「減らす」から「生かす」へ! 都市農地の活用法【進化する都市農業 #2】

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「減らす」から「生かす」へ! 都市農地の活用法【進化する都市農業 #2】

連載企画:進化する都市農業

「減らす」から「生かす」へ! 都市農地の活用法【進化する都市農業 #2】

最終更新日:2019年02月08日

昨年2018年は都市農業にとって大きな改革の年でした。
今まで非常にハードルの高かった「都市農地の貸し借り」を推進する法律「都市農地の貸借の円滑化法」が6月に可決されたのです。
これにより新規就農者や企業や市民団体による都市農業への参入も可能となりました。一般の農地の活用を促進する改革から10年以上遅れてのことです。
なぜ都市農地の活用は今まで進んでこなかったのか? これからはどんな活用が可能となるのか? 今回は都市農業の中でも“地面”、つまり「都市農地」にフォーカスしてみたいと思います。

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日本で農地の貸し借りが進まなかったわけ

私たちはつい「農業」「農地」「農家」の3つをセットで見てしまいます。

戦後のGHQによる「農地解放」によって、日本は自作農主義(自ら所有する農地を自ら耕作し農業を営むこと)になりました。それまでは地主から土地を借りて耕作する小作農が多かったのです。自作農主義によって「農家」が「自らの農地」で「農業」を営むのがあるべき姿となり、結果として、日本の農業経営はほとんどが家族単位の小規模農家となりました。
そのため農業への新規参入の壁は高く、株式会社による農業参入が可能となるのは2000年になってからのことです。
この壁が農業者の高齢化や、担い手不足などの問題を生み日本の農業を弱体化させたという批判も高まり、さらに2009年の農地法改正で「利用権の設定」(地主の権利を守りながら期間を短く区切って貸借する)という貸借方法が可能となったため、農地の貸し借りについては大幅に自由度が増したのです。
日本全体の農地をめぐる状況はそれで大きく変わったわけですが、都市農地(市街化区域内農地)(※)については依然として貸借ができない状況が続きました。
いったいなぜでしょうか?

※ 市街化区域内農地:都市計画法の市街化区域内にある農地。市街化区域とは宅地化が推進される区域で、農地であっても宅地並みの課税がされる。

都市農地をめぐるやっかいな問題

都市農業を理解するうえで、概要だけでも把握すべき法制度がいくつかあります。「都市計画法」「生産緑地法」「相続税の納税猶予制度」ここにさらに加わったのが「都市農業振興基本法」(2015年)「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」(2018年)です。
大ざっぱにいえば前者3つの法律が都市農地の活用を制限する法律、最近の2つが活用を促進する法律です。
「制限」と「促進」と相対する法律が複数あると聞いただけでも嫌になってしまいそうですが、実際ここを理解しておかないと都市農地の活用については大きな誤ちを犯す可能性が高いのです。
私が運営するコミュニティー農園「くにたち はたけんぼ」が市街化区域内農地を借りて開園したのが2013年。当時は制限する法制度しかない状況でした。都市農地の利活用についての前例は皆無に近く、関連の法制度をずいぶんと読み込み、事例を研究し、行政担当者との細かな合意をとっての開園となりました。そんな状況ですから新規参入による利活用が進むわけもなかったのです。

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都市農地は住宅開発などにより年々減少している

まずは規制する法制度から説明すると、「都市計画法」(1968年)によって「市街化区域」という「将来的に宅地化すべき区域」が定められました。これによって市街地の多くに残っていた農地は将来的にすべてなくなり「宅地化すべきもの」となったのです。
宅地となれば自由に市場価格で売買できる土地になりますので、高度経済成長とともに東京23区内の世田谷や練馬などの農地の評価額は億単位の莫大(ばくだい)なものとなりました。例えば宅地として売れば2億円になる畑で、年間の売上が数10万円のキャベツを栽培するという奇妙な状況が生まれたのです。
そうなれば固定資産税や相続税も上がり、結果として農家は農地を手放さざるを得なくなります。
急な変革ではさすがにショックが大きすぎるということで、緩やかに都市農地が消えていけるように作られたのが「生産緑地法」(1974年)と「相続税の納税猶予」(1975年)という制度です。
「生産緑地」は農地として指定を受けた後、30年間自作農を続けることにより固定資産税が減免されます。
「納税猶予」は農地相続者が終生農業を継続するならば相続税を当面は払わずに済み、亡くなった時点で免除されるというものです。
つまり「農家が自分の農地で農業を続けるのであれば税金は安く収まる」ということです。
逆に言えば「新規に活用するのであれば課税します」ということなので、都市農地の貸し借りはほぼ不可能となったのです。

都市農地活用で注意すべきこと

税の公平性の観点からするならば、農地であっても貸し借りするのであれば宅地と同じように課税するというというのは至極あたりまえのことです。しかし、結果として農地は年々減って住宅地が拡大する一方で都市も人口減で空き家問題が懸念されるようになり、このまま無計画に農地がなくなっていくことは都市全体の魅力や暮らしやすさも阻害しかねないという危機感がうまれました。このことが2015年の「都市農業振興基本法」をはじめ都市農地の活用を促進する新法制定につながっています。
そしてついに2018年に施行された「都市農地の貸借の円滑化法」では生産緑地や納税猶予農地の貸借も可能となったのです。
これによって、都市農地においても企業や市民団体が農地を借りて参入することが可能となりました。

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市民が農に親しむ場としての需要が高まっている

東京都を例にあげると、農地の減少はかなり進んだものの、ほとんどが市街地と言える東京23区の全面積の0.9%はいまだに農地ですし、それ以外の多摩地域においては市街地のおよそ5~10%ほどの面積がいまだに農地です(2015年農林業センサスより算出)。これらはすべて小規模農家の私有地なので、これをもっと活用してより魅力的なまちづくりをしていこうというのが最近の潮流なのです。
最近では「体験農園マイファーム」(株式会社マイファーム運営)や「シェア畑」(株式会社アグリメディア運営)のようにアドバイザー付き市民農園も増え、地域のサークル活動的なコミュニティー農園も少しずつ誕生してきています。
しかし、今までの経緯や法律、税制度などに配慮しないまま直接農家に交渉したり、やりたい放題に使ってしまったりすればトラブルのもとです。せっかく開きかけた門戸がまた閉ざされてしまいかねません。
農地らしい景観を保ったり、地域社会に受け入れられやすい活用をして次世代に農地を受け継いでいこうという長期的視点が必要なのです。
というわけで、次回は農地活用のなかでも最も一般的な「市民農園」の具体例をご紹介します。

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