今の時代にあった農業スタイルを、いち早く取り入れた島根県
もともと島根県は、全国の自治体に比べて早くから就農や定住支援の充実したサポートを行っていました。例えば、国の制度では45歳以下が対象の助成金も、島根県では45歳以上の方もサポートしていたり、1年間農業体験をすることでマッチングを図ったり、「半農半X」という農業と他の仕事を両立する暮らし方にも助成金のサポートを行っています。そのため、新規就農にトライしやすく、半農半ミュージシャンや、半農半カメラマン、半農半日本酒の蔵人など、島根県に移住してユニークなライフスタイルを実現している方も多くいます。
島根県は東西に長く、平地から山間部、山沿い、海沿いまで多様な地理条件が揃っているので、野菜、フルーツ、畜産など、幅広い農業が展開されています。有機栽培の産地化も進んでおり、農地面積における有機農業の割合も全国トップクラス。「半農半X」をはじめ、バラエティに富んだ取り組みを行っているので、自分にあった就農スタイルを見つけやすいかもしれません。
そんな島根県のなかでも、H29年度は移住者数54名という過去最高を記録したのが飯南町。この町で、サラリーマンから農業の世界に飛び込んだ一人が、「中野あおぞら農園」の中野良介さんです。
飯南町には、都会にはない豊かさが溢れていました
「スコップなんて持ったこともなかったですし、DIYとかをするタイプでもないです」と明るく笑って話す中野さん。もともとは神戸で営業マンをしていましたが、30代半ばになって、この先の人生にふと疑問を抱いたようです。「このままやりたくもない仕事をして老いていくのはイヤだなって」。
「田舎で農業をしよう」と切り出したのは、スローライフに憧れがあった奥さんから。インターネットで移住先を検索していたところ、飯南町と出会いました。「他の町に比べて支援が充実していたから」と中野さんは現地を訪れ、飯南町の自然豊かなロケーションに一目ぼれ。他の候補地を訪れることなく移住を決めたようです。「今まで都会暮らしでしたから、すべてが新鮮で。冬の雪景色も大変そうだな、というよりキレイだなぁって。どこか癒しを求めていたのかもしれませんね」。
まずは2年間の農業研修からスタートした中野さん。その2年間も毎月18万円の助成金が支給されたことで、生活の不安なく農業を学べることができたといいます。研修期間を終えると、空いていたビニールハウスを運良くタダ同然で借りることができ、パプリカ・さつまいも・黒豆などを栽培する「中野あおぞら農園」をスタート。その3年後には飯南町がサポートするビニールハウスのリース制度を利用して8棟、さらに2年後には計12棟と、順調に拡大しています。
「農家さんは朝早くて大変だと思うかもしれませんが、サラリーマン時代と違って『やらされている仕事』ではないから、全然苦ではないんです。驚くほどストレスがなくなりました」と中野さん。家族との時間も持てるようになり、趣味でギターも始め、2人の娘さんも自然のなかでノビノビと過ごしています。
いい「作物」が育つ場所には、いい「人」も育っています
飯南町では、就農だけでなく、空き家活用住宅など暮らしのサポートも充実しています。中野さんも月額2万円で、庭付き一戸建ての家を借りていますが、「水漏れがする」といった要望にも町役場の担当者が細やかに応えてくれるそうです。その中心人物が飯南町・地域振興課の大江さん。ご自身も移住者ということもあって、親身に相談にのってくれると移住希望者からも信頼が寄せられています。「飯南町は、就農や定住の準備だけをして終わりではなく、町と県とJAが一丸となって毎月ミーティングしながら、『中野さんが困っていることは?』『今どんなサポートが必要か』と話しあっているんです」。
役場の担当者や、周りの農家さん、ご近所さんの「人」のぬくもりこそが、飯南町の魅力と中野さんは言います。「町長さんが気軽に話しかけてくれるなんて、神戸ではあり得ないですから。都会で子育てをしていたときは、いかに『周りから子どもを守るか』。でも飯南町では『周りと一緒に子どもを育てていく』。そこに感動しましたね」。以前は娘さんも全校生徒1000名以上のマンモス校に通っていましたが、今は1クラス10名程度。先生が一人一人を見てくれるので安心感もあるようです。
そんな子育て世代に人気の飯南町では、6泊6千円から田舎暮らしが体験できる「お試し暮らし住宅」や、農業体験、温泉入浴、しめ縄づくり体験なども無料(交通費・食費は各自負担)で体験できるプログラムも開催しています。「マイナビ就農フェスト」にも出展しているので、田舎暮らしや農業に興味がある方は、ぜひ会場を訪れてみてください。
しまね就農支援サイト(公益財団法人 しまね農業振興公社)はこちら