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ライフスタイルにあわせた市民農園のいろいろな選び方【進化する都市農業 #3】

連載企画:進化する都市農業

ライフスタイルにあわせた市民農園のいろいろな選び方【進化する都市農業 #3】

30代の70%は「農作業をしてみたい」と思っている──。
東京都が2015年に実施した「都政モニターアンケート」の結果にはそんなデータが載っています。
ちなみに20代は63%、40代62.2%、50代51.4%、60歳以上46%となっており、30代をピークに年齢を重ねるほど需要は下がるものの、全体の半数以上の人が農作業に対して前向きな気持ちを持っていることが明らかになったのです。
この記事に目が留まった人もおそらく「野菜づくりに挑戦してみたい!」という気持ちを持っている、もしくはすでに始めている人がほとんどではないでしょうか?
今回は「畑のある暮らし」を実現させたい人に役立つ市民農園の選び方についてご紹介します。

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市民農園のカテゴリーいろいろ

一言で「市民農園」といっても多種多様、料金もサービス内容も異なります。
例えば私が事業をしている東京都国立市には20カ所の市民農園があります。区画数にするとおよそ900区画。
国立市は面積的には全国で4番目に小さな市ですし、人口も7万6千人程度なので、かなり市民農園が多い自治体といえるでしょう。
分類すると以下のようになります。他の地域の市民農園もこの6つのどれかにほぼ当てはまります。

分  類 名  称 開  設 運  営 区画面積 年間利用料
収穫体験、農業講座などを提供 収穫体験農園 国立市 国立市 ── 体験により異なる
高齢者向け福祉農園 区画のみ提供 市民農園 国立市 国立市 9㎡ 無 料
指導なし、農家が区画のみ提供 市民農園 農 家 農 家 15㎡ 10,000円
手ぶらでOK、アドバイザーによるサービスが充実 市民農園 農 家 企 業 8㎡ 98,400円
農家による指導付き、栽培品目は選べない 農業体験農園 農 家 農 家 20㎡ 40,000円
企業・団体向け貸し農園、会員制水田など コミュニティー農園 NPO NPO 27㎡ 60,000円

東京都国立市における市民農園の分類

国立市の農業を発信する公式ホームページ「くにたちあぐりッポ」を見てみると、菜園マップという形でさらに詳しく一覧で見ることができます。

進化する都市農業


市民農園のガイドマップを作っている自治体もある

これだけの種類があるとどれを選ぶのがいいのか迷ってしまいますが、一般的に利用料の安いところは行政や農家自らが運営者となっている場合です。しかし、種苗や道具の準備にはじまり、栽培過程で出る野菜くずも自身で持ち帰って処分する必要があったりと、基本的にはすべて自分自身でこなす必要があります。
また行政が開設する農園の場合は、自治体に属する人(市民や区民など)でなければ利用できなかったり、数年おきに抽選で利用者が選ばれる場合も多く、そうなると土づくりにじっくり取り組むなどの野菜づくりはできません。

進化する都市農業

(株)アグリメディアの「シェア畑」はアドバイザーのサポートが手厚い

その一方で、利用料は比較的高くても運営に企業が入ってサービスを拡充しているところもあります。株式会社アグリメディアの「シェア畑」はその典型で、首都圏を中心に86カ所(2018年12月時点)以上の農園を展開しています。種苗資材の用意や、栽培アドバイスなどもしてくれるということで、初心者にはこちらの方が向いていると言えるでしょう。

ライフスタイルに合わせて農ライフも無理なく

国立市の例をあげましたが、他にも「農業体験農園」が盛んな自治体として東京都練馬区があげられます。農業体験農園と市民農園は違いが分かりづらいですが、農業体験農園とは区画を貸し借りするのではなく「農家の農作業を手伝いながら定められた区画内の農産物を年間の固定額で買い取る」というサービスです。
これは都市農地の貸し借りについては難しい制限もあるため(第2回参照)そこに抵触しないように考えられた方法です。
実際には種苗資材の用意に加えて農業指導も農家自らがやってくれるため安心ですし、日程を決めて講座が開かれるので農園のコミュニティーも生まれやすいという利点があります。
ただし、作付ける野菜についは原則的に農家が指定したものに限られ、自由度は低いです。

進化する都市農業

農業体験農園では種苗・道具・資材がそろっている

公的な市民農園、商業的な市民農園、農業体験農園……それぞれの特色を大まかにでも理解したうえで、どのタイプが自分に合っているか考えてみるといいかもしれません。
しかし、最終的にちゃんと畑をやり切れるかどうかは、アクセスの良し悪しに左右されることも少なくありません。特にトマト・ナス・キュウリといった家庭菜園の定番夏野菜は、7月ぐらいになると最低1週間に1度の収穫と草取りや手入れが必要です。また大根や白菜などの冬の大物野菜を運ぶことを考えると車で通いたいところですが、駐車場まで用意している農園はなかなかありません。せめて自転車で通える距離にあるのが理想的でしょう。

これから広がるコミュニティー型の農園

ライフスタイルに合わせたアクセスのよい農園がおすすめ、と書きましたが、実際に空きのある農園を見つけるのはなかなか難しいところです。現状、特に利用料の安い市民農園であればほぼ空きがない状態と思っていいでしょう。
冒頭で若い世代に特に「農作業をしてみたい」という需要が高いというデータを紹介しましたが、実際には多くの市民農園は高齢者がリタイア後の日々の楽しみとして長年続けていることが多く、空きがなかなか出ないのです。
私が農家から運営を委託されている市民農園も40区画ほどありますが、この5年で毎年2、3区画ぐらいしか空きが出ない状態が続いています。
そんな現状を少し緩和してくれそうなのがコミュニティー農園です。
私が運営する「くにたち はたけんぼ」はNPOによる運営ですが、最近は自治体が「農業公園」としてコミュニティー型の農園を開設する例も増えています。
コミュニティー農園の場合は個人の区画ではなくて共同作業が基本となります。市民農園は家庭菜園の一環で自分の区画を管理するものですが、コミュニティー農園はまさに共同菜園として周りと良好な関係を築きながら維持していくのが前提となります。

進化する都市農業

コミュニティー農園のひとつ、世田谷区立喜多見農業公園

収穫物もみんなで分け合うかその場で試食してしまうというスタイルなので、野菜を十分に持ち帰れないこともありますが、そのぶん個々人の責任は軽いため気軽に参加することができます。
性格的に向き不向きがあるかもしれませんが、子育て世代などなかなか毎週畑に通ったり、ゆっくり時間をとって野菜を調理したりすることができない人たちにとっては、コミュニティー農園への参加から始めてみるというのがおすすめです。
まずは自分の身近にどんな農園があるのか? 市役所などが窓口となって案内していることも多いので、問い合わせてみてください。

「くにたちあぐりッポ」市民農園情報(国立市の菜園マップなど)

コミュニティー農園「くにたち はたけんぼ」:くにたち農園の会
 
参考:
平成27年度第2回インターネット都政モニターアンケート結果「東京の農業」:東京都 

 
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