インバウンド観光に応える「東京アグリツーリズム」【進化する都市農業 #5】

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インバウンド観光に応える「東京アグリツーリズム」【進化する都市農業 #5】

連載企画:進化する都市農業

インバウンド観光に応える「東京アグリツーリズム」【進化する都市農業 #5】
最終更新日:2019年03月05日

「2020年に向けて、訪日外国人旅行者数2000万人の高みを目指す」と政府が観光立国日本の目標を掲げたのが2014年のこと。ところがその目標は2016年に軽々と達成、2018年には3100万人を超え市場は急拡大しています。年々拡大するインバウンド(訪日外国人旅行)市場ですが、農的なサービスの提供に関しては、特に都市農業においてはまだまだ事例も少ないのが現状です。
都市農業でも宿泊して農体験できるサービスがあれば確実に需要はあるはず。実際に私が一昨年から取り組んでいる「東京アグリツーリズム(東京食農観光)」について紹介します。

外国人留学生への日本文化体験

今年(2019年)の1月、韓国からのゲストを私たちの畑で受け入れました。泊まり、日帰りあわせて約50人の団体です。彼らは東洋大学が募集する約2週間のショートステイプログラムの参加者です。日本語を主に大学で学びつつ、実地での体験プログラムも提供されるのです。

進化する都市農業

韓国からの留学生と餅つき大会。日本人学生たちがホストとなって案内した

私たちは3日間にわたって「畑の野菜でピザづくり」「竹食器づくり」「お雑煮、餅つき大会」といった食農に関するプログラムを中心に、他にも「忍者教室」や「神社参拝」といった日本文化体験を提供しました。
この取り組みは2018年の夏からはじまり、今回で2回目です。前回は5カ国から17人が参加。当時はまだ宿泊施設も整っていなかったので、私たちNPOが運営する古民家の一角にホームステイのかたちで泊まってもらいました。
彼らをアテンドしてくれた東洋大学の国際課スタッフによると、いま世界的にこうしたショートステイプログラムが人気で、来日を希望する学生もまだまだ増えるだろうということです。ただし、課題となるのは受け入れ先です。
できれば都心では体験できない地域性のある体験を提供したいものの、地方への移動はコストもかさむ上、外国人学生の受け入れを積極的に柔軟に対応してくれる地域を探すのも容易ではありません。

都市農業でも農泊やツアーを

一般的にアグリツーリズムといって想像されるのは住宅街に囲まれた都市農地ではなく、いわゆる里山的な空間に囲まれた農村でしょう。古民家に泊まって地域の年配の方々から手仕事や田舎料理の体験を提供されるイメージが強いと思います。

進化する都市農業

まちなかの畑でナスを収穫するエジプトからのゲスト

しかし、私はこれからの日本の農業のあり方や観光のあり方を考えると、もっと多様なアグリツーリズムを開発したほうがいいと考えています。なぜならば先ほどのイメージのような体験を安定的に提供できる地域は限られていますし、その担い手となれる人材となると高齢化も進みさらに限られているからです。
逆転の発想で「都心から電車で30分の東京アグリツーリズム」をできないかと考えたのが今回の取り組みのきっかけでした。
幸いなことに私たちの農園では親子向けの体験プログラムを日常的に提供しています。また、近くの古民家を借りて食堂も開設しているため、収穫した野菜をみんなで調理するといった体験にも柔軟に対応できます。2017年の秋から、実際に外国人観光客向けにサービスをはじめた日帰り体験は次のような内容です。

駅にお迎え~地元神社で参拝~農園で動物と触れ合い、野菜を収穫、ハーブティーで休憩~古民家で収穫した野菜を使ったランチ

こういった2時間半程度の体験を英語で発信したところ、少しずつですが外国人観光客のファミリーやカップルが参加してくれるようになりました。
さらには近隣の大学の留学生グループや日本文化研究ゼミ生の受け入れもはじめ、手ごたえを感じてきたのが2018年のことでした。
そうなるとぜひやってみたいのが宿泊も含めた体験です。都市農業でも「農泊」(農山漁村滞在型旅行)ができるのではないか?とプロジェクトを立ち上げました。
しかし、宿泊施設をつくるとなるとハードルは一気にあがるのです。

住宅街の空きアパートで「農泊」

宿泊型の体験を提供するとなると一番の課題は宿泊施設の準備と営業許可、そして宿泊サービスを提供する人材です。
資金が潤沢にあれば優良物件をリフォームして、プロを雇用するという道もありますが、私たち地域団体は手弁当でいろんな事業を回しています。さらに前例もないことに大きな資金投入はなかなか勇気がいります。
しかし、今回は幸いなことに近隣農家の庭先に築50年ほどの無人のアパートがあり、さらに地元一橋大学の学生で「ゲストハウスを開設したい!」という強い思いを持ったメンバーと連携することができたのです。
農家と学生と我々NPOそれぞれが持っているものを出し合って空きアパートを改装、2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)にのっとってゲストハウスを開設しようということになりました。
開設要件を満たした改装工事や申請書類を整えながら、学生の皆さんと一緒にどんなゲストハウスにしていくのか連日話し合い、体を動かしてDIYでできることは自分たちでやりながら半年以上かけてようやく2019年1月にゲストハウス「ここたまや」を開設することができました。

進化する都市農業

築50年の木造アパートが農泊できるゲストハウスになった

都市農業ならではの地域資源をいかし、まちなかでも農泊ができるというモデルができれば、さらに都市農業の選択肢は広がるはずです。
また、宿泊施設を運営するとなると農家だけではなく民間企業も参入する余地が大きいと言えるでしょう。
次回は、都市農業に企業が参入しようと思った場合にどんなことが可能なのか? 今の段階で想定できる方法を私なりに紹介します。

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