、多すぎても少なすぎても良くないということのよう。もちろん、よく育つためにはリンやカリウムなど他の栄養素も必要で、それぞれが過不足なく吸収できることが大事。
「栄養が足りない」「栄養が豊富」などと深く考えずに日常で発言していましたが、そもそも「栄養」とは何なのか、そして良い野菜とはどんな野菜か。土と栄養素と育ちについて深く考えさせられる出来事でした。
土の世界は奥深く、一つを知るとまた一つ疑問が生まれてきて、とても知り尽くせない感じ……!野菜を育てる先には果てしなく広大な地平が開けているのを知ってしまったという気がします。
◆さて、鍋物がおいしい季節です。次回、いよいよ実食!
【関連記事はコチラ】
農業も化学だ! 野菜づくりの3大栄養素【畑は小さな大自然vol.24】
【元気な農作物育成ガイド】自家栽培で知っておきたい!肥料の基礎知識