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「都市農業」のバイブルがきょう発売 著者・小野淳さんインタビュー

「都市農業」のバイブルがきょう発売 著者・小野淳さんインタビュー

最終更新日:2018年09月11日

日本の「都市農業」はいま、大きな転換期を迎えています。生産緑地法改正や都市農地賃借の円滑化法の制定予定など、規制緩和により「農業大都市・東京」が誕生の兆しを見せています。なぜいま「都市農業」なのか、市民や民間企業は、都市農業や農家とどのように関わっていくべきか。未来の都市農業の指南書ともいうべき新刊『東京農業クリエイターズ』(イカロス出版)が、5月29日に出版されました。著者で、東京・国立市を中心にコミュニティ農園の運営や婚活、忍者体験など幅広く農サービスを提供する小野淳(おの・あつし)さんに、新著に込めた思いを聞きました。

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「都市農業」はまさに転換期

小野淳さん

国立市でコミュニティ農園の運営を行う、著者の小野さん

都市の中で、都市と調和しながら存在する「都市農業」は、新しい一歩を踏み出そうとしています。2017年の生産緑地法改正に伴う面積要件の緩和により、これまで税の減免対象である「生産緑地」の指定が受けられなかった市街化区域の狭い農地でも、追加指定を受けやすくなりました。また、「農家レストラン」や「農産物直売所」など施設の設置も認められるようになりました。

さらに、地殻変動を呼び起こす存在として注目すべきは、2018年に制定予定の都市農地の貸借に関する新法「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」です。

これまで生産緑地をはじめとする都市農地は、地主自身が農業を営むことを前提に、税の優遇を受けられていました。ところがこの法律では、「都市農地の有効な活用」による「都市住民の生活の向上」を目的に農地を貸し借りしても、所有者である地主が税の減免を継続できるようにしたのです。(第1章「農業大都市・東京」の兆し より)

これによって、これまでは難しかった生産緑地などの農地における市民参加型農園の開設が可能になり、企業やNPO法人による都市農地の利用促進が期待されます。

市街化区域内の農地を農地として貸借ができるようになったことで、都市の農地が維持されやすくなるとともに、都市の農地でできることや可能性が、一気に広がったのです。(同章より)

「都市農業普及の障壁となっていた旧来のシステムは決壊寸前。そんな今こそ書きたかった本です」と、小野さんは新著について語ります。

著書内には、法改正によって都市農業に起こり得る変化の分かり易い解説、小野さんの体験に基づいた都市における農的サービスのノウハウ、多様な角度から都市農業に励む農家の取り組み実例集など、200ページ以上に都市農業のエッセンスが詰め込まれています。

東京で農体験、訪日客からも熱い視線

小野さんはテレビ制作マン時代、ドキュメンタリー番組の取材をきっかけに農業に興味を持ちました。30歳で農業生産法人に転職、農業の現場を経験したのち、2014年に株式会社農天気を設立。東京・国立市を中心にコミュニティ農園の運営や婚活、忍者体験など幅広い農サービスを企画・提供しています。

約300坪の農園「くにたち はたけんぼ」には、家族など複数の団体が一緒に作物を育てて収穫できる畑スペース、体験用の田んぼ、ピザ釜や燻製器やベンチを設えたオープンスペース、2頭のミニチュアホースと羊の厩舎…など、まるで「屋台村」のように様々な空間が共存。自然と近隣の親子らが集う「コミュニティ農園」として、地元から愛される存在になりつつあります。

2頭のミニチュアホース

ミニチュアホースの「ダンディ」。近隣の保育園でのふれ合い体験に“出張”してきました

ローカル向けのイベントはもちろん、農園で力を入れているのは、2017年から始めた訪日外国人客向け農園ツアー。1100年以上の歴史を持ち、関東三大天神の一つとされる谷保天満宮の見学からスタートし、農業用水として使われる水路をたどりながら農園へ。畑でリーフレタスやカブなど色鮮やかな野菜を収穫し、その場でサラダなどにして頂きます。参加者は、「地域コミュニティの価値」との出会いを含め、“包括的な農体験”を味わえるのです。

由緒ある谷保天満宮の社殿

由緒ある谷保天満宮の社殿

取材時に、小野さんがツアーを再現してくれました。緑深い境内を歩きながら、小野さんのお話から神社と農村の深い関係を学びました。そして、土の香りと爽やかな風が吹き流れる畑で頂く、新鮮な野菜の味は格別。五感が喜ぶ体験でした。

新宿から電車で40分。日帰り&手ぶらで行ける手軽さと、「東京で農体験」の新鮮さが受け、参加者の満足度は高いようです。香港から観光雑誌が取材に訪れるなど、海外からも熱い視線を集めています。
今後は、農園から徒歩5分の歴史ある古民家で、外国人も対象にした農泊体験を提供予定だといいます。

味は格別!

畑で野菜を食べる体験は、そうそうないもの。味は格別!

都市農業をビジネスにつなげるノウハウが満載


農業を通して、観光資源や地域コミュニティの創出に汗を流す小野さん。著書の思いを特に強く感じたのが、「第4章『農業クリエイターズ』がつくる都市の未来」内の「農家の複合的資産をビジネスにつなげるノウハウ」にフォーカスした箇所です。

小野さん自身の体験に基づき、「都市農業と都市農業を活用するプロジェクトを、農家と協働して成し遂げようというときに必要なノウハウや注意点」を挙げています。

①農家の持つ資産を多面的に捉えて尊重し、活用する
収穫した農産物を活用するというだけでなく、包括的な「農家」という資産と組む、ということ。私はそこを強く意識し、敬意を払うことを忘れないように心がけています。職業としての「農業」、家業としての「農家」、土地としての「農地」。(略)もっとも将来性の高いのが、これらを有機的につながった一体の資産と捉えること。とくに体験型のビジネスを考える上では、価値が高まることが多いはずです。(第4章『農業クリエイターズ』がつくる都市の未来 より)

①をはじめ、②役割分担を明確にしすぎない③長い関係で協働価値を上げていく といった3点がポイントとして挙げられ、詳しく解説されています。

他業種から農業や関連サービスに参入する立場として、ぜひ身に付けておきたいマインドだと感じました。小野さんも「農家と企業やNPO法人が組んで、都市農業に複合的な価値を生み出すためにも、特に伝えたかった箇所」と力を込めます。

「東京五輪後の方針や、空き家問題の加熱など、様々な課題や動きがある東京で、都市農業はこれから重要とされるテーマ。『東京農業クリエイターズ』は、東京で「農業起業」するノウハウ、人を幸せにする都市型農ビジネスのあり方・続け方を、具体的に解説した初めての“都市農業ベンチャー・ビジネス本”です。多くの人に手に取ってほしいです」と、小野さん。

畑仕事など“農を身近に感じる暮らし”に興味を持つ消費者から、都市農業事業へ参入しようとする民間企業まで、あらゆる人にヒントをくれる一冊です。

『東京農業クリエイターズ』(イカロス出版)2018年5月29日発売 1,620円(税込)

小野淳(おの・あつし)さんプロフィール

1974年生まれ、株式会社農天気 代表取締役 農夫。東京・国立市を中心に、収穫体験や市民農園を企画・運営。大学時代は探検部でアマゾンの奥地などを放浪。テレビ番組制作会社に入社し、教育バラエティやドキュメンタリー番組の制作を担当。農業生産法人を経て、2014年に株式会社農天気を設立。テレビ出演や雑誌の連載などを通して、都市農業に関するトピックを発信している。著書に『都市農業必携ガイド』(農文協)。

【関連記事】都会の農業を活性化。アーバンファーマーズクラブが結成

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