世界の都市農業から見た日本のユニークな特徴とは【進化する都市農業 #4】
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世界の都市農業から見た日本のユニークな特徴とは【進化する都市農業 #4】

連載企画:進化する都市農業

世界の都市農業から見た日本のユニークな特徴とは【進化する都市農業 #4】
最終更新日:2019年02月28日

「日本の都市農業は世界のなかでもユニークな存在かもしれない」そう思ったのは2016年「第5回 大韓民国都市農業博覧会」に参加したときのことでした。
韓国では、日本で都市農業に関する基本法が定められた2015年よりさかのぼること3年前、2012年に「都市農業の育成及び支援に関する法律」が施行され、以来毎年「都市農業博覧会」が開催されています。都市農業に対して関心が高まり関連法ができたのは同時期ですが、実際に参加してみて韓国の都市農業は日本とは随分と異なると感じました。今回は世界の大都市とは異なる日本の都市農業のユニークな点について紹介します。

「農家不在」の都市農業博覧会

大韓民国都市農業博覧会に私が招かれたのは、日本の都市農地活用事例の紹介のためでした。
他にも韓国全土から先行事例が紹介されそれぞれの主催者がプレゼンテーションしていたのですが、驚いたことにそのなかには農業生産を本業とする取り組みはなく、代々農家をやっているという人もいませんでした。

進化する都市農業

子ども農作業体験コーナー(大韓民国都市農業博覧会にて)

発表者も市民団体が中心であり「コミュニティー再生」「環境教育」「農福連携」などが主たるテーマとなっていました。会場に目を向けてみるといわゆるガーデニング的な種苗やプランター、あるいはオフィスビルの緑化商品などの展示が主で、日本で都市農業関連のイベントが開催されるならば欠かせないであろう「農家による地場産品の販売コーナー」は存在しなかったのです。
なぜそのようなことになっているのか? その理由に触れる前に欧米の都市農業の現状について見てみましょう。

欧米でも「アーバンアグリカルチャー」に注目が集まる

「都市を耕す エディブル・シティ」(2014年/米国/原題Edible City)というドキュメンタリー映画があります。アメリカ合衆国のサンフランシスコ・オークランド・バークリーの3都市を舞台に、空き地を畑としてさまざまな市民活動が行われている様子が紹介されています。
サンフランシスコでは2011年に都市農業に関する条例が施行され、市内のコミュニティーガーデンなど市民が運営する農園でできた農産物の販売などが公認されました。
またイギリス、ロンドンでは2012年に開催されたロンドン五輪に合わせて2012カ所の都市農園を作るという「Capital Growth(キャピタル・グロース)」(首都を育てる)という活動が展開され、市民同士が連携してロンドン市内の農園や緑地を保全し増やしていくという取り組みが現在も続いています。

ヨーロッパでは19世紀の産業革命による都市環境の悪化や食料供給の問題に伴って、市街地から少し離れた郊外で野菜づくりをする家庭菜園はかなり前から存在しています。ドイツの滞在型市民農園「クラインガルテン」やロシアの農園付き別荘「ダーチャ」などは日本でも耳にすることがありますが、最近のムーブメントはそれとは少し異なるようです。
かつての「郊外の農園」がどちらかというと比較的裕福な層にとっての個人の別荘地のような存在として今も残っているのに対し、最近の都市農業は屋上など人工物や公園の一角や空き地などを利用して、元々農的な空間ではなかった場所を農地として活用する例が多いようです。限られた面積を共同で管理しシェアするコミュニティー農園としての形態が多いのも特徴でしょう。

進化する都市農業

公園の一角にあるオーストリアのコミュニティー農園(画像提供:筑波大助教 新保奈穂美)

コミュニティー農園とは異なる形で話題になっているのが、都心部のビル内に「垂直農場」などと呼ばれる植物栽培工場を設置し、新鮮なサラダ野菜を商品として流通させるなどの企業活動です。
ニューヨーク市では、前者のいわば「コミュニティー農園」的な取り組みも、後者の「垂直農場」的な取り組みも含めて推進させていくということを目的に、2017年「urban agriculture policy bill(アーバン・アグリカルチャー・ポリシー・ビル)」(都市農業政策法案)が可決されました。

日本の都市農業の希少性を生かすには?

韓国の都市農業も欧米の都市農業も、基本的な主役は市民もしくは企業であって伝統的な農家ではありません。その理由を探ってみると、世界の多くの都市部には歴史的背景を持つ農家が残っていないというのが挙げられるようです。
ニューヨークにおける都市と農地の関係を、都市緑地の専門家である横張真(よこはり・まこと)教授(東京大学大学院工学系研究科)は次のように表現しています。

ニューヨークではその外縁に「線」があり、それを境に市街地と農林地が峻別(しゅんべつ)されている一方、東京には実質的にはそうした線が存在せず、どこまで行っても両者が混在する。都市地域圏の空間構造上の決定的な違いが、ニューヨークに代表される欧米の都市と東京に代表される日本の都市の間にはある。(「新都市」H29 3月号 (公財)都市計画協会より。一部 著者希望により修正)

つまり日本の都市は市街地と農地が混ぜこぜになったまま拡大していったため、都市の内部に歴史的農地も農家も残っているのが特色だというのです。
確かに東京23区のうち11区にはいまだに農家が承継する農地が残されています(2018年、東京都調べ)。また郊外に行っても、都市との切れ目がなくビルも農地も市街地も混然として存在する場所が延々と続いているのが日本的な状況といえそうです。

進化する都市農業

ビルと住宅と農地が混然と存在する日本の都市(横浜にて)

それゆえに日本で「都市農業」といった場合に連想されるのは伝統的農家による農業となりますし、都市農地の貸し借りは最近までかなり制限されていたため(連載2回目参照)、市民や企業の参画はあまり広がらなかったといえるのです。
これは考え方によっては世界の大都市と一線を画した非常にユニークな都市環境といえるでしょう。
このユニークさを生かす方法として考えられるのが「都市農地のインバウンド観光」だと私は思っています。それについては次回詳しく説明します。

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