肥料の種類
有機質肥料
有機質肥料は動物や植物を原料としており、作物が良く育つように畑の土の成分を豊かにする役割があります。
分解と吸収に数ヶ月単位と長い期間がかかることから、種苗を植えつける際の元肥(※1)向きとして知られている種類の肥料です。しかし窒素やリン酸、カリといった成分割合に偏りがあるため、単品では使用せず複数を組み合わせて使用することが良いとされています。
(※1) 元肥(もとごえ)…植え付ける前に多量に施しておく肥料のこと。
無機質肥料(化学肥料)
一方で鉱物などから化学的に合成して作られたものを無機質肥料(化学肥料)と呼ばれていて、有効成分が水溶性の化成肥料は速効性があるとされています。しかし、無機質肥料は効果の持続性に欠けており、雨が降った際に肥料が簡単に流れてしまうので、追肥(※2)に適している肥料といえます。
(※2) 追肥(ついひ)…種をまいたり移植したりした後に与える肥料。
基本的に、元肥には三つの要素を含んでいる複数の有機質肥料を使用します。栽培の過程で、株の育ちが思わしくないときは窒素肥料を、花つきが悪い時にはリン酸を、というように生育状況をよく観察し、無機質肥料を与えて補いましょう。代表的な二つの肥料を、適切に使い分けることが施肥(※3)の基本となります。
(※3) 施肥(せひ)…栽培する植物に肥料を与えること。
成分比率の確認方法
無機質肥料の種類は多岐にわたります。各種成分の割合が書かれた項目欄が、必ず肥料の入っている袋に記載されているので、購入時には必ず確認しましょう。
一般的に「7:7:7」であったり、「8:8:8」といった横並びの数字のものが利用しやすいと言われています。数字の見方は、左から窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)の順番で並んでいるものがほとんどです。また、それら数字は全重量に含まれる割合を100分比(※4)で示しています。
数字が二桁台(15:15:15)など、各成分の濃度が高い種類もありますが、初心者の方ほど、成分が多い肥料を過度に施してしまう傾向があるため、できれば農作物や植物への負担がかかりにくい、一桁台の肥料を活用するようにしてください。
(※4)100分比(百分比)…全体に対する割合を、1/100で表した数値。百分率、あるいはパーセント(%)ともいわれる。「7:7:7」の場合は肥料100グラム中に各成分が7グラムずつ含まれていることを示します。
代表的な成分と施す際の注意点
肥料の成分として代表的な窒素やリン酸、カリといった成分にはそれぞれに特徴や使い分けるポイントがあります。
窒素肥料
畑作に使われることが多い窒素肥料は「葉肥え」ともいわれ、葉や茎、株の生育を促します。生育初期には特に必要な肥料です。
リン酸
「花肥え」や「実肥え」ともいわれているリン酸肥料は、農作物や植物の生育を促し、花つきや実つきを良くしてくれるといわれています。
過剰障害は比較的起こりにくいとされていますが、施しすぎには十分に注意をしてください。過剰に与えてしまうと、キャベツであれば「根こぶ病(※5)」、ジャガイモであれば「そうか病(※6)」を発生させる原因となり、更に病害虫も寄生させやすくなります。
一方で、生育時期にリン酸が不十分になってしまうと花色があせたり、花弁の数が減ってしまい、せっかくの成長を台無しにしてしまいます。日々の観察からそのような状況に陥りそうになった時や、事前にそのような失敗をしいための対策として、リン酸の成分比が高く開花や結実効果的とされる「緩効性化成肥料(かんこうせいかせいひりょう)」という長期持続性のある肥料を積極的に使うこともポイントです。
(※5) 根こぶ病(ねこぶびょう)…根にこぶができ、吸水が阻害される病気。
(※6) そうか病…子嚢菌(しのうきん)や細菌などの感染によって起こる病気。ジャガイモや柑橘類、落花生などに発生することが多い。
カリ肥料
カリ肥料は「根肥え」といわれており、根や植物全体を丈夫にし、暑さや寒さに耐性を持った強い株に育成してくれる特長があります。
カリが不足すると、葉に影響が出て古い葉がだんだんと黄褐色になっていきます。このような症状が出現したときは、カリが不十分となっていることが多いため、定期的にあたえて補うよう注意しましょう。
農作物の生育が悪いとついつい肥料を施し過ぎてしまったり、種類も多いことから面倒に感じてしまうこともあるかと思います。各成分がバランス良く入った肥料を使用することや、多量な施肥に注意することを基本としておさえれば、肥料を施すことは難しいことではありません。
用途や生育時期に合った適正な肥料と、施肥に適切なタイミングを選んで、農作物や植物が元気に育つ土壌づくりに励んでいきましょう。
参考:『病害虫百科』(万来舎)